≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#62 それぞれの部活動風景
(サボリ組編)
(1/4)

]  [目次へ]  [

みんなが部活に行った後の放課後

今日も放課後になった途端、部活動の午後練時間が始まった。
園芸部は、園芸部の活動場へ。
家庭科部は、家庭科室へ。
陸上部は、陸上部のグラウンドへ。
テニス部は、テニスコートへ。
演劇部は、演劇部の部室へ。
文芸部は、図書室へ。
吹奏楽部は、音楽室へ。
野球部は、野球部のグラウンドへ。
柔道部は、青ノ葉道場へ。
自分が所属している部へと、ガヤガヤと移動していく。
そんな中、ひとりポツンと教室に居残る司。

「・・・・・・・・・。」

友達みんなを見送った後、自分が所属している部に向かわず、ここから見える部活動の風景を呆然と眺めていた。

(みーんなして部活部活で、真面目だもんな〜。)

こんな自分を暇と例えるなら、ものすごく暇だ。
暇すぎて暇すぎて、でも寮に帰っても1人でゲームする気がなんとなく起きなくて。
暇すぎて暇すぎて暇でしかないから、景色を眺めることで忙しいフリをして、ボーっと持て余す暇を潰していた。



訪れた用は何?

けどそれでも退屈な自分を10分以上、誤魔化すことが出来ず、景色を眺めるのをやめて家庭科室へ。

「って、あれ?司くん。今日は、ひとり???」

「うん!みんな部活に行ってるし、今日は園芸部の方にも参加してないから俺、ひとりだよ。」

そこでいつものように明人にお茶を貰おうとしたのだが、

「・・・・・・・・・。」

「???」

明人は園芸部の休憩とは別で、司が一人で遊びに来たことに対して『え・・・』という表情を一瞬だけ顔に浮かばせる。
おかげで司も『何?』と。キョトンとしてしまうが、明人自身による自己完結でそれは解決。

「司くん・・・。今日は、遊びに来たんだよね?」

「うん?今日はというか、今日も遊びに来ただけだよ?ひょっとして今日は遊びに来ちゃダメな日だった?」

「ううん、大丈夫。こっちの話だから気にしないで。今日も麦茶でいいかな?」

司には分からないまま終結してそこでおしまい。
歓迎されてお茶を飲んだ頃には、それがなんだったのか。すっかり記憶の彼方に消えていった。



秘密な味のどら焼き

「司くん、よかったらどら焼き食べる?」

「どら焼きなんてあるの?」

「お裾分けで貰ったやつなんだけど2個しかないから、ひとつは僕で。ひとつは司くんで。ここでどら焼き食べたこと内緒にしてね。羨ましがられても、もう用意出来ないから。」

「うん、わかった!じゃあ明人兄のお言葉に甘えていただきます!」

そうして冷たい麦茶とお茶菓子にどら焼きをご馳走になる司。
やっぱり明人のところに来てよかった、と。
暇すぎていたさっきと比べて、すっかり気分も転換出来た模様。

「あ。美味しいね、このどら焼き。控えめな甘さだけど、なんか懐かしい感じがする。」

「ね。美味しいね。」

明人も明人で司とお喋りしながら、のんびり家庭科部としての活動を。今日も演劇部の衣装を手直ししていた。
すると、

「鈴木、いるかー?」

ガラッと家庭科室の扉が開き、1人の男子生徒がお客さんとしてやってくる。
しかしその生徒は司(先客)がいたことに気がつくと、ピタッと固まってしまう。



訪れた用は何? 2

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

そして明人と合わせた視線。
口では語らない2人の会話は、目と目だけで成立したのか。

「・・・また改めて来るわ。」

「ごめんね。」

「え!?」

やってきたばかりのその男子生徒はくるっとUターンして、もうお帰りに。
明人も手の平をひらひら振って、この場でバイバイとニコニコ見送る。
もちろんそんな2人のやりとりを見ていた司は、『今のなに?!』と、とってもビックリ。

「大丈夫だから気にしなくていいよ、司くん。」

「だけどー・・・「あ、コップ空っぽだね。麦茶のお代わりいる?」

「いる!」

しかしまたもや何だったのか分からないまま終結してそこでおしまい。
お代わりしたお茶を飲んだ頃には、それがなんだったのか。すっかり忘れー・・・、いや。さっきも今も忘れはしてないけど、明人が触れて欲しくなさそうにしているから、気にしないことにした。



就寝時刻は深夜26時すぎ

そうしてそれからも他愛ない話をしてゆっくり過ごす2人。

「演劇部の衣装の手直しって、全部手縫いでやってるの?」

「そんなまさか〜。ミシン使うときもちゃんとあるよ。これは少ししか直す場所ないから、手で十分だし。」

「はへぇー。明人兄は相変わらず器用だね。」

教室の外から聞こえる色んな音。
各運動部の掛け声に、吹奏楽部の楽器演奏。
ガヤガヤと賑やかだけど、ここはとっても静かでとってものんびりしていた。
なので気づいた頃には、

「・・・あれ?司くん?」

「Zzz・・・。」

いつの間にか司が机にうつ伏せて眠っていて、静かだった室内に彼の寝息が小さく響く。
きっと昨日はほとんど寝てないのだろう、主にゲームで。
きっと日付が変わった頃に寝たのだろう、主にゲームで。
そんな寝不足な司に気をつかった明人は、演劇部の衣装を毛布代わりにソッと被せて、そのまま寝かすことにした。



寝てる司を起こさないように

司がぐっすりスヤスヤ眠っている中、黙々と自分の作業を進める明人。
あれから誰もお客さんが来てないというのもあって、すごく集中してやれた結果、手直しする衣装が全て完了。

「・・・よし、っと。」

あとはこれを演劇部の華澄のところへ届ければいいのだが、果たして司を1人残して家庭科室から離れても大丈夫だろうか。

(誰か来ても1年生だってことに気付くだろうから、僕の弟だって勘違いしてくれるだろうし・・・うん。大丈夫そう、かな。)

心の中の1人会議で出た結論。
明人はなるべく早めに帰って来ることを心掛けて、起こさないよう静かに席を立ち、家庭科室から出て行った。

「・・・・・・Zzz。」



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×