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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#68 青ノ葉 雨模様(1)(4/4)
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オススメでも又貸しはアウト 2

翌日の昼休み。
図書室で黒崎と会った矢口は、渡された本を。率直な感想と共に返す。

「面白かった。」

「ホントに!?」

けどそれは昨日、言おうとしていたこととは全く違うこと。
始めは暇を潰す為だったのに、主人公があのことを親友に打ち明けたとことか、その後の展開とか。先が気になってどんどん読み進め、気付いたら朝。
悔しいが、睡眠時間潰してまで読破するとは思わなかった。

「さすが『図書室の本を全て読みきった変態』が勧めてきた本なだけあったな。」

「その言い方やめてほしいな。全然褒められてる気がしないし・・・。」

おかげで午前の授業をサボって、寝不足解消する羽目に合ったのだから。

「でもびっくりした。昨日貸した本を昨日のうちに全部読み切っちゃうなんて。」

「面白かったからな。」

「よかった、純平君にオススメしてみて。あ、こっちの本も僕のオススメなんだけど、よかったらー・・・。」

「だから安易に図書室の本を又貸ししようとすんなって。」



昼休みの図書室

矢口が図書室に来たのは、もちろん黒崎に本を返すのが目的。
ここなら3年の教室に向かうより、会える気がしたから。
いつも昼休みは中庭の木陰で休んでいる時が多いが、今日も雨だから外で過ごすことが出来ない。
このあと、どうしようか。
そんなことを考えていると、そよそよ吹いてる室内の冷房が心地良いことに気付く。

「涼しいな・・・、ここ。」

「うん。これでも今時期の適切な室温だよ。単純に教室より人いないし広いから、余計に涼しく感じるのかもね。」

これなら梅雨のジメジメ感も、ここにいるだけで忘れられそう。
おまけに人も全然いないから、落ち着いてて静かで、昼寝するのに最適な感じ。

「純平君、ひょっとして眠い?よね。一晩で読み切っちゃったぐらいだから。」

「・・・ん。まあ、まだちょっと。」

「それならここでちょっと休んでいくといいよ。隅の方なら邪魔になりにくいし。」

「上級生が下級生に図書室で昼寝勧めるのは、ちょっとどうかと・・・。」

「隅の方ならホント大丈夫だから。僕も時々、寝ちゃうから人のこと、あんまり悪く言えないし。純平君、寝不足にさせたの僕が原因でもあるわけだし。」

だからテキトーにその辺ぶらついて時間潰すのと同じ感覚で、その後もここで過ごすことにした。

「ならお言葉に甘えて、そうさせてもらうわ。」

「うん。おやすみなさい、純平君。」



再び集う3人

それからあっという間に放課後を迎える。
矢口はまた明人がいる家庭科室へと、足を運ばせていた。
けど扉を開けると、

「純平先輩、こんにちはーっ!」

「矢口くん、いらっしゃい。」

「・・・・・・・・・。」

明人のほかにも先客が。
司もいて、今日も麦茶をご馳走になっていた。
つい先日からここに来るようになった矢口だが、前もその前も、ただただお茶を飲ませてもらっただけ。
それ以外は何もしてなかったが、今日も明人のところに来たってことは、何かしら用がある・・・はず。
そのせいか目が合った明人から何かのアイコンタクトが、

(ごめんね。今日、弟の友達来ちゃってるから。)

と、司に気づかれないようにしていた。
けど、そこで引き返さなかった矢口。

「・・・・・・・・・。」

「え?あ、ちょっと待っててね。矢口くんの分のお茶も用意するから。」

そのまま中へ入り、黙ったまま空席だった司の隣に座る。



ここに来た用事

机の上に並ぶ3つのグラス。
どれにも冷たい麦茶が注がれており、ちょっとしたお茶菓子を明人が用意してくれた。

「純平先輩も明人兄のとこにお茶しに来たの?」

「・・・みたいだね。ごめんね、今日のお茶菓子そんなに用意出来なくて。」

自分の隣にいる、そんな矢口がやっぱり不思議に思う司。

「そういえば司くん。あれからめぐと久野くん以外の生徒会メンバー覚えられた?」

「全然さっぱり。」

「ちょっとは覚える気ある?覚えた上で生徒会の人たちに話してないとキッシュの件、ミニトマトが実っても作ってあげれなくなるよ。」

「うぅぅ・・・。だって全然会う機会ないし。」

明人とお喋りしながら、彼を気にしていた。
すると矢口も、いつまでも黙りっぱなしではいられなかったのだろう。
麦茶を飲んでいたコップを静かに置いて、ようやく口を開かせる。

「鈴木先輩・・・、話があるんですが。今、いいですか?」

ここに来た本来の用事を伝えるため。



お邪魔ならば


「い゛?!あ、でもちょっと待って。」

しかし明人は一緒にいる司のことを気にしており、いまいち乗る気になれない様子。
チラチラ横を見て、アセアセと矢口を待たす。

「ん?あ、俺、邪魔?」

「え。あ、あ、いや、えぇーっと・・・。」

けど、

「いや。別にいたって構わない。」

矢口としては、司がいてもいなくてもどっちでもいいこと。
明人としては、あまり司に聞かれたくない模様。
そうして司も、この空気を察してしまったようで席を立とうとした。

「ん?俺が邪魔ならどっか行くよ?明人兄の邪魔したくないし。」

ここ数日のことを思い出して。



嘘か真か分からない噂話


「ああぁ、待って司くん。ちょっと待・・・っ。」

でも明人からしたら、それもちょっと嫌なようだ。
ワンチャンでもツーチャンでも、そのお察しを司から誰かに伝わる可能性を恐れている。
だけど矢口も待たせて司も待たせたら、それでは話が進まない。
だからこの空気を読まずして、矢口は自分の用を告げる。

「『幽閉された男子生徒』・・・の話です。」

「え・・・。」

「鈴木先輩、何か詳しいこと知っていませんか?」

「幽閉って、え?何?その軽くホラーが入ってそうな話。この学校に閉じ込められてる人なんているの?」

それは青ノ葉学園に隠された1つの噂。
嘘か真か分からないけど、人から人へ渡っていった、ちょっと不思議なお話。



青ノ葉 第68話をお読みいただきありがとうございます!

梅雨時期のお話なので開始時期を
リアルタイムに合わせたかったので
更新をお休みしていた間も
更新復活させてからも
微妙な調整を繰り返していたら
3章の話数が今までの章と比べて
やたら長くなってしまいました・・・


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