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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#8 部活動勧誘会(中編)(2/2)
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現役ではない武道経験者

それを聞いた途端に、比路は顔色を不安で染める。

「ヒロもいいだろ?」

彼は武道経験者であり、道場に通ってたこともあるが、それはもう過去の話。
今は辞めてることを司はもちろん、知っている。

「司。・・・なんで?」

そのはずなのに、なぜそこを選んだのだろう。

「稚空くん。えっと司くんではなくて、比路くんが道場に通っていたんですか?」

「うん。ひろピーが道場通ってたのはオレも知ってるけど、あれ?なんで辞めたんだっけ?時期的に受験勉強したいからじゃなかったっけ?」

「へぇ〜。比路くんが柔道習ってただなんて意外です。」

「まぁオレらの中で一番腕力あるのは、間違いなくひろピーだからね。見れば納得できると思うよ。」

「見ればって・・・、何をですか?」

梅ちゃんはもちろんのこと。
比路が道場通ってたことを知ってる稚空でも、辞めた理由までは知らないようだ。



理由に訳、訳に理由あり

「ヒ〜ロ。行くだけ行ってみようよ。」

「でも僕は・・・。」

不安と不満を抱える比路を見て、司は彼の弱そうな言葉を並べて背中を押す。

「少しだけだから、ね?俺もいるんだし、アッキーや梅ちゃんだっているんだから大丈夫だって。」

「・・・・・・。」

「一緒に行こうよ、ヒロ。」

そんな司の笑顔に負けたのか。
コクリと静かに頷いて、覚悟を決める比路。

「・・・わかった。少しだけなら、いいよ。」

こうしてお次は柔道部の部活場所へ行くこととなり、青ノ葉道場へと向かう。



青ノ葉 柔道部

柔道部が活動している青ノ葉道場に足を踏み入れた四人。
道場内は男気溢れる活気が漂っており、自分たち以外にも見学しに来ている新入生の姿も多く見えた。

「・・・・・・・・・。」

比路が現役を辞めた理由がどうであれ。
その活気に打たれた心。

「司、ごめん。」

「ん?」

過去のある出来事が比路の中でフラッシュバックが起き、記憶が繊細に蘇る。

「僕・・・、もう。」

覚悟を決めたはずなのに、やはり厳しかったようで、表情に暗い雲がかかってしまう。



道場にやってきた男子生徒と

「失礼します。」

「お!かっつぁんやっと来たー!おっそい!」

青ノ葉道場にやってきた左腕に『生徒会』と書かれた腕章を身に着けている一人の男子生徒。

「見学の新入生、割と来てるんだなー・・・ん?」

彼は道場の入り口から、訪れている多くの新入生の様子を眺めていた。
すると、その中から見覚えのある姿を見つけ、

「え、比路!?」

ひょんな顔をして、その子の名前を。
その子を一目見ただけで比路の名を呼んだのでした。

「え。克・・・、也?」



久野 克也

「久しぶり、だね。」

青ノ葉道場に訪れたばかりの男子生徒と顔見知りだった比路。
彼の名前は、久野 克也(くの かつや)。
青ノ葉学園の二年生で青ノ葉柔道部の部員。
比路と歳が一つ差なのに物腰が落ち着いており、貫録さえ感じさせる久野。
長身で大きな図体が、よりガッシリと男らしい印象を付ける。

「お。やっぱり司もいたか。あの頃ぶりだけど、比路も司も元気にしてた?」

比路と久野は通っていた道場が同じという道場仲間。
司も比路に付き添って道場に遊びに来ていたから、久野は司とも顔見知りの仲。
司も比路も久野も。ここで一年近くぶりの再会を果たしたことに驚き、嬉しそうな表情を見せて互いに近寄った。



