プログラムは『借り物競走』へと差し掛かる。 この競技には1年生からは圭がエントリーしていて、彼が引いたお題は『仲のいい友達』。
「・・・・・・・・・。」
しかし彼には親しいと呼べる友達がいません。 彼をあまり快く思ってない生徒からも、お題を拾った位置から動こうとしない圭に、順調なクラスと見比べて批判が生まれる。 すると、
「コラー!圭!」
聞こえてくるブーイングを省みず、ズカズカとA組の応援席から恭がやって来た。
「何ボーッと突っ立ってんだ!」
「無理だから、このままリタイアしようかと。」
「あ?リタイア!?ふざけんな!ちょい貸せ!そのお題。」
そしてバッと強引にお題の紙を奪って、諦めかけてた圭に手助けを。
「なんだコレ。めちゃくちゃ簡単じゃねえか!このままゴールまで行くぞ圭!」
「いや、けど・・・。」
「いいから行くぞ!」
そのまま腕を掴み、2人揃って時間制限内ギリギリでゴール。 審査員も周囲の空気をよんで、圭のお題を読み上げることはなかった。が、せっかくの体育祭だというのに、1年A組に淀んだ気まずさまでは変えることが出来なかった。
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