バトンが渡ったタイミングで、A組とB組の順位が入れ替わり、トップに出たのは瑛。
(この面子で負けるわけないだろ。)
その結末はリレーが始まる前から分かってた。 代表になってアンカーに決まった時から分かってた。 途中でアクシデントさえなければ。 自分の番になれば、余裕で勝つ。 なにせ1年で敵はいないから。 午前中の100m走で、それは確信にも出来たはず。 そのはずだった矢先で、
「朋也ー!頑張れー!」
(こいつ・・・ッ!)
瑛の顔から余裕だった色が消えていく。 後ろから自分を追ってくる負けず嫌いの魂を燃やした朋也との距離が、ずっと近いまま。
「瑛ー!最後まで気を抜くなー!」
(誰が抜くか!そもそも始めから抜いてねえよ!!)
離せられない予想外が、確信と慢心を捨てさせ、心の奥底まで本気に染められる。 そんな2人の接戦は残り30m。いや、最後の最後まで続きー・・・。
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