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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#63 6月の第3日曜日(1/3)
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小さな訪問者

今日はよく晴れた日の日曜日。
夏の大会に向けて部活三昧な青ノ葉学園に、正門から小さな男の子が1人でやってきた。

「きちゃった!」

その子の名前は、本田 みのる。
本田先生のお子さんで、パパもママも大好きっ子な5歳児。
前回(#35)同様、またお家を抜け出しちゃって来たのだろうか。
青ノ葉に到着と共に、その辺をキョロキョロ見渡してパパを探す。

「・・・パパどこ?」

でも直ぐにパパを見つけられなくても、みのるはグズることなく全然平気。・・・っというより常習犯のため、へっちゃら。
大好きなパパを求めて、あっちこっち青ノ葉内をうろちょろ歩き回る。

「パパ〜?」

今回は首から掛けた水筒と共に、画用紙を1枚。とっても大事そうに抱えながら。



最初に出会ったのは

「おはな!」

みのるが最初に向かっちゃったのは、正門近くにあった園芸部の花壇。
赤や黄色、オレンジのお花にパタパタと近づいて屈み、じっくりじーっとまじまじ眺める。
そのとき、

「あれ?ぼく、どこの子?」

「?」

そんなみのるに声を掛けてきたのは、2年の陸上部部員、羽崎 空。
空は、これから始まる陸上部の練習へ。グラウンドに向かっていた途中で誰よりもいち早く、みのるに気づいた。

「あ?空、誰だ?その子。」

「分かんない。陸哉も誰の子か分かんない?」

「さあ?」

そして一緒にいた2年の野球部部員、真柴 陸哉。陸哉も近づいて、空と共に声をかける。

「なんだ、鳴との子じゃないのか。」

「なわけないでしょ!っていうか、こんな小さな子の前でそんな冗談言わないで 。怒るよ?」



みのる5さいくん

「迷い込んで来ちゃったのかな?」

みのるを見て、空も陸哉もどうしようどうしよう?と話し合う。
迷子だったら、先ずは警察?
いや、その前に誰か先生を呼んでくるべき?

「ボウズ。名前は?」

「なまえ?」

「自分のお名前、言える?」

とりあえず2人も屈んで目線を合わせ、みのるから最低限でもいいから情報を聞き出す。

「うんっ!みのる5さい!」

「・・・すごい名前だね。みのる5さいくんっていうんだ?」

「いや、最後のは違うだろ。この子、自分の年齢も言ったんだろ?」



パパはどこ?

すると今後は、みのるから空と陸哉に。

「おにいちゃんたちだあれ?パパどこ?」

と、パパがいる場所を尋ねた。

「パパ?みのるくん、パパと一緒にいたの?」

「ううん。パパ、ここいる。だからみのる、パパにあいにきたの!」

それと同時に、青ノ葉にみのるのパパがいることを知り、驚いた2人。

「え、青ノ葉にパパいるの!?」

みのるが迷子じゃなくて、ホッと息を吐く。
でも問題は、ここから。

「で?みのる、パパって誰?」

「パパはパパ!パパどこ?」

みのるのパパが誰なのか。
訊いても『パパはパパ』としか答えないから、結局誰の子か分からなかった。



指先にいる彼

「どうしようね?久野くんあたり何か知らないかな?」

「んだな。克也に聞いてみて、それでも分かんなきゃ職員室だな。」

「そうだね。陸哉、頼める?」

なのでとりあえず他に助っ人と。
陸哉から久野へ、みのるのことをメッセージ送って返ってくる情報を待った。
その時、

「あ!とーちゃん!」

と。
誰かに気づいたみのるが、ここにやって来た彼に人差し指を向けて、そう呼んだ。

「お?みのるの父さん来たか?」

「って、えぇ!?」

しかしその指先にいたのは、この近辺の花壇の様子を見に来た朋也。

「えっ!?後藤くんが、みのるくんのパパ!?!?」

「・・・・・・・・・?」

『とーちゃん』を『父ちゃん』と同じイントネーションで言ったせいで、みのるのパパ=青ノ葉生徒1年(朋也)だという疑惑が浮上。
まさかすぎる展開に、ひどくビックリする2人だった。



司のせいでごめんなさい

「・・・え。なに?空、あんな奴と知り合いなのか?」

「あんな奴って、陸哉。そんな言い方したら後藤くんに失礼でしょうが。」

しかし陸哉はそれ以外にも。空がおっかない顔つきをした1年生と知り合っていたことにも驚き、ダブルでビックリ。

「後藤くんは同じ陸上部の後輩くんの友達。僕もちょっと前にその後輩くんに紹介されて知り合ったばかりだけど、後藤くん全然良い子だよ。」

「へぇー。ふぅーん。へぇ〜。」

「ごめんね、後藤くん。友達が後藤くんに向かって、変なこと言っちゃって。」

「・・・いえ。慣れてますから。」

けれど空のフォローもあり、それ以上の誤解は招かれることなく、朋也はこうして陸哉とも知り合う。
おかげでそっちの面は解決したが、もう一つのビックリはまだ未解決のまま。

「ところで後藤くん。この子、みのるくんのパパって、後藤くん・・・なの?」

「違います。」

改めて朋也にみのるのことを尋ね、朋也のクラスの担任。本田先生の子供だと紹介されて、こっちの誤解も無事に解かれた。



みのるを連れて道場へ

「あー、ビックリした。後藤くんのこと『とうちゃん』呼ぶんだもん。後藤くんがみのるくんのパパかと思ってビックリしたよ。ごめんね、僕まで変なこと言って。」

「なんか、すみません。要らぬ誤解を招かせて・・・。」

「とーちゃんは、みのるのパパじゃないよ!」

「まあ、そうだよな。フツーに考えれば違うって分かる話だったな。こっちこそ悪かった。」

その直後に陸哉のスマホからメッセージの着信音が。
みのるは本田先生の子供であることを、久野の返事からも教えてくれていた。
それと共に寮長にも協力してもらって本田先生に伝えてくれたからと。みのるを道場に連れてきてほしいと、お願いされる。

「ー・・・とはいえ、オレらこれから部活だしな。」

「僕も遅刻すると冥に怒られるし。」

「俺、行けますよ。柔道部に・・・友達、いるんで。」

でもそれはこれから部活な空と陸哉には、ちょっと難しい話だった模様。
だから2人に代わって続きは朋也が。みのるを引き受けて、久野のお願い通り、柔道部へ届けに行くことにした。

「なら任せた。克也にも伝えておいたから、みのるのことよろしく頼むな。」


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