久野先輩

道場が同じだった久野と再会した司と比路。
けど久野とは通学していた学校が小・中と違っていたため、梅ちゃんはもちろんのこと稚空も初対面。

「お二人さんの知り合い?」

「うん。アッキーは僕が道場通ってたことだけは知ってるよね?その一緒の道場にいた一つ年上の克・・・っと、久野 克也先輩。」

なので久野には稚空と梅ちゃんを。
稚空と梅ちゃんには久野を。

「そっか。鈴木先輩に弟いるって話。前に聞いたことあったけど、稚空くんのことだったんだな。」

「・・・鈴木 明人の弟、稚空といいます。よろしくお願いします。」

「うん。改めてよろしく。」

お互いにそれぞれ紹介を交わす。



比路の事情

それはともあれ。今は部活勧誘会の時間帯。

「顧問の先生、奥にいるみたいだからよかったら呼ぶけど。入部希望なのは比路と、あと誰だろう?」

「あ、待って!克也!」

「ん?」

柔道部の部員である克也は四人が入部希望で訪れたのかと思い、先輩らしく気を使って顧問を呼ぼうとしたが、比路が大きな声で彼を引き留める。

「・・・じゃなくて久野先輩。ごめんなさい。僕ら入部希望の目的じゃなくて、ただ見学しに来ただけで。」

「え。」

申し訳なさそうに謝る比路の顔色が、また曇りだす。
元道場仲間としても、そんな彼の事情が気になった久野。

「・・・そっか。どの部活に入るかは個人の自由だから気にすることないよ。柔道部の部員として、勧誘失敗でちょっと残念だけど。」

「ごめんなさい。」

「謝ることじゃないからいいよ。部活動の賭けもちは出来ないけど、別の部に入部した後でも見学なら可能だから気が向いたときにまたおいで。」

ニッコリと優しい笑顔を見せて、無理強いは決してしなかった。



全勝全敗

現役ではない比路と現役の久野。
二人は同じ道場に通っていた道場仲間(元)だったわけだが、果たしてどちらが強いのだろう?

「克也先輩とヒロって、どっちが強かったっけ?」

付き添いで遊びに来てた司でさえ、二人の勝敗の行方を知らない。
それを改めて思いだし、二人に問う。
すると、

「俺だよ。」

久野が余裕そうな表情で、その答えをハッキリと口にして明らかにさせた。

「うん・・・。か、久野先輩のが強い、よ。」

「比路。俺にまだ一度も勝てたことないから。」

「たまには勝たしてくれてもよかったのに。」

「俺が手加減したら勝ててたかもだけど。それで勝てて比路、嬉しい?」

「全然、嬉しくない!」

「あはははっ、だよな。」

久野は比路に全勝。
比路は久野に全敗。
・・・と、すでに結果が二人の記憶の中に残されていたようだった。



○○系男子

「ビックリしちゃいました。比路くんが道場通ってただなんて。」

比路と久野の話を聞いていた梅ちゃんは、知らなかったことを知って、純粋に驚きを見せる。
そこに司が自分の知ってる限りの情報を追加して補整する。

「でもヒロは柔道だけしかやってないだよ。通ってた道場は柔道以外にも空手とかあったけど。なのにヒロスペシャル喰らうとすごく痛いんだ。柔道しかやってないはずなのに、プロレス技決めてくるときあるし。」

「ひ。ヒロ・・・スペシャル???」

「そ。ヒロを○○系男子で表すとしたら、絶対に『強暴系男子』って付くね!100%の満場一致で!チビでもいいけど。」

そんな余計なことまで調子こいて口走ってるけど、大丈夫?

「・・・・・・。」



青ノ葉 第八話をお読みいただきありがとうございます!

病弱的な設定である梅ちゃん
彼は大きな持病を抱えてるわけではないので、
基本的には普通に元気な男の子です
走り回ることもできますし、暴れることだって可能
(梅ちゃんに限って、そんなシーン書けませんが)
なので全寮制の学校に通っても、特に問題はありません

・・・っと、自分で作った設定を自分で疑問に思ったので
こっそりと補正をここに書き残しておきます


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