家庭科室を出た矢口は、昇降口へ向かっていた。 下駄箱で上履きから靴に履き替えて、寮に帰ったら、ちょっとひと休み。 お腹空いたら食堂でご飯食べて、風呂入って、宿題はやりたくないから放置して、あとは寝る。ひたすら寝る。 そんなことを頭の中で計画立てて、さっそく行動に移そうとした。その時、
「あ。純平君、やっと来てくれた〜。」
「!?」
彼も昇降口にいたのか。 矢口を見つけた黒崎が、パアッと明るい顔をして、こっちにやって来る。
「純平君の靴、まだ下駄箱にあったから待ってたんだけど。待っててよかった〜。やっぱりまだ寮に帰ってなくて。」
「え?」
「でももう少し早く来て欲しかったな・・・。あともうちょっと遅かったら、僕、待ちくたびれて帰っちゃうところだったから。」
「・・・・・・。」
そして色々と文句を言って来たが、ちょっと待ってくれ。 こっちは「待っててほしい」とか、そんな約束してないどころか、そんな話すらしてない。 なんなら今日会うのは、この場が初めまして。 一方的に勝手に待たれていたことを、何故こんなに文句言われなきゃいかんのか。 文句を色々言う前に、ちょっと待ってくれ。
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