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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#71 青ノ葉 雨模様(Epilogue)(2/4)
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気が付くと


「ー・・・!」

ハッと気が付くと矢口は、青ノ葉学生寮の医務室にいた。
白いベッドに寝かされていて、あっちもこっちも既に手当てをされた後。

「気が付いたんですね、矢口くん。よかった。」

もちろんボロボロだった矢口を手当てしたのは、保健医のチロ先生。
目を覚ましたら直ぐこっちに気が付いて、矢口の調子を伺ってくる。

「この指、変に見えてたりしませんか?」

「・・・はい。」

「吐き気とかも、ありませんか?」

「・・・はい。」

「診た限りでは、骨折はしていませんでしたが、打撲が多くあります・・・。変に痛む場所とか、あったりしませんか?」

「・・・特には。」

そしてこんな身でも特に異常がなかったことに、ホッと安堵な息を吐く。



優しく怒るお説教

それから開かせた口で続いたのは、お説教。
口調は彼らしく優しいけれど、とても怒っていた。

「駄目ですよ、矢口くん。学校抜け出してまで、授業をサボったりなんかして・・・。おかげで矢口くんの行方が分からなくなって心配した人、とても多くいたんですよ。」

「・・・・・・・・・。」

おかげで何も言い返せない矢口。
犬飼たちも不良グループが決めた『一部の教員には逆らうな』のルールに、チロ先生の名も刻まれているから反論が出来なかった。
彼まで敵と決めつけた時期もあったが、それでもチロ先生は、つけ離さずにいてくれたから。
こんな馬鹿なことしても・・・。

「矢口くんも、大事な生徒であることには変わりありませんから。やんちゃで元気なのはいいことなんですけど、あまり心配させないで下さいね。」

「・・・ごめんなさい。」

「あと矢口くんが青ノ葉に帰ってきたのは、門限後なので。蓮く・・・、日暮寮長に会ったら拳骨は覚悟していて下さいね。届け出も矢口くん出してなかったから、とても心配してましたので。」

「・・・・・・・・・。」

だから今はおとなしく叱られた。



合羽男との繋がりは

矢口は今晩、このまま医務室で休むよう、チロ先生から言いつけられた。
1つは、矢口の身体を大事見て。念には念の為。
1つは、ここから出たら間もなくとんでくる日暮寮長の拳骨から阻止する為。
前者はともかく、後者は冗談ぽく聞こえるが冗談じゃないマジ話。怪我人相手でも容赦ないので、一晩だけなら匿ってくれるそうだ。
どちらにしろチロ先生が近くにいれば、何かあった場合、すぐに対処出来るから。

「・・・永瀬って、何者?」

そして気絶する前に見たあの出来事が、頭から離れなくて、それをチロ先生に訊いてみた。

「永瀬くんですか?矢口くんもご存知の通り、青ノ葉学園の今期の生徒会長ー・・・「そういうことじゃなくて。」

チロ先生なら何か知ってるんじゃないか。
なんとなくそんな気がしたから。

「俺が倒れる前。合羽を着た男たちと、一緒にいたの見た気がしたんだ・・・。」

「そうだったんですか。永瀬くんだけじゃなくて生徒会の人たちや生徒指導の先生方で、最近は街の方まで見回りしていたみたいですよ。青ノ葉生が如何にも悪そうな男の人に襲われたという報告が1年生からもありましたから。」

「・・・そう、ですか。」

でも強力な情報は得ることは出来なかった。

「でも永瀬くんたちに会ったら、ちゃんとお礼を言って下さいね。街中で倒れた貴方を学校まで運んできたのは、その永瀬くんたちでしたから。」



隠された噂話の真実

それと、その話とは別の。もう1つの話も。

「じゃあ・・・、『幽閉された男子生徒』の話は?」

青ノ葉学園に隠された1つの噂。
嘘か真か分からない、ちょっと不思議なお話。
なのに矢口だけが知り得てることまでも。
するとチロ先生は、

「トイレの花子さんチックな噂話のことですよね?それ。私も色んな生徒から言われたことがあり、その度に真相を問われますが。残念ながら、デマ・・・ですね。」

「え!?」

この噂は虚偽であることを、論じて明かす。

「開校されて間もない頃から私は青ノ葉で勤めてますが、いませんから。卒業式に出られなかった生徒は、誰1人。どうしてこの噂が流れるようになったのかまでは、私も遺憾を覚えますが、幽閉された生徒なんてどこにもいらっしゃいませんよ。」

「・・・・・・っ。」

彼は青ノ葉の学園長よりも長く、青ノ葉で勤めてる保健医だ。
他の誰よりも歴史を知っているからこそ、どの否定よりも信じられた。

「じゃあ・・・、春先に亡くなった生徒の話とは何も。」

「・・・・・・・・・。」

おかげで改めて思い知った。
人から人へと渡ってきた話がデマとも知らずに真に受けて、何もかも踊らされていたことを。
あーあー。自分はホント、今まで何してたんだろ・・・。



やっぱりとんできた寮長の愛の鞭

こうして医務室で休まされた夜が明け、翌日の朝を迎える。
念のため欠席するよう言われたが怪我している以外は特に問題ないので、今日は普通に授業を受けることした。
医務室出た途端、日暮寮長の拳骨が案の定でとんできた。
「グーだったことを有り難く思え。」とか。決まり文句みたいに言われたが、グー以外の拳骨があったら知りたいもんだ。
それから自分の部屋に戻って身支度済ませたら、改めて校舎に。
今の矢口を見て、色々とヒソヒソ言われたが、それはいつものことなので慣れてる。

「・・・・・・・・・。」

そんなこんなであっという間に昼休みを迎えたが、図書室の方には行かなかった。
行ったら確実に黒崎に会うから。
まだそんな気持ちになれなくて、休憩時間以外も極力会わないよう避けた。
あそこは梅雨のジメジメさが忘れられる場所で居心地良かったけど、自分には良すぎて、正直ハマる寸前の場所だったから向かわないで正解。
自分みたいな底辺生徒がいるべき教室ではないと、初めから分かってたかのように悟って。



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