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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#55 BlackWhiteの憂鬱(1/3)
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井戸の中の蛙 大海を知らず

本田先生が国語の授業中に雑談を交えて、それを口にした。

「『井戸の中の蛙 大海を知らず』という諺をご存知ですか?」

それは知識、見聞が狭いことを例えた諺。
またそれにとらわれて広い世界があることに気づかず、得意になっている人のこと。
小さな井戸の中に住む蛙は、大きな海があることを知らないから批判する意として多く使われる。

「批判的に使われる諺ですが、先生は『それが幸せか幸せじゃないかは、蛙が決めればいいこと』だと思ってます。誰に何を言われても。」

けどそれが蛙にとって幸せならそれでいい。
広い世界を多く知っても、1つの世界に拘っても。
本田先生はその蛙が幸せであることを望んだ。
しかし井戸の底から天を見上げれば、それは光となり、眩しくて時には目を背けていたくなる。
そしてそこから外に出ようと失敗して堕ちた痛さを知れば知るほど、蛙だって負う怖さに怯えても無理はないだろう・・・。



部活に参加しない者同士

こうして今日の授業は終了。
放課後になって部活がある子は部活へ。参加しない寮生は、学生寮へと帰宅する。

「あれ?梅ちゃん今日、部活に参加しないの?」

「気分が優れないので念の為・・・。司くんも朋也くんと園芸部行かなくていいんですか?」

「うん。コタ先輩が言ってたんだけど、ミニトマトってそこまで水遣り要らないんだって。それに今日はドロップ率1.5倍デーだからね。部活よりも勉強よりもゲームしてたい。」

「司くんらしいですね。」

理由はそれぞれで異なっているけど、行かないを選んだことだけは一緒。
今日の部活に参加しない司と梅ちゃんは、荷物をまとめると共に教室を出て、一緒に昇降口へと向かった。

「司くん。ご迷惑でなければボクも、ご一緒してもいいですか?」

「全然良いよ。けどあれ?さっき気分悪いって言ってなかった?具合い大丈夫?」

「ちょっとくらいなら平気です。寝ているより楽しいことしていた方が気が紛れそうなので。」

「そっか。じゃあ無理しない程度で一緒に遊ぼう!荷物置いて着替えたら、そっちの部屋に行くね。」



塩飴

梅ちゃんは病弱な体質で、あまり体が丈夫じゃない。
それを本人が1番知っていて、夏制服に衣替えした今でも、彼はシャツの上にセーターのベストを着用している。

「梅ちゃんってその格好、暑くない?」

「暑いです。でも体を冷やすわけにもいかないので、そこは我慢我慢です。」

「ほへぇ〜。じゃあこれからの時期、ちょっと大変じゃない?」

「そうなんです。熱中症にならないよう、小まめに水分を。あと塩分も欠かしちゃダメなので塩飴を持ち歩いて、なんとか乗りきろうと思います。」

彼は4月の頃は毎週のように休日になれば実家に帰っていたけれど、週が進むにつれて帰る回数が減っていった。
本人曰く調子が良くなったのは、ブルーリーフのみんなと遊ぶようになってからだそうだ。
安静して寝ているよりも、みんなと一緒に楽しいことしていた方が、自分にとって1番の療養法になってるという。

「でも塩飴って美味しくなくない?去年、レモン味の買って食べたんだけど、他の飴のがもっと美味しいって思ったもん。」

「塩飴ですから。美味しく感じたら体の塩分が減ってる証拠です。それでも年々と考慮されて発売されたばかりの頃と比べると、ちゃんと美味しくなってますよ。」



おふざけなしの梅ちゃん回

そんな梅ちゃんだけど、ほんわかな彼には和み系の癒しがある。
男子校という男しかいない世界で、彼の癒しに癒された野郎にとって、梅ちゃんは絶対的な存在。

「・・・あれ?」

「どうしたの?梅ちゃん。」

昇降口で靴に履き替えようとした途端、梅ちゃんの下駄箱に一通のお手紙が。

「お手紙、頂いちゃいました・・・。」

「うぇ!?」

古典的ではあるが、自分の想いを綴ったラブレターが投函されていたのだった。

「リアルでもそういうことってあるんだね。信じられん。モテるね梅ちゃん。」

「男子校でモテても、ボク嬉しくないです・・・。」

っというわけで、今回は梅ちゃんが主役のお話。
前、前、前回のように悪ふざけはしませんよ。



弟の対応

それから部活が終わった夕食時の食堂にて。
いつものお馴染みメンバー(司、比路、朋也、稚空、梅ちゃん)の5人でご飯を食べていた。
そして今日あったことをさっそく。梅ちゃんに宛てられたラブレターを皆にご相談。

「え!?梅ちゃんがラブレター貰った!?」

「しーです!しーです!稚空くん声大きいです!」

「あ、ごめん。つい・・・。」

けど相談相手、間違えた?
稚空はその話題を梅ちゃんからやっっと聞けて、凄く嬉しそう。
携帯しているスマホを取り出して『やっぱり青ノ葉もそういう世界あったよ!』と、大変迷惑なメッセージを自分の姉に送る。

「ほら見ろつかポン。3次元BL、青ノ葉にだって存在したでしょ?」

「したけどさ。何て言っていいのかな?ラブレターって一方的すぎて、なんだかな〜って感じ。あと、つかポンやめろ。」



24時間以内ならセーフ?

「こら稚空。梅谷くん真剣に言ってたんだから茶化さないの。」

そんな弟やり取りを偶然見ていた兄の明人。

「うわぁ!?兄ちゃんいたの?聞いてたの!?あああ!オレのスマホ返してー!」

「ダメ!今姉さんに送ったメッセージ削除するからね。」

「うぅ、ひどい・・・。」

いきなり横から入ってきたと思えば、稚空を叱ってスマホを奪い、送ったメッセージを強制的に削除。
24時間以内であれば取り消せるので、自分の姉には読ませない。さっきのは削除したというシステムメッセージだけ残した。

「ご、ごめんなさいでした。なんかご迷惑おかけして。」

「ううん。迷惑かけたのこっちだから梅谷くんは謝らないで。むしろ稚空が梅谷くんに謝って!」

「・・・ごめんなさいでした、梅ちゃん。」



恋文乱組も本編で出てくるよ

偶然とは言え耳にした以上は、明人も仲間入り?

「アキどうしたの?稚空と何かあった?」

「何でもない。何でもないけど輝夜は先に戻ってて。僕この子らとちょっと話するだけだから。」

「ふーん?今日はDVD観る約束してるんだから、終わったら遊戯室直行で俺らの方に来るんだよ。」

「分かってる。終わったら行くよ。」

けど一緒にご飯を食べていた華澄まで巻き込まないよう。
先に食堂から出ていかせて、自分1人残った。
そして気になっていたことを梅ちゃんに尋ねたが、

「梅谷くん、その手紙ってさ。」

「はい。」

「『わたぬき』って、どこかに書かれてたりしてないよね?」

「へ?」

それはちょっと別のお話。
別のお話だけど彼がそれを口にした途端、2年生の陸、海、空方向がガタッと動揺してしまう。
でも今回そいつらは無関係。本編での登場はもう少々お待ちくださいね。



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