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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#68 青ノ葉 雨模様(1)(1/4)
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矢口 純平episodes


『どんな物語にも、必ず終わりがある。』

一度、壊れてしまったモノは、もう元には二度と戻らない。

『どんなに長くても、果ては必ず存在しているから。』

それは既に知ってたはずだったのに。

『それが望んだ結末じゃ、なかったとしても。』

それを思い知ったのは、後の話ー・・・。

『そこが終わりの果てである限り、それはもう、ここでおしまい。』

人通りが少ない商店街の裏路地で、ボロボロのゴミのように成り果てながら、ただただ降り続ける雨を見ていた。

『これで、おしまいー・・・なんだよ。』

今度こそ、誰も誤った選択を選ばないよう願いながら。



本日の文芸部

今年の梅雨は例年よりちょっと遅れてやってきたけど、遅かった割には朝からザーザーと。梅雨時期らしい雨が連日続いて降っていた。

「はい、稚空くん。質問です。」

「なぁに?梅ちゃん。」

「どうして主役は、いつも遅れてやって来るのですか?」

「なかなか粋な質問してくるね、梅ちゃん。」

放課後の図書室。
ここで今日も文芸部が活動していて、部員である稚空と梅ちゃんの2人の姿が揃っていた。

「でも鉄則すぎるほど王道な展開だよね。例えばバトル漫画だと、これさえ守ってれば大体の展開は面白くなるっていうか。主役の登場が遅れれば遅れるほど、暴れまくった敵キャラを倒した爽快感が爆発する、人の心理を利用したカタルシスだね。」

「なるほど。・・・要は、作者による演出という訳ですね。」

「そうだねぇ。梅ちゃんも主役になったら、遅れてやって来るんだよ。これ鉄則だからね。」

けど他にいる部員のメンバーは疎ら。
今日も各々やりたいことをやって、この時間をのんびり過ごす。



絶版本

そんな文芸部に遅れてやって来た1人の男子生徒。

「こんにちはー。」

「黒崎先輩、こんちゃーす。」
「黒崎先輩、こんにちはです。」

その生徒は同じ文芸部の部員、真っ黒な髪に黒縁眼鏡を掛けた3年の黒崎 真央。

「今日はもう参加しないで、帰ったかと思いましたよ。」

「うん。帰る前に本を借りて行こうかなって思って。」

「え!?またその本、借りてくの!?」

「うん、また。好きな話は何回読んでも飽きがこないよね。」

彼が図書室にやって来たのは、部に参加する為ではなくて、1冊の小説を借りる為だった。

「そこまで借りる回数多いなら、もう買った方が早くないですか?」

「うーん・・・、僕も本当はそうしたいんだけど。これ、昔の小説だから。今じゃプレミア付いちゃってるし、本自体なかなか売られてないんだよ。」

「なるほど。絶版本の購入は、なかなか難しいですもんね。」



黒崎からの印象


「でも今回は僕じゃなくて、ぜひ読んでみてほしい人がいて、その子の為に借りに来たんだー。」

慣れた手つきで生徒用の貸し借り情報記録に自分のデーターに残し、一緒に持っていた鞄の中にしまう。

「もしかして、その人って。この間、ちょっとだけ図書室にいた生徒?」

「うん、そうだよ。」

「黒崎先輩。最近、あの人とよく一緒にいますもんね。」

これにて黒崎の用は、おしまい。
稚空とちょっとだけお喋りしたら、梅ちゃんともバイバイしてさようなら。

「仲、良いんですね。その人と。」

「うんっ。最初は怖い人なのかなって思ってたけど、今は全然。純平君は良い人だよ。」

借りた本をしまった鞄を抱えて、笑顔で図書室を後にした。



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