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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#69 青ノ葉 雨模様(2)(5/5)
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立ち聞きしていたのは・・・

矢口を見かけて後をつけた司は、そのまま図書室に入ったものの。矢口は黒崎と一緒にいて、話し掛けるタイミングが上手く掴めずに伺っていた。
そこで聞いてしまった今の2人の会話に何かあったのか。
まるで逃げるように図書室から去って、ちょっと距離をおいたところでようやく足を止めて、

「・・・・・・・・・。」

そこで廊下の隅で立ち尽くして、自分を抱えていた。
本当に一体、司の身に何があったというのか。
そんな彼に気付いた生徒が1人。

「大丈夫か?司。」

「ー・・・サエ、先輩?」

たまたま近くを通りかかった犬飼が司の元にやって来て、心配そうに伺ってくる。

「具合でも悪くしたのか?保健室ー・・・は、ちょいここから遠いけど、アレな場合ちゃんと行った方がいいぞ。・・・オレは付き添ってやれること出来ないけど。最悪マズイ場合、小太郎呼んで連れて行かせるからさ。」



適切?なアドバイス

犬飼の目からも、司の今の状態が変に感じたのだろう。
とても気を遣ってくれていて、あれやこれやと。焦った表情で色々と司の為に案を投じる。
そんな犬飼を見て我に返れたのか。

「あー・・・大丈夫です、サエ先輩。ちょっと連日の雨で腹が冷えてたから、急に痛み出しただけなんで。」

「本当に大丈夫か?無理すんなよ?」

「本当に大丈夫ですって。それに保健室行くより男子トイレに篭った方が、解決早そうな気がするし。」

「そ、そうか。まあ司が大丈夫なら、それでいいけどよー。」

さっきのは何でもないよ、と。
素振りでも口でも、それっぽいことを言って上手に誤魔化す。

「アドバイスになるか分からんが。・・・気張るなら化学室前のトイレがベスポジだからな。この時間帯、あそこ人の気ないし。」

「わー。適切なアドバイスありがとうございます、サエ先輩!」

犬飼も犬飼で、司が大丈夫なら、と。それ以上は多く触れなかった。



再び見かけた2人

けど偶然、ここで会ったのも何かの縁。
犬飼も何かの用事があって、この辺を彷徨いていたようで、ついでに司にも尋ねる。

「そういや司、純平見なかった?」

「えっ。」

「純平だよ純平。覚えてるだろ?前にオレや小太郎たちと一緒にトランプしてた奴。」

それは矢口の行方。どうやら犬飼は彼を捜してるようだ。
でもまた『純平』と聞いて、ドキッとする司。

「さっき、図書室、いた。」

「図書室ぅぅ!?」

「うん。なんか眼鏡掛けてる人と一緒にいたよ。」

「眼鏡?あー・・・、なるほど。・・・な。」

そのまま尋ねられたことを素直に返したが、犬飼も眼鏡の生徒と聞いて、うーんっと考え込んでしまう。
そしてボソッと、

「また・・・、一緒にいんのか。」

矢口と黒崎が一緒にいるとこは以前も見かけたが、そこに何か気になることでもあるらしい。
が、今は司の目もある為、今はまだ矢口がいる方向へ進まなかった。



昼休み終わった直後で

それから暫くして、昼休み終了の予鈴が鳴る。

「それじゃあ純平君。僕はもう戻るけど、純平君は?」

「このままここでサボる。午後1体育だし、かったるい・・・。俺のことは気にしなくていいから、真央はさっさと戻れ。」

「純平君さっきからナチュラルに、僕のこと、先輩抜かしてる・・・。」

「・・・真央先輩は、遅刻せずにさっさと戻ってください。」

そこで黒崎は先に教室へと戻ったが、矢口は授業自体をエスケープ。
このまま図書室に残って、適当に手にした本をパラパラ読んで退屈凌ぎの時間潰し。

「・・・・・・・・・。」

ちょっとだけ読書にハマりつつある彼だったのか。
それとも、

「随分と、さっきの眼鏡と仲いいのな。」

「・・・・・・・・・。」

黒崎がいなくなったタイミングで犬飼がやって来たから、それを待っていたのか。
さっき知ってる顔の奴がいた気がしたイコール、それは犬飼だったのではないかと。あの時は気にしなかったが、犬飼を見て察しが繋がって、手にした本の棚に戻した。



仲が良い2人を見て

矢口と犬飼。
お互いに素行が良くない生徒で授業に出ないことだって、とっても多い。
だから2人ともこうしてサボってることには、何の違和感も疑問もない。
でも今は少しだけ、あまり良くない雰囲気が漂っていた。

「仲?別に。それほどは・・・。」

「よく言うぜ。この間も、こそこそ一緒にいたくせに。付き合ってんのか?」

「付きッ!?!?勝手に纏わり付かれてるだけだ!なんでそうなる!?」

けど犬飼が変なことを言うせいで、ちょっとだけこの空気が緩和。

「ふーん?じゃあ一方的に好かれてるのか。どちらにしろお熱いね〜。」

「・・・え。これってそういうこと、なのか。」

「それぐらいしか考えられなくね?オレらのような人間に近付く奴なんざ、あんまいないしさ。ま、とにかくそんなこと今はどうでも・・・。」

「ー・・・・・・・・・・・・。」

矢口は返す言葉を失くし、その代わり、

「どうした?純平。顔、真っ赤だぞ?」

「え!?あ、いや・・・。なんでも・・・。」

赤く染まった顔を上手く誤魔化すことで精一杯になった。



『戻る』とは・・・


「とにかく!そんなこと今はどうでもいい。」

けど犬飼は、自分の話を逸らさず続ける。

「ー・・・純平。お前、まさか戻る気でいるのか?」

『戻る』。
それは2人にとって、何を意味してるのか。

「何言ってんだ。だったら今この場でサボってる俺は何だって言うんだよ。」

「・・・まあ、そうだよな。」

尋ねられた矢口は、『戻る』を否定。
それをする気であれば、とっくの昔に授業に出てると。戻らない意思を伝える。
しかしその言葉だけでは、納得させられなかったのか。

「!」

近寄ってきた犬飼は、突然、矢口の胸に拳を入れてきた。



威力ゼロな確かな釘打ち

寸前でパシッと受け止めたから、それが当たることはなかったが、犬飼にしては力が無さすぐるパンチ。

「ま・・・。それでも念のため言っとくわ。もし戻る気でいるなら、純平も他の奴らと一緒だからな。」

「・・・・・・・・・。」

「そのつもりでいろよ。」

けど釘を刺すのには、ちょうどいい威力。
彼はそう、言いたいことを言ったら用が済んだのか、ここから出て行く。
言われた矢口も返す言葉がなかったのか。

「・・・・・・・・・。」

その釘を胸に刺させて、去って行く犬飼を背を、黙ったまま見送ったのでした。



青ノ葉 第69話をお読みいただきありがとうございます!

雨模様編も青ノ葉初期の頃から計画立てていたお話
計画当初にはなかったシーンを書いてる途中で
入れたのが犬飼が矢口の胸に拳を入れるシーン
割と気に入ってます


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