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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#70 青ノ葉 雨模様(3)(1/5)
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夢の中で

思えば、最初に会った時から。
いや、会ったその後から、向こうからこっちにやって来ていた。

『なんで俺なんかに構うんだよ。』

頼んでないことをやられたり、色々と文句を言われたりして、矢口としては、ちょっと鬱陶しかった黒崎の存在。
だから気になって、気になって。
ついにその訳を尋ねた。
すると黒崎は、

『単純にー・・・。』

と。

『好きだからだよ、純平君のことが。』

そう答えてくれた瞬間ー・・・。

「ッ!?!?」

そこでバッと勢いよく覚めた矢口。
おかげで今見ていたモノは夢だと分かったが、我ながらなんという夢を見てたんだ。



夢のせいで

きっと犬飼に言われたことが影響されたのだろう。
だからこんな夢を見てしまったんだ。

「ーーー・・・っ。」

だとしても、この胸の高鳴りは何???
すごくドキドキしていて、顔が熱くて、訳が分からない。
夢の中で黒崎に『好きだから』と言われただけで、何故こんなに動悸してんだ!?

「・・・・・・・・・。」

やばい、どうしよう・・・。
なんだよ、この気持ち。
なんなんだよ。

「くそ・・・っ。」

その夢のせいで矢口は、それから寝れなくなってしまう。
そして朝になって学校に行ったら、きっとまたあっちからこっちへとやって来るだろう。
そんな会った時のことを考えたら、どんな顔をしていいか答えも分からず、訳の分からないドキドキが緊張させていく。



下宿生とは会わない朝

寝れなくなったまま暫くして、あっという間に朝を迎える。

「・・・・・・・・・。」

黒崎は下宿生なので、学生寮にはいない。
それが幸か不幸か、寮の中では会うことがないから、まだちょっとホッとした。

「今日の天気は、曇りのち雨。午後から雨が強まり、ところによって雷を伴うでしょう。」

朝起きて、お腹空いたら食堂で、朝のニュース番組の天気予報を片耳にしながら朝飯食う。
それはいつもどおりのことだけど、ここまではまだ平和だったから、改めていつもどおりに出来ることを有り難く思った。
でも問題は、ここから。
身支度済ませて校舎に向かったら、また黒崎が待ってるかもしれない。
本を貸すのを口実に使って、話掛けてくるのかもしれない。

「・・・・・・・・・。」

どうしよう。今日、思いっきり学校サボりたい気持ちになってきた・・・。



元凶と鉢合わせ

学生寮の生徒が、学校をサボるのは少々、難しい。
欠席した生徒を確認しに、日暮寮長が見回って来るから、自分の部屋に篭り続けることが出来ないからだ。
だとしたら青ノ葉の領域内よりも外へ。
まだ街中でブラブラとサボっている方が難易度が低い。補導に捕まっても、誤魔化し文句の言い訳は慣れっ子だし。

(よし・・・!)

そうと来なれば、寮から出て矢口が向かった先は校舎ではなく、外へ。
今日の授業は丸ごとエスケープするつもりで学校から出て行く。が、

「純平君?どこ行くの?」

「・・・・・・・・・。」

学校から出たばかりのところで、今登校してきた黒崎とバッタリ。
会いたくなかったからサボろうとしたのに、結局会ってしまった。



学校サボっちゃダメだよ


「えっと・・・、忘れ物を取りに。」

「純平君、寮生でしょ。こっち方向に寮はないよ。」

「じゃ、じゃあ昼飯買いに。」

「青ノ葉生のお昼ご飯は全員、寮弁でしょ。外に買いに行く必要もないよ。」

「じゃあえぇーっと、コンビニまで足りない文房具買いに。」

「それこそ寮で寮長に買わせてもらおうよ。コンビニ行くより近いし早いし安いよ。」

心の準備が出来てないまま黒崎と会った矢口。
今日見た夢のせいで、やっぱりまともに顔を見ることが出来ない。
そのせいで口から出る言い訳が全てボロボロ。

「純平君。学校サボっちゃダメだよ。」

「・・・・・・・・・。」

おかげでエスケープしたかった本来の理由から、サボるなと言われる始末。
なんとも格好悪い形となってしまった。



連行される現行犯

それどころかー・・・。

「わ!?バカ、やめろ!」

「ダメ!学校をサボろうとしてた現行犯を見逃すわけにはいかないよ。」

制服のネクタイを掴まれて、ズルズルと。
他にも男子生徒がいる中で、矢口は黒崎に校舎まで連行されていく。

「僕だって、めぐに泣かれるのは嫌だし、悲しませたくないもん。」

あああぁぁぁ・・・。
こんな赤っ恥を掻くぐらいなら、サボらない選択肢を素直に選ぶべきだった。

「分かった!サボんないから、とにかくネクタイ掴むのやめろって!シワになる!」

「大丈夫だよ、ちょっとくらい。校舎に着いたら、ちゃんと離すから。それまでサボろうとしてた気持ち、ちょっとは反省して。」

「あーもー、悪かったってば!」



落ちたナイフ

その時、

「!」

「え?」

矢口から、カラーンッと落ちた1本のナイフ。
それを見た周りの生徒や黒崎も含めて、一瞬の時間が止まった。
ネクタイ引っ張られてたことによって、隠し持ってたソレが出てしまったようだ。
・・・それも含めて、だからやめろって言ってたのに。

「・・・・・・・・・。」

一瞬止まった時間も直ぐに動き出して、そのナイフを速やかに拾って自分に戻した矢口。

「え・・・。純平君、なんでそんな物、持ってるの?」

「・・・・・・・・・。」

黒崎だって驚きを隠せてない顔で、こっちを見ている。



純平のナイフ

なので、ここは嘘付かずに本当のことを。

「護身用。並びに、時たま脅し用。」

「えぇぇ!?」

たかがこんなことで嘘言ったって仕方ないから。
すると黒崎は、さらに驚いた顔をしていた。
無理もない。
こんな平和に学園生活を送ってきていた彼には一切不要なモノなんだから。

「ど・・・、どうして?」

「どうしてだって、いいだろ。」

「でも・・・。」

「アンター・・・、真央先輩には関係ないことだから。」

けどおかげで冷静を取り戻せた矢口は、黒崎を切り捨てるように、彼の目を見てそう吐いた。



落ち着きを取り戻したら

そうして気まずいまま校舎の昇降口に着いたら、言葉どおりネクタイから手を離した黒崎。
「またね」と言葉を弱くして去って行ったが、まだこっちのことを気にしてる様子だった。

(これで好かれる理由もなくなっただろ)

冷静に考えれば、あんな変な夢を見ただけで、何でこんなに焦ってたんだろう。
考えれば考えるほど、昨晩からの自分が馬鹿らしかったことが鮮明に分かってくる。

「矢口。また園芸部のハウス潰した時みたいに、悶着な騒動起こすのやめろよ。」

「犬飼も矢口も、学校嫌なら辞めたらいいのに。」

周囲からの耳障りな声も、今日に限ってよく聞こえた。

「・・・・・・・・・。」

おかげでもっと学校をサボる気になれて、黒崎と別れた後は、教室とは真逆方向へ。
結局、学校の外へ出て、街の方でサボることにした。



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