もちろん使った食器類を片したら、荷物をまとめて彼も寮へと帰るつもりだ。 本降りにならないうちに・・・と、明人も急ぎ足でいたが、彼の訪れによってその足は止まった。
「え・・・。矢口くん?」
家庭科室を出ようとした途端、その入り口には矢口の姿が1人。
「どうしたの?こんなところに。あ、犬飼くんたちなら、ついさっき寮に帰ったよ?」
「・・・・・・・・・。」
けど矢口は犬飼たちと入れ違ったわけじゃない。 待っていたんだ、明人が出てくるのを。 待っていたんだ、明人が1人になるタイミングを。 明人はそんな彼の表情を見て察したのか。
「・・・いいよ、中に入りなよ。麦茶しか出せないけど、それで良ければ。」
帰りたかった足を取り消し、矢口を家庭科室へと招き入れたのでした。 ここに1人でやってきた用を聞くために。
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