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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#68 青ノ葉 雨模様(1)(3/4)
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昇降口にて

家庭科室を出た矢口は、昇降口へ向かっていた。
下駄箱で上履きから靴に履き替えて、寮に帰ったら、ちょっとひと休み。
お腹空いたら食堂でご飯食べて、風呂入って、宿題はやりたくないから放置して、あとは寝る。ひたすら寝る。
そんなことを頭の中で計画立てて、さっそく行動に移そうとした。その時、

「あ。純平君、やっと来てくれた〜。」

「!?」

彼も昇降口にいたのか。
矢口を見つけた黒崎が、パアッと明るい顔をして、こっちにやって来る。

「純平君の靴、まだ下駄箱にあったから待ってたんだけど。待っててよかった〜。やっぱりまだ寮に帰ってなくて。」

「え?」

「でももう少し早く来て欲しかったな・・・。あともうちょっと遅かったら、僕、待ちくたびれて帰っちゃうところだったから。」

「・・・・・・。」

そして色々と文句を言って来たが、ちょっと待ってくれ。
こっちは「待っててほしい」とか、そんな約束してないどころか、そんな話すらしてない。
なんなら今日会うのは、この場が初めまして。
一方的に勝手に待たれていたことを、何故こんなに文句言われなきゃいかんのか。
文句を色々言う前に、ちょっと待ってくれ。



ちょっと待ってくれ


「なんてね。今日は渡したい物あって、純平君が来るまで絶対待とうって思ってたから、ずっと待ってたんだ。」

「・・・渡したい物?」

けど黒崎が待っていたのには理由があった。
鞄にしまった本を1冊取り出して、それを矢口に差し出す。

「これ。時間ある時に、よかったら読んで。純平君にオススメな本、持ってきたんだ〜。」

その本は先ほど図書室から借りてきた小説。
満面な笑顔で言ってきたが、これもちょっと待ってほしい。

「これって図書室の?」

「うん。僕のお気に入りの中の1つだよ。」

「・・・図書室の本の又貸しって、普通にダメじゃね?」

「あ。」

自分が気に入ってるとか、オススメだからとか、そんなことはどうでもいい。
やってはいけないことを何も考えずにやろうとしていたので、溜め息を吐いた矢口は手に取り、正論述べて、彼にちょっと待たをかける。



オススメでも又貸しはアウト

案の定で黒崎は気付いてなかった。っというより、忘れていたようだ。

「あー・・・。でも、うん。大丈夫だよ、きっと。」

それでも諦めがつかない様子。
なので更なる追い打ちをかけて、引いてもらおう。

「何が大丈夫なんだよ。どこが大丈夫なんだよ。俺がこの本を破いたり紛失したら、咎められるのは俺じゃなくて、あんた。責任負わされるのも、あんた。学校の所有物なんだから、こんなこと言われなくたって分かるだろ。」

「・・・うん。でも。」

しかしそれには動ずることなく、あっさりとニッコリ笑って返してきた。

「純平君。そんなことするような人じゃないから。」

と。



とにかくオススメだから


「そんな安っぽいセリフ、よく吐けるな。・・・俺のこと、よくも知らないくせに。」

「うーん。それ言われちゃうと、その通りなんだけど。でも思ったことを言っただけだよ。とにかくオススメだからー・・・。」

すると矢口は耐えれず、黒崎から目を逸らす。
まさかそんなセリフで、あっさり打ち返されるとは思わなかったから。

「それじゃあ気が向いたらでいいから。読んだら感想聞かせてね。」

「え。あ、ちょっと!」

そのせいで言い返せないでいたら、向こうが時間を気にしだして、結局、本は渡されたまま。

「またね、純平君。」

「・・・・・・。」

そう言って、先に帰って行った。
雨が降る中、パンッと傘を差して、パシャパシャ足音を鳴らしながら。



矢口のそれから

そのあとは予定していた計画通り。
寮に帰ったら、自分の部屋で、とりあえず寝た。
30分。いや、1時間ぐらいしたら空腹が目覚ましになって、食堂に行き晩ご飯を済ませる。
その後、大浴場で汗を流して、歯磨きとか済ませたら、再び自分の部屋へと戻ってきた。

(ふぅ・・・。)

宿題?・・・は、いいや。
別にやらなくても。
元からやる気なかったし。

(・・・・・・ん?)

そしてベッドの上に横になった途端、黒崎から渡された本とぶつかり、せっかく今の今まで忘れかけていたことを思い出す。



黒崎のオススメネタバレ


『とにかくオススメだから読んでみてほしくて。』

それは矢口が言い返せれなかった間、黒崎に言われたこと。

『どの辺がオススメかと言うとー・・・』

矢口が何も言わないことをいいことに、勝手にオススメを語ってきたんだ。

『主人公が、あることを親友に打ち明けるんだけどー・・・。』

ペラペラと、そのお口を達者にさせて。

『それでその後、主人公はー・・・。』

『まだ読むとは言ってないけどさ。いきなり色々言うのやめないか?』

まだ読んでもない本の先の展開を言われまくって、耐えれず止めて、そこで時間を気にして帰って行ったんだ。



読むか読まないか

これ。読まなかったら読まなかったで、また色々と文句言ってくるんだろうか。
頼んでもないことを、一方的に貸してきたことを。せっかく図書室から借りてきたのに・・・とか、悄げたことを言ってきそうだ。
その姿が安易に目に浮かぶ。

「はぁ・・・。」

なのでここは敢えて読んで、つまらないと率直に返そう。
黒崎のオススメを否定すれば、もうこっちに来る機会が減ってくれるはず。
最近、何かと構われていたけど、機会さえ減れば構ってくることさえ自然的になくなるだろう。

(勝手にオススメと言われたあの展開の、どこに面白要素があんだよ。)

そうなることを願って、矢口は就寝時間で寝るまでの間、この暇を潰すため黒崎に渡された本を手に取り、パラパラと読み始めた。

「・・・・・・・・・。」



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