今年の梅雨は例年よりちょっと遅れてやってきたけど、遅かった割には朝からザーザーと。梅雨時期らしい雨が連日続いて降っていた。
「はい、稚空くん。質問です。」
「なぁに?梅ちゃん。」
「どうして主役は、いつも遅れてやって来るのですか?」
「なかなか粋な質問してくるね、梅ちゃん。」
放課後の図書室。 ここで今日も文芸部が活動していて、部員である稚空と梅ちゃんの2人の姿が揃っていた。
「でも鉄則すぎるほど王道な展開だよね。例えばバトル漫画だと、これさえ守ってれば大体の展開は面白くなるっていうか。主役の登場が遅れれば遅れるほど、暴れまくった敵キャラを倒した爽快感が爆発する、人の心理を利用したカタルシスだね。」
「なるほど。・・・要は、作者による演出という訳ですね。」
「そうだねぇ。梅ちゃんも主役になったら、遅れてやって来るんだよ。これ鉄則だからね。」
けど他にいる部員のメンバーは疎ら。 今日も各々やりたいことをやって、この時間をのんびり過ごす。
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