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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#51 学寮戦の裏側(3/4)
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その頃の黒崎

そうしてあっちはこっちのことを知ったけれど、こっちはあっちのことを何も知らない。
主導権握らせたままは絶対嫌だし癪だったので、今度は矢口の方から男子生徒の名を尋ねた。

「・・・あんたは?」

「ん?」

「あんたの名前は何ですか?」

「そういえば僕、まだ名前言ってなかったね。」

黒縁眼鏡の男子生徒の名前。
それはー・・・。

「3年の黒崎 真央。改めてよろしくね。」

黒崎 真央。
名と共に学年も語られ、自分より1つ年上の先輩だと教えてくれた。



その頃の黒崎 2

「黒崎・・・真央・・・?って、あの?」

黒縁眼鏡の男子生徒=黒崎だと知った矢口。
同級生の生徒ですらほとんど知らないくせに、その名前だけは聞き覚えがあった模様。
何せ黒崎も『図書室の本を全て読みきった文芸部の生徒』と、名が渡り歩いていた生徒。

「あのって、どの?」

「図書室の本を全て読みきった変態。」

「えぇー・・・、変態はヤダな。もうちょっとカッコいい言い方がいいよ。」

あっちは善でこっちは悪。
同じように人から人へ名が渡り歩いていても、中身は全くもって正反対。

「そうか。黒崎って、あんただったんだな。」

「うん。でも僕のが年上だから『あんた』じゃなくて、ちゃんと先輩付けて呼んでほしいかも。」

「・・・そういうとこ気にするんだな、あんた。」

どうりで会った時から、コイツとは合わない気がしていたわけだ。



その頃の黒崎 3

「おしまい。でもお風呂入るとき、きっと滲みるから我慢してね。」

「・・・・・・。」

そんなこんなで黒崎による矢口の手当て終了。
気付けば自身のあちらこちらが、絆創膏やガーゼだらけになっていた。

「純平君の着替え。汚れてないのこれしかなかったけど良かったら使って。サイズは問題ないはずだから。」

「・・・・・・。」

しかも着替えで渡されたTシャツのデザインがダサいことダサいこと。
軽い嫌がらせ。いや、軽い罰ゲームを受けてる気分がする。

「純平君って身長いくつ?僕より少し低い感じだから170ぐらい?」

「173。」

「うそ!僕とあんまり変わらないの!?あ、純平くん猫背だからか。あぁ、そっかー 。」



その頃の黒崎 4

「それでそのー・・・、下着の方なんだけど。」

きっと悪気はなく、それもこれも善意なのだろう。
ただ黒崎は、ちょっとズレた性格のようだ。

「新しいの持ち合わせてなくて、だから、その。コレ!あんまり使ってないヤツだから。」

「・・・いらん。」

「え。それじゃあ明日どうするの?まさか今、穿いてるヤツ2日間続けて穿くの!?ばっちいよ!そんなの!」

「あんたが穿いてたヤツ借りるよりマシだ!」

むしろこれが嫌がらせで悪意もあったら、黒崎はとんでもない悪だ。



その頃の黒崎 5

「そんなことないよ!ちゃんと昨日洗濯したヤツだからキレイだよ。2日間同じモノ使うより清潔だよ。」

「・・・あんまり使ってない言ってたのに