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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#70 青ノ葉 雨模様(3)(3/5)
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夢とは違う答え


「えっ。」

「あ・・・。」

その『つい』をハッと気付いた時には、もう遅く。
夢とは違い、現実は1回でも言葉を口にしたら、取り返しが付けられない。
だから黒崎のこのあとに続く答えに、純平はまたドキドキと胸を高鳴らせた。

「構うって?」

「あ。いや。なんでもー・・・、なんでもないから聞き流してくれ。」

いくらなんでも夢と同じ展開になるわけない。
正夢になったとしても、自分はそのあとどうしたらいい?
すると黒崎は、

「んー。純平君、嫌がるかもしれないけど、僕は楽しいからかな。」

と。

「最初は怖い人だって思ってたけど、お話していくうちに純平君が良い人だって分かってきて。うん、あの時が楽しかったから行く先行く先、声掛けてたのかも。」

聞き流さずに、そう答えてくれた。

「でもどれも会おうとした時以外は偶然かな。今日だって読書スペースに珍しく青ノ葉生いるなって覗いたら、それが純平君でビックリだったし。」



近いだけで一緒じゃない答え

それを聞いた矢口は、どう捉えたのか。

「・・・やっぱ、そういうことなのか?」

「そういうことって?」

「あ、いや、なんでもー・・・っ。」

「???」

夢とは違う答えだけど、夢と近かった答えに意識してしまい、この照れを慌てて隠したが、高鳴るこのドキドキまでは自分を誤魔化せられない。
楽しいイコールそういうことだと。
一方的でも好かれる理由が、そこにあったのだと。
ハッキリそう言われたわけではないのに、勝手に変換してきた思考に翻弄される。

「お、俺も。俺だって偶然だからな。真央がここまで来てたなんて知らなかったし、いっつもそっちからで、あとは勝手に貸してきたモノを返しに来ただけで。」

「純平君。今また僕のこと、先輩抜けてた・・・。」

「・・・・・・悪かったな。」

不確かで。
曖昧で。
黒崎のこと、自分がどう想ってるのかすら、まだよく分からないくせに。



古時計の音っていいよね

その時、

「!!」

ボーンボーンと鳴った館内の古時計。
時刻は、更に夕方から夜へと向かうことを知らせてきた。

「もうこんな時間。純平君、そろそろ寮に帰らないと。」

「あー・・・。」

おかげで妙な空気感を変えることが出来た、が。
向こうも時間を気にし出して、寮の門限過ぎないうちに帰るよう言ってたが、矢口は外を気にして渋る。
なんせ雨は、まだザーザー本降っていて、止みそうな気配がない。
傘を持ってき忘れた自分が悪いが、このまま濡れて帰りたくない。

「・・・純平君、ひょっとして傘持ってないの?」

「・・・・・・・・・。」

黒崎にもそれを察さられて、なんとも格好が付かない話になってきた。

「もうちょっと待てば落ち着くといいんだがな。」

「んー、今日はもう無理そう。雲もずっと真っ黒なままで、雷落ちてきそうだし。」



嫌じゃなかったら

なので黒崎から矢口へ、ある提案が。

「その・・・、純平君が嫌じゃなかったら。傘、貸そうか?僕んち、ここから近いし。」

「え?」

黒崎が今、自分で持ってるその傘を貸すっと。
ちょっと言葉をつまらせながら、相談を持ち出す。

「貸すってたって、この雨じゃ。めちゃくちゃ濡れて帰ることにならないか?いくら家が近くても。」

「うん。僕も濡れて帰るのは嫌だよ。せっかく借りた本も汚しちゃうことになるし。」

「じゃあなんで貸すなんて言って。」

「だからその・・・っ。純平君が嫌じゃなかったらって話で・・・。」

なんでそんな風に言うのか。
最初はよく分からなかったが、傘が借りれるなら仕方ないと思って頷き、図書館から外に出たら何でだったか直ぐに理解出来た。

「・・・・・・・・・。」

持っていた一本の傘に矢口も入れて、黒崎自身も入っていたから。



矢口と黒崎の相合傘

そんなナチュラル?に相合傘されて、ビビった矢口。

「!?」

「あ、ダメ!傘から出たら雨で濡れちゃうよ。」

「いや、だって!」

思わず傘から外れようとしたが、黒崎に止められてしまう。

(俺が嫌だったらって、こういうことだったのか・・・。)

『相合傘になるのなら、なる』と、ハッキリ言えばよかったのに、なんで言わなかったんだろう。
それに『純平君が嫌だったら』って、黒崎自身は嫌じゃなかったってことなんだろうか。

「なんかごめん。周りに人もいたから、恥ずかしくてハッキリ言えなくて。・・・男の僕と傘一緒に入るって、やっぱり嫌だよね。」

「そ、そういうお前・・・、真央先輩こそ嫌じゃないのかよ。俺となんかと、その・・・。」

「純平君が濡れて帰っちゃうよりは、全然嫌じゃないよ。年下の子を風邪引かせたくないし。」



好かれてるとやってしまう行為?

それは全てが不確かなのに。曖昧なのに。
頭が『そういうこと』だからっと、勝手に変換して繋げてくる。

「・・・傘、持つから。」

「え。」

「傘、持つから。真央先輩は、借りた本。濡れないように大事に抱えてろ。」

「あ・・・、うん。」

つまり、『黒崎は俺のことが好きなんじゃね?』と。

「じゃあ申し訳ないけど、僕んちまで我慢してね、純平君。本当に直ぐそこだから。僕んち着いたら、この傘貸せること出来るから。」

「あぁ・・・。」

そう繋げてしまった答えが、ちょっとでも格好を付けさせたいのか。
傘の持ち手は自分。
車道側を歩くのも自分。
黒崎が雨で濡れてしまわないよう十分に配慮して。



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