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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#54 久野克也尾行調査(3/4)
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放課後の生徒会室

それから午後の授業が始まって終わって放課後に。
教室で鬼頭と別れたあと、久野の足はまた生徒会室に向かっていた。
今日の見回り当番は永瀬と紺野。2人は腕に生徒会と書かれたワッペンを付けて、校舎内や各部を見回り。
残った4人は今日行った会議で出た意見(久野のパンツ以外)をまとめていたり、これから何かと部費の出費が増えてくるから、どの部にどれぐらい当てるか等々。色々と生徒会としての仕事を進める。

「克也くん、ちょっと見てもらってもいい?」

「いいですよ。どれですか?和泉先輩。」

「これなんだが。」

その様子はいたって普通。
生徒会の真面目な4人を見ていても、特に変わった様子がなかった。

「克也くん今日は大人気だね。和泉くんも彼に素直だし。あ、遼ここの合計違う。」

「うわぁ、ホントだ。ケアレスミスってレベルじゃないなこりゃ。ありがとな紬。」

「遼って引き算、苦手?」

「違う違う。うっかりしてただけだって。間違って悪かったな。すみませんでした。」



1人きりの部活動

見回りの2人が戻ってきて生徒会の仕事も一段落すれば、みんなそれぞれ自分の部活へ。
永瀬は園芸部。
鳥越は演劇部。
丹波は吹奏楽部。
柘植はテニス部。
紺野は野球部。
けど久野だけはまだ室内に残っていて、数十分後。やっと道場に向かったかと思えば本日の部活終了のお知らせチャイムが校内に響いた。

「んじゃ、かっつぁん戸締まりよろしく。」

「はい。みんなも届け出を蓮さんに出してなければ門限内に寮へ帰ってね。」

「あのさ、克也。」

「うん・・・、ちゃんと気づいてるから大丈夫。誰かに危害加える様子ないみたいだから平気だよ。」

「あの頭でよーやるな。師匠が聞いたら逆に関心しそう。」

でもそこからが彼にとっての部活時間。
部員が寮や自宅、下宿先に帰っていく中、更衣室で胴着に着替え、1人残ってトレーニングをこなす。



更衣室の前で

そうして夜の7時を過ぎた辺りで切り上げ。
更衣室に向かって着替えるのかと思えば、暫くそこから出てこなかった。

(朝もそういやそうだったな。あそこで何してんだ?アイツ。)

そんな久野が気になった犬飼。
他の部員は皆帰っていないことをいいことに。
抜いた足、差した足、忍んだ足。
抜いた足、差した足、忍んだ足。
コッソリコッソリと道場に上がって、その更衣室まで近づいて覗こうとする。
その時、

「ここまで覗かれると、流石に俺も恥ずかしいんだけど。」

扉が触れてないのにスパンッと横スライドに開き、すぐ目の前には久野の姿が。

「!?!?!?」

あっさり見つかった犬飼は言葉になってない声で驚いたが、久野自身は犬飼につけられていたことに気づいていたようで呆れた表情をしていた。



更衣室の奥に

「まったく。朝から一体、何の用だよ?」

「ななななな!?気づいてたのかよ!」

彼は更衣室でやっぱり着替えていたようで、胴着からまた制服に服装が変わっていた。
けどよく見ると髪が濡れていて毛先から水滴ポタポタ。

「言っとくけど俺以外にも気付いてた奴、たくさんいたからな?」

「嘘だろ!?オレは完璧に隠れてたはずなのに!」

「そんな目立つ頭でウロウロしてたら、気付かない方がおかしいだろ。」

肩に掛けていたタオルでワシャワシャと頭をやっと拭いたが、着替え以外に何してた?っと問いたいところだが。
そんな姿を見たら浮かぶ答えは、ただひとつ。

「・・・シャワー浴びてたのか。」

久野は青ノ葉道場の更衣室の奥にあるシャワールームで、着替え以外に汗を流した後だったのだ。



柔道部用のシャワールーム

運動部の部室棟の隣にも運動部の子用にシャワー室が設けられているが、青ノ葉道場からだと位置が遠くて離れすぎている。
だから去年の暮れに柔道部用のシャワールームが更衣室の奥に一室だけ新たに建設されて、その日以降、久野はほぼ毎日利用していた。

「ほら、お前も浴びてけ。直ぐ寮に帰るならまだしも、そうじゃないならここで浴びてけ。備品とかタオルとか俺のだけど使っていいから。」

「はァ!?なんでだよ!誰がお前の物使うか!」

「いいから浴びてけ。お前がじゃなくて周りが迷惑するから浴びてけ。」

「う・・・。」

おかげでシャンプーもコンディショナーもボディーソープも。複数予備で置いてあるタオルまでもが全部、久野の私物。
柔道部用のシャワールームのはずなのに、久野用と勘違いされてもおかしくないほどの私物の多さ。
そのため犬飼としては、ここを使うのは複雑。
ただでさえ見つかって複雑だったのに、別の複雑が重なって、なんとも言えない気持ちになった。



尾行失敗調査継続

けどそれでもシャワーを浴びて、ベタベタした汗を洗い流したことにより、その複雑も少しだけ解消。
更衣室から出ると道場内に心地のいい風が入ってきて、清々しい気分を覚える。

(涼しい・・・。風通しいいんだな、ここ。)

「涼しいだろ?ここ。」

「うわ!?直ぐそこにいたのかよ。」

「いるに決まってるだろ。片付けるのにお前が終わるの待ってたんだから。」

そして改めて久野と2人きりになった犬飼。

「で?寮に帰らないのなお前。」

「アンタが帰るなら、オレも帰る。」

「・・・だろうと思った。ホントにお前、今日何なの?」

今日1日という時間をここまで使ったのだ。
久野に見つかっただけでは諦めきれなくて、尾行は失敗したけど調査はまだまだ続ける気でいた。



おすわり

そんな犬飼の企みにまで気づいているのか、そうじゃないのか。

「まあいいか。寮に帰らないなら、こっち来い。ここ座れ。」

「あ?なんだよ、突然。」

「いいから座れって。おすわり。」

「てめェ!オレを犬扱いすんじゃねえ!!!」

「ごめん、つい。名前に『犬』付いてるから、つい。」

「どんな『つい』だ!?だからってオレを犬扱いすんな!!!」

自分の近くに犬飼を座らせても、余裕な久野。
犬飼と2人きりというこの状況は、久野にとっても好都合だったようだ。

「まあなんだ?ちょっとだけなら時間あるし少し話がしたかっただけだ。お前と2人になれる機会って今までもそうだけど、今後もなれそうにないからな。」



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