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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#70 青ノ葉 雨模様(3)(4/5)
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雨模様って

自分の直ぐ隣にいる黒崎。
1本の傘の範囲でいるから、近くて当たり前なんだけど、この距離が近すぎて意識しない方が無理な話。

「「・・・・・・・・・。」」

雨の音が煩いから、会話が上手く生ませられない。
会話、会話・・・。
あれ?黒崎と、いつもどんな話してたっけ?

「雨、すごいね。」

「そうだな・・・。」

「もうずっと降ってるから、最後に太陽見た日って、いつだったか忘れちゃった。」

「そうだな・・・。」

「雨模様って本来は、雨が降りそうな空のことを言うんだって。現に雨が降っているっていうのは、ここ近年に出来た新しい意味なんだって。」

「そう、なのか・・・。」

他愛のない天気の話でさえ、ロクな言葉が返せなくなっていた。
どんだけ緊張してんだよ。
たかが1本の傘に2人で一緒に入ってるだけなのに。



頭の引き出しにあった話題

それでもなんとかこっちから会話を生みたくて。
自分の中にある引き出しから、1つの話題を持ってきた。

「真央は、さ・・・。幽閉された男子生徒の噂、何か知ってるか?」

「純平君、先輩。」

「・・・真央先輩は、幽閉された男子生徒の噂、何か存じてませんか?」

それは青ノ葉学園に隠された1つの噂。
嘘か真か分からないけれど、人から人へ渡っていった、ちょっと不思議なお話。

「えっと、確か卒業式の日に1人の生徒が閉じ込められちゃって、今もどこかにー・・・っていう感じの話だっけ?」

「そう、それ。」

それを黒崎にも問うったが、以前、明人が答えた時と同様。それ以上のことは返ってこなかった。

「それ、さ。その生徒を閉じ込めた奴・・・、青ノ葉の教師じゃないかって説があるんだ。」

「え!?噂じゃないの?この話。本当にあったってこと?」



矢口だけが知り得てること

ここからは誰にも言ったことがない話。
矢口だけが知り得ている話を黒崎に聞かせる。

「俺の親、さ・・・、医療関係の仕事やってんだ。その伝手で、どっかの病院の息子さんが昔・・・。っといっても10年ほど前に亡くなったって聞いて。で、その息子さんが青ノ葉生で亡くなったのも春先の卒業式あたりで、さ。」

「それは・・・。何てお悔やみを申したら・・・、そんな若くして亡くなるなんて。」

「それだったらそこまでで済むんだ。けどおかしなことに、その生徒が亡くなったこと。当時の生徒は誰も知らない。今も知らない人のが多いという話。・・・なんかちょっと噂と似てる部分あるだろ?」

「う、うん。」

「ー・・・で。その生徒を亡くす理由を作ったのが先生。他の生徒に知らせなかったのは、自分や学校の信頼や知名度を下げないように仕向けたのかもしれない。っていう説があって。」

これも人から人へと渡っていった話。
この伝言ゲームが正しく成立していれば、その通りだけれど、どこが正しくてどこが誤っているか。元は誰にも分からないから、正解も分からない。

「じゃあ今も尚、閉じ込められてるっていうのは・・・。」

「青ノ葉内に息子さんの亡霊が彷徨ってる・・・という意味合いなのかもしれないな。」

幽閉された男子生徒の噂と、同じように。



カレーに負けるタオル

図書館から歩き続けて、少し経ったところで、見覚えのある家へ。黒崎が下宿してる家のプレハブ小屋へと到着した。
本当に直ぐの距離だったけど、あっという間だったのか長かったのか。よく分からない感覚が走る。
でもこれでやっと相合傘の受難から解放される。ー・・・かと思いきや、

「ありがとう純平君。雨、強くなってるから気をつけて帰ってー・・・って。純平君、なんで片方の肩、そんなに濡れてるの!?」

格好付けて配慮した部分を見られてしまう。
1本の傘に男2人で入ったら、満足に使えるのは片方だけになるだろう。

「ちょっと待ってて純平君。直ぐにタオル持ってくるから!」

それを見た黒崎は、慌てて。
バタバタと大袈裟になってまで、母屋と言ってた家の方へと向かって行った。
これぐらい大丈夫なのに・・・っと思ったが、そういうわけにはいかなかった向こうの反応を見て圧倒され、おとなしく従い戻ってくるのを待った。
そして言葉通り、すぐに戻ってきたのだが、

「純平君。今日、僕んちカレーだった。友達いるって祖父に言ったら純平君も良かったらって。だから純平君もお腹空いてるなら良かったら食べてって。」

「・・・あの、タオルは?」

「あ。ごめん!直ぐに持ってくるから、もうちょっと待ってて!」

カレーに釣られて、本来の用をド忘れ。
また慌てて母屋に戻り、今度こそタオルを持ってきてくれた。
それもこれも善意なのだろう。
やっぱり黒崎は、ちょっとズレた性格のようだ。



生活感がない室内の過ごし方

そうしてプレハブ小屋の中。黒崎が使ってる部屋の方で、カレーを1皿ご馳走になる。

「ご馳走様。美味かったけど・・・、なんか悪かったな。」

「お粗末様。でもよかった。純平君の口に合って。」

「前にここで食わされたおにぎりは、クソ不味かったけどな。」

「うぅぅ。アレは僕も自分で食べてビックリしたよ。おにぎりなんて初めて作ったから。でもちゃんと1個食べてってくれて嬉しかったよ。」

この部屋に来るのは2度目。
印象は前と変わらず、本と本棚がありすぎて、小さな図書館。
どっからどう見ても本の量が多くて埋め尽くされているから、新しく買うのを止められてる理由も分かった。
だけどあんまり生活感がなく、この人がここで毎日どのような生活を送っているのか見当が付かない。
電気付けてないと薄暗い室内だし。

「ところで前も思ったが、真央・・・先輩って、この部屋でどうやって寝てんだ?ベッドないし、布団敷くにしたってスペースが。」

「ん?寝るスペースっというか、ベッドならあるよ。普通に。」

「え、どこに???」

大きなソファーが1つ、テーブルにキッチン、冷蔵庫と衣装ケースは小さく、本以外であったのはたったそれだけだったから。



ベッドにもソファーにもなれる家具

だから改めて、気になっていたことを尋ねる。
すると黒崎は矢口の質問に、ソファーの背もたれを倒すと共に教えてくれた。

「これソファーベッドだから。ソファーにも出来るし、ベッドにもなれちゃう優れ物。すごいでしょ!」

「・・・・・・・・・。」

それを見て、思い出したのは1回目の日。
あの日は不貞腐れて、このソファーで寝てしまったが、アレは完全に黒崎の寝るスペースを奪っていたってことか。
道理で次の日、本棚に背もたれて座ったまま寝てたのか。

「・・・悪かったな。前、ここに来た時、知らずに占領してて。」

「ううん。純平君はあの日お客様だったから、全然悪くないよ。むしろ僕の方こそ寝落ちした姿見られて、ちょっと恥ずかしい。」

「そ、そっか。」

それを今更になって謝ったが、簡単に許してくれたどころか、あんまり気にしてなかったようだ。
文句あったら、きっと今頃、続けて言ってるだろうし・・・。



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