≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#69 青ノ葉 雨模様(2)(3/5)
]  [目次へ]  [

空と純平


「純平。今、いい?」

「・・・・・・・・・。」

そんな空に気付いてるのか、気付いてないのか。
矢口の視界は、本を読んだまま。

「えっと今年から顧問になった櫻井先生が、純平のタイム計りたいらしくて。気が向いたら、いつでもいいから来てって言われて。」

「・・・・・・・・・。」

「もし1人じゃアレな場合、僕も一緒に行くから、その時はー・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

話を聞いてるのか、聞いていないのか。
返事がないから、空からの一方的な話となり、すぐに止まった。



空と純平 2

空は陸上部員。
矢口も陸上部員ではあるが、今ではすっかり幽霊部員。
いてもいなくても、どうでもいい存在。

「・・・羽崎もヒマだな。」

こっちを見てる空の視線に負けたのか。
ようやく言葉を返した矢口だが、本から目は離してない。

「僕は伝言を届けに来ただけだから。」

「顧問も放っとけばいいのにな。」

「去年撮ってた映像を参照に、体育祭の時、純平のフォームが崩れてなかったからって。だから今のタイムが気になるって話になってて。」

「幽霊なんだから、いてもいなくても一緒。むしろいない方が、今いる部員にとって邪魔にならなくてよかね?」

「うーん・・・。でもまだ退部届け出してないから。幽霊部員でも、純平はまだ陸上部の部員だよ。」

ちゃんと顔を合わせてないけど、会話が出来るだけまだマシなのか。
空は矢口の失礼な態度を気にしなかった。



純平の様子を見て


「それじゃあ気が向いたらでいいからね。」

「・・・ん。」

2人の話はそこで終わり、去っていく空。
その様子を見ていた陸哉が、コッソリと。

「よく話掛けられたな。」

「あ、うん。1年生の時、最初の頃だけど純平と話してた時期あったから、それで・・・。」

「ふぅーん。」

「でもちょっと緊張しちゃった。あのまま無視されたら、どうしようってなってたから。」

「あの様子じゃそうなるよな。」

ちょっと離れた位置で矢口を見ながら、彼の話をしていた。

「・・・にしても純平の奴、随分と真剣にあの本読んでんな?」

「うん。僕もそれは思った。」



「俺の空」と呼んだ理由は恋文乱にて

するとその時、

「あー!!陸哉、俺の空と何話してんだー!!」

彼もC組からA組の教室に。
先に出てった空を追って、鳴までやって来た。
その途端、

「・・・うるせぇーのが来やがった。」

聞こえたその声に舌打ちをした陸哉。

「空。もう授業始まるから、さっさとそのバカ連れて戻れ。」

「う、うん・・・。」

「あ、コラ!陸哉!今、俺に向かってバカ言ったな!?」

「・・・・・・・・・。」

「ナチュラルに俺を無視すんな!バカー!!」

空にやって来たばかりの鳴と共に戻るよう指示を。
そのまま鳴はシカトして、自分の席へ戻っていった。



ありのままな感想

時間は進み、あっという間に昼休みへ。
矢口は黒崎がいるであろう図書室へと、真っ直ぐ向かった。

(あれ?今のって純平先輩?どこ行くんだろー?)

その途中の廊下で、司に見つかり、後をつけられてることに気づかずに。

「いらっしゃい純平君。今日も来てくれたんだ。」

「・・・これ、返す。」

そして案の定で黒崎と図書室でバッタリ。
会った途端に今朝借りたばかりの本を彼に返却。

「え。もう読んだの!?」

「ギブ。なんかふわふわしてて、俺には向かない話だった。」

自分の中で前回は好評だったが、今回は不評。
途中で読むのを辞めたと、ありのままな感想を述べた。



隣にいる君を見て

そのあとは、また昨日と一緒。
隅の方だと邪魔がなりにくいと教えてくれた場所で、ゴロリと寝転がり、すぐ近くには黒崎も座って、一緒に過ごす。
梅雨のジメジメから解放されて、落ち着いて静かで昼寝に最適なこの場所が、矢口はちょっと気に入りつつあるようだ。

「ごめんね。純平君には合わないお話持って来ちゃって。」

「いや。それでもサボりの時間潰しには貢献してくれた作品だった。」

「それはまた褒めてるのか褒めてないのか、微妙な感想だね。」

黒崎の手には、昨日又貸ししてまで貸してくれたあの本が1冊。
パラ・・・パラ・・・パラ・・・っと。
隣にいる黒崎は、ゆっくりゆっくり、その本を読んでいた。

「アンタ。またその本、読んでんのな?もう1回以上は読んでる本じゃないのか?」

「ん?んー・・・。・・・・・・・・・・・・。」

そんな彼が気になって訊いたものの、今の言葉の中で何かマズイことでも言ったのか。
最初は素直に答えようとしてくれたが、ハッとその何かに気付いて、すぐに微妙な表情をする。



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×