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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#7 部活動勧誘会(前編)(2/2)
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青ノ葉 家庭科部

アールグレイのマドレーヌをバクリと一口でいった稚空。
さっきから気になっていたことを明人に尋ねる。

「で、兄ちゃん。なんで今、兄ちゃんしかいないの?」

今は部活動勧誘会の時間帯。
他の部は賑やかなのに、家庭科室にいたのは明人一人のみ。他の部員はどうしたのだろう?

「別に大した理由じゃないよ。家庭科部は僕一人しかいないから。」

「は?」

「正確に言えば僕一人しかいなくなったって言った方が正しいかな。」

「え?は?ちょっと待って!それって結構、深刻だよね?大した理由になってるよね?」

「そんなことないよ。」

明人は一緒に用意した紅茶をコポポポポ・・・とティーカップに注ぎ、自分と三人の前に置いて訳を話す。
だが、その訳はこの部活の存在意義にも十二分に関わっていた。
家庭科部の部員が明人一人しかいないって、それって大丈夫?



部員は一名のみ

家庭科部は明人ただ一人しかいないことが判明。
それを聞いた三人は、それで本当にいいのだろうかと不安な気持ちを抱く。

「まさかだと思うけど。兄ちゃん、オレらを巻き込んだりしないよね?」

「それはそれで楽しそうだけど、そんなこと言わないよ。現に部員はもう募集してないし、顧問だった先生も他の部活にいっちゃったから。」

その話題を口にしてから、ニッコリと明るいのも明人一人のみ。
それは結構以上にかなり深刻な話だというのに、

「え、それってー・・・。」

「うん。家庭科部は、もう廃部確定済みなんだ。」

「・・・・・・ッ。」

この人は、なぜこんなにも明るいのだろう。



廃部確定な家庭科部

家庭科部は廃部、なくなってしまう話を明るく話す明人。
彼は本当にそれでいいのだろうか?

「いいも何も、もう決まったことだから。」

「兄ちゃん・・・。」

明人は自分で淹れた紅茶を口にする。
『うん、美味しい』と満足そうに言葉を残し、手に持っていたティーカップを元の位置に戻す。

「いつ終わってもおかしくない位置にいたのは入部した時に分かってたことだから。・・・ならば潔く僕の代で終わらせるのも悪くないかなって思えて、ね。卒業していった先輩たちも顧問だった先生も僕がいいなら、それでいいって言ってくれたし。今さら他の部に行っても仕方ないから。」

「よく兄ちゃん一人で残れたね。」

「ちょっと危なかったけど、ちゃんと話したら許してくれたよ。」

そして何かに思いをふける。



一人で残った理由

廃部してしまう、なくなってしまう家庭科部のことを三人に話した明人は最後に。ただ一人で残った理由を述べた。

「僕は料理することも裁縫することも昔から好きだったけど。それと同じぐらいにこの場所が好きだから。・・・好きになれた場所だから。だから僕は家庭科部最後の部員、鈴木 明人として青ノ葉を卒業したい。そう素直に話したら許してくれたよ。」

「・・・・・・っ。」

それを語る明人の目は真っ直ぐとしており、とても澄んだ色をしていたのが印象的だった。
自分の好きを真っ直ぐ口にした言葉。
あまりにも素直で。
あまりにも単純で。
けど、その言葉だけは絶対に汚すことはないだろう。
彼自身が汚れてしまっていても・・・。



鈴木家なかよし三姉弟

明人がたった一人の家庭科部員だということは、よく分かった。

「男勝りで強気な姉ちゃんに、女子力高いオトメンの兄ちゃんを持もった弟は、しゃぁーわせですよっと。」

幼い頃から料理好きだし得意だし。裁縫も好きだし得意だし。
コスプレ好きで男勝りな姉と双子だけあり、正反対。いや性反対の意味を姉と兄の二人を通して学ぶ弟。

「自分の好きなことを通してるだけだもん、仕方ないよね〜。」

「たまにどっちが姉ちゃんで、どっちが兄ちゃんか分からなくなる。」

「ちょッ!?いくらなんでも稚空、それはヒドイよ!?しかも姉さんが聞いてたらブチ怒られるよ!?」

「今この場にいないんだから別にいいっしょ?絶対、姉ちゃんにチクんなよ兄ちゃん。」

鈴木兄弟のやり取りは微笑ましく。とってもとっても仲がいいことが目に見えてハッキリと分かる。
一人っ子育ちで兄弟がいない司や比路たちから見たら、そんな仲のいい二人が羨ましく思えた。



家庭科部から文芸部へ

「さてと。そろそろ他の部に行くか。」

明人のお手製お菓子をご馳走になった司、比路、稚空の三人。
あまり長居すると他の部に行けられなくなるため、そろそろ席を外すことに。
食べきれなかった分は綺麗にラッピングしてもらい、お土産として手渡された。

「放課後はたいてい家庭科室にいるから。司くんも比路くんもよかったらいつでも遊びに来てね。お茶もお菓子も用意しておくから。」

「明人兄、ご馳走様でした!」

席を立った三人は、明人とバイバイを交わして家庭科室を後にする。
そして次は稚空が入部希望をしていた部活場所へ。

「つかポン、ひろピー。次こそ図書室でいい?」

「いいけど、ひろピーやめてね。」

「あと、つかポンもな。」

文芸部が活動している図書室へと向かうのでした。



青ノ葉 第七話をお読みいただきありがとうございます!

部活動勧誘会という見学会、ちょっと長いので
今回の話より全3パートでお送りしております
が!ラストまで、あまり盛り上がりはありません(汗)


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