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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#70 青ノ葉 雨模様(3)(2/5)
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サボりスポット

とはいえ、こんな機嫌の悪い状態で補導に捕まったら、下らない八つ当たりをしてしまいそう。
それはそれで面倒なので、制服姿でも見つかりにくい場所。見つかっても大丈夫そうな場所へ。街の方の図書館へと向かった。

「・・・・・・・・・。」

平日でも流石に学校よりは人の数はあったが、空調も心地いい感じで行き届いてて、学校同様、図書館も静かで落ち着いた館内。
今日は別の学校が振り替え休日なのか。
幸いな事に違う制服を着た生徒も疎にいて、例えるなら木を隠すなら森状態。補導されにくい環境が出来上がってくれていた。

「・・・・・・・・・。」

ので、さっそく1冊の本を手に取った矢口。
それを持って読書スペースへと向かい席に座って、時間潰しにパラパラと読み始める。
けれど昨夜のこともあって寝不足だから。
気が付けばウトウトとしてしまい、そのまま机に俯せて寝てしまった。



隣から聞こえた声

梅雨のジメジメから解放されて、暑くもなければ寒くもないちょうどいい室内は、本当に寝心地がよかった。
昨日の夜は寝てなかったこともあって、矢口はぐっすりスヤスヤ。
すーすー・・・と静かな寝息を立てている。



それからどれぐらいの時間が経ったのだろう。
ふと気付くと、朝は曇ってた空から雨がザーッと本降っていて、その音で目が覚める。

(あ・・・、やべ。傘持ってきてない・・・。)

するとその時、

「・・・おはよ。純平君。」

「・・・・・・・・・。」

「随分、ぐっすりだったね。」

「・・・・・・・・・。」

自分の隣から聞こえてきたのは、黒崎の声。

「!?」

寝惚けが覚めるほど、ガバッと起きると、やっぱりそこには黒崎が。自分が起きるまでの間、ずっとそこから寝顔を見ていたようだ。



朝→昼→夕方へ


「なッ!?」

なんでここにいる!?っと。大きな声を上げかけた途端、

「純平君、しー。図書館でそんな大きな声出さないで。ここは学校の図書室じゃないんだから。」

「あ、悪い・・・。」

お約束のような当たり前のことを黒崎に注意され、大きくしかけた声を小さくした。
そして肝心な・・・。それほど肝心じゃないけど、変に逸れないうちに本題を問う矢口。

「なんでここにいんだ・・・。」

「学校帰りの寄り道で、借りてた本を返しに来ただけだよ。」

「学校の帰り?あー・・・、もうこんな時間だったのか。」

その会話の中から時間が気になり今の時刻を見ると、昼が終わっていて、すでに夕方。黒崎の姿もよく見たら学校指定の鞄を持っていた。
ここでめちゃくちゃ寝ちゃってた現実を知り、いくら寝不足だったとは言え、時間を無駄にしすぎた感が半端ない。
これだけしっかり寝ちゃうと、今晩ちゃんと寝れるか不安になる。
そしてそして黒崎も、結局、学校をサボった矢口を見て、

「学校サボっちゃダメだって言ったのに・・・。」

と、ちょっと不満そうにしていた。



図書館はいいゾ〜

黒崎がなんで図書館にいたのか。
理由はとっても簡単。ここに来る利用者と同じで、彼も本を借りているから。

「『図書室の本を全て読みきった変態』は、図書室だけでは物足りなかったのか・・・。」

先ほどの不満返しとして、矢口は皮肉を込めて言ったものの、

「だって学校のはその通りで全部読み切っちゃったし。図書館も新作が少ないのは学校と変わらずだけど、旧作はすごく充実していて、寄贈本含めて全然読んだことないタイトルばっかりで。あと郷土本とか普段読まないジャンルも最近ちょっとハマりつつあってー・・・。」

「・・・・・・・・・。」

黒崎は皮肉を皮肉として捉えず。
目を爛々と口までお得意にさせてまで、訳を熱く語ってきた。
それを聞いていた身としては、それだけでお腹いっぱい。

「真央先輩はホント、本読むのが変態レベルで好きなんですね。」

「好きなのは認めるけど、変態っていう言い方は、ちょっとヤダよ。褒めるなら、ちゃんと褒めて〜。」



場所だけが違う


「本を読むと読んだ分だけ、その世界を旅してる気がして、いろんな世界を知ることが出来るから。こんな僕でもその物語の主人公になれた気分にもなれるから。だから僕は本が読むのが好きなのかも。」

「・・・・・・・・・。」

こうしてここで会ったのも何かの縁が働いたのだろう。

「あ、純平君が今持ってるその本って何?」

「その辺の棚からテキトーに持ってきたやつ。」

「・・・読んでた途中?」

「いや、そんなに深くは。」

「じゃあその本、僕が借りてっていい?まだ読んだことのない本だから、気になっちゃって。」

「あー・・・、どうぞどうぞ。」

いつもと場所は違うけど、いつもと一緒。
また向こうからこっちに来たことには変わりない。



夢と同じ質問を


「にしても、学校でも図書館でも本借りるって、どんだけだよ。」

「僕の部屋、本だらけで。アレ以上、買って増やしたらプレハブの部屋が壊れるからって祖父に止められちゃって・・・。それでも本は読んでいたいから、借りるならセーフだよって許しをもらって。」

「あー、たしかに真央・・・先輩の部屋、本多かったもんな。」

思えば、最初に会った時から。
いや、会ったその後から、向こうからこっちにやって来ていた。
頼んでないことをやられたり、色々と文句を言われたりして・・・。
最初は鬱陶しかったけど、気になって気になっちゃって。

「それはそこでいいけど、なんで俺にまで。・・・なんで俺なんかにまで構うんだよ。」

つい夢と同じようなことを呟いてしまった。



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