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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#69 青ノ葉 雨模様(2)(1/5)
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幽閉された男子生徒の噂


「『幽閉された男子生徒』・・・の話です。」

それは青ノ葉学園に隠された1つの噂。
嘘か真か分からないけれど、人から人へ渡っていった、ちょっと不思議なお話。

「え・・・。」

「鈴木先輩、何か詳しいこと知っていませんか?」

それを矢口から明人へ問われる。

「幽閉って、え?何?その軽くホラーが入ってそうな話。」

もちろんその噂を初めて耳にした司も首を傾げた。

「この学校に閉じ込められてる人なんているの?」

「・・・・・・。」



幽閉された男子生徒の噂 2

すると明人は、そんな司の為にも説明を。

「僕も聞いたことあるよ。何年も前の昔の話・・・なんだけどね。」

その噂の男子生徒は、卒業式の日に青ノ葉のどこかに閉じ込められて、卒業式に出られなくなったそうだ。
きっと普段から行いがよくなかったのだろう。
他の卒業生も在校生も、彼がいないことに気付く人は誰もいなかったらしい。いないのが当たり前だったから。
だから捜す人も迎えに行く人も誰1人いなくて、閉じ込められた生徒はそのまま、今も尚どこかでー・・・。

「うわ・・・。やっぱり軽くホラー入ってた!軽く背筋にゾクってきたよ?よかったヒロいなくて・・・。」

「僕も噂として、その話を聞いただけだから。実際にあったかまでは分からないよ。悪魔でも噂だから。」

と。自分が知ってるまでの範囲を、少しだけ顔を苦くさせて教えてくれた。
もちろん伺ってきた矢口にも。



噂じゃないの?


「ごめんね矢口くん。その話、僕もそれぐらいしか知らなくて。」

「いえ・・・。」

しかし明人が語った話に、矢口の中では有力な情報は得られなかったようだ。
だからなのか、その続きの話を。

「・・・この学校の教師。あんまり信じない方がいい。」

自分が知り得てる情報を2人に聞かす。

「その生徒を閉じ込めた人。教師だという説が濃厚だから。」

「えぇ!?」

それは明人も初耳で、司も初耳に初耳が重なって、驚きを隠せなかった。

「噂・・・じゃないの?この話、本当にあったってこと?」



尋ねた本来の用

だけど矢口の口から、それ以上語られることはなかった。
注がれた麦茶をグラス1杯分、キレイに飲み干してから席を立つ。

「それじゃあ俺は、これで・・・。短い間だったけど、お世話になりました。」

これで彼の用事は終えてしまったのか。
もうここには来ないようなセリフを吐いて、ペコリと頭を下げ、家庭科室を後にしようとする。
すると、

「待って、矢口くん。」

矢口が出てっちゃう前に、呼び止めてきた明人。
合わせた視線で、まだ他に用があったのでは?と、確かめる。

「僕に用って、本当にそれ、だけ?」

「それだけって?」

「例えばー・・・、真央くんのこととか。」

もちろん名指しした部分は、司に聞かれないよう小声で。



真央って、誰?


「真央って、誰???」

けれど矢口から出た答えは、『誰ソレ』状態。
名前だけだと分からなかったようで首を傾げてしまう。

「真央くんは、真央くんだよ。黒崎 真央くん。最近よく一緒にいるよね?」

「あー・・・。」

なので今度はフルネームで尋ねると、やっと誰のことだったかを理解したようだ。

「まとわりつかれて、鬱陶しいってことぐらいしか。」

「それだけ?」

「それ以外、何も思い付かない。」

でもそれ以上のことはなく、その返答だけで、明人は自分がしていた今までの行動が全て空回っていたことを把握。

「それが何か?」

「あ、ううん。なんでもない、なんでもない。また何かあったら、いつでもここに来ていいからね。」

あわあわとそんな自分を誤魔化しつつ、そのまま彼を見送った。



重なった昨日と今日

それから家庭科室を出た矢口は、昇降口へ向かっていた。
下駄箱で上履きから靴に履き替えて、寮に帰ったら、ちょっとひと休み。
お腹空いたら食堂でご飯食べて、風呂入って、宿題はやりたくないから放置して、あとは寝る。ひたすら寝る。
そんな代わり映えのない計画を頭の中で立てて、さっそく行動に移そうとした。その時、

「!」

妙な感覚に体が反応し、反射的に辺りをキョロキョロ見渡す。

(流石に今日は、いない・・・よな?)

昨日と今日。中身は違うが、自分の行動が同じだった為、またここで黒崎が現れるんじゃないかと、思わず警戒してしまったのだ。

「・・・・・・・・・。」

まあ、いないならいないで、それに越したことはない。
ホッとした息を吐いて、帰路を急いだ。



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