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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#62 それぞれの部活動風景
(サボリ組編)
(2/4)

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窓からやってきたオレンジ頭

グー、グー、グー。
グースカピー。
グー、グー、グー。
むにゃむにゃむにゃ。


明人が家庭科室から出て行ってから、何分経ったのだろう。

「・・・!」

突然、教室の窓がガラッと乱暴に開いた音が。
そこから誰かが入ってきた気配で、司がふと目を覚ます。

(ん・・・?誰か、きた?)

なんだろうと目をこすりながら、そっちを向くと見知らないオレンジ頭の男子生徒が1人。やっぱり家庭科室に入って来ていて、そのまま窓際の壁を背にして身を潜めていたのだ。

(・・・え、誰?)



窓からやってきたオレンジ頭 2

けど彼がやって来てから、瞬く間に外が騒がしくなってくると共に、今度は見覚えのある生徒がやって来た。

「あ、あれ?司、なんでここにいるの?」

「克兄ちゃんこそどうしたの?」

その生徒とは久野のこと。
久野も家庭科室に司がいることに気付いたが、今はそれどころではない。窓から室内を覗いてキョロキョロ見渡して、誰かを探してるようだった。

「でもちょうどよかった。司、この辺りにオレンジ頭の奴、来なかった?」

「オレンジ・・・頭???」

そして探してるその誰かを。オレンジ頭の生徒のことを尋ねられたけど、どうしよう。
めっちゃ司の前にいるけど、久野の位置からは見えてないみたいようだ。
しかもそのオレンジ頭もこっちに向かってシー!シー!と。口に人差し指を立てて、『言うな』とジェスチャーを送ってきている。



改めましてのご対面

ので、

「見てないよ?うん。そんなに目立つ頭してたら、ここを通っただけでも気付くだろうし。」

「そっか、ありがとう。・・・まったく、どこまで行ったんだか。」

久野には悪いことをしたが、なんとなくオレンジ頭の味方を。
見てないことを伝えると、久野はその生徒のことを追っていたのか。またどこかへと走り去って行く。
そして遠ざかっていく足音と気配に、ホッとした肩を撫で下ろしたオレンジ頭。

「ったく・・・。『どこまで』は、こっちのセリフだっつーの。いつまでもしつけえんだよ、先公のクソ犬が。」

そのオレンジ頭の生徒というのは、もちろん犬飼のこと。
こうして司は、比路や朋也とは違う形で、彼と初めて顔を合わす。

「うん?なんか今、一瞬。嬉しそうに聞こえたのは気にせい???」

「んなもん気のせいに決まってるだろ。誰がアイツなんかに追われて嬉しがるか!!」



部活に行かない1年生

「まあともかく。どこの誰かは知らねえが助かったわ。アイツの知り合いっぽかったけど、匿ってくれてさんきゅーな。」

司のおかげで、追っ手の久野から免れた犬飼。
改めて靴を脱ぎ、窓際から司の元へとズカズカやってきた。

「ところでお前、1年・・・だよな?何でここにいるんだ?家庭科部に1年の部員なんていないだろ。」

「何でって、なんとなく?暇だったから、遊びに来ただけだよ。」

「遊びにって・・・、おいおい。オレが言っていいセリフじゃねえけど、部活はどうした?」

するとさっそく犬飼から司へ。
どうやら彼の目からも、ここに司がいるのが気になったようで尋ねてくる。

「・・・行ってないのか?」

「うーん、自由参加の部だから。別に今日はいいかなって思って。なんとな〜く気分乗らないし。」

でもその答えを、どう言おうが。
結局、『サボり』という結論にたどり着くのであった。



部活サボり仲間

この時期に部活をサボる1年生。
その姿は、もちろん学校の風紀を乱す行為であり、先生たちにもあまりいい印象を与えないだろう。

「先輩?こそ、部活行かなくていいの?」

「オレのことなんて別にどうでもいいだろう。つーか1年なら、もっと年上に敬語使え。オレのが先輩で年上なんだから。」

「あ、やっぱり先輩?は、先輩だったんだ。同学年ですらあんまり覚えてないから、先輩がどこの学年かよく分かんなかっただけです。ごめんなさい。」

「まったく。アイツらといい、今年の1年はなってないガキが多いんだな。」

理由は分からないけど、この時間で久野に追われていたってことは、犬飼も司と一緒。
理由はどうであれ、彼も部活をサボってる上級生。

「先輩も部活をサボってるってことはー・・・。もしかして先輩も今、ヒマな人!?!?」

「は?」

そんな犬飼をサボり仲間だと認識した司は、犬飼に目をキランッと光らせる。



部活サボり仲間 2

今現在で、部活をサボっている同士の2人。

「ヒマなら俺と一緒に遊びませんか!?こういうこともあろうかと、カバンにひっそりトランプ持ってきてたんですよね。」

「はぁ!?ちょ、ちょ、ちょ。ちょっとまて、ちょっとまて。なんでオレが1年のお前とトランプで遊ばなきゃならねえんだ!!そこまでオレはヒマじゃねえ!!」

会って間も無く、お互いまだ名前すら交わしてない仲なのに。
ここぞとばかりに遊ぼう遊ぼうと、持ってきていたカバンからトランプを引っ張り出して、ニッコニコな顔で誘いまくる司。
けれどその笑顔にも訳があって、

「言い方悪くてごめんなさい。でも俺・・・。今、友達いなくて。」

「は?」

「だから、その・・・。俺と遊んでくれそうな人、探してて。」

「・・・・・・・・・。」

そう口にした一瞬、ニッコニコな顔がどこか寂しそうな色を映し出した。



1回だけ

「いないって、おい。どういうことだよ。」

「あ、はい。正確にはいないと言うよりは、いなくなっちゃったって言った方が正しいかもです。」

司のこの発言を正しく直すと『友達みんな部活でいなくなったから、自分と遊んでくれそうな人を探してる』。
でもその一部分が抜けたせいで、犬飼はそれをどう捉えたのか。

「・・・オレなんか追ってるヒマあんなら、こういうのをどうにかしろよ。知り合いなんじゃなかったのか?」

「え?」

はぁ・・・と、少し長めのため息を吐く。
そして、

「1回だけだぞ。」

「え!」

「そんなに遊びたいなら遊んでやるから。ただオレもヒマじゃねえから、1回だけな。」

『しょうがねえな』と口にしておきながら、彼の表情はどこか優しく。渋々しながら、司と遊ぶことにした。



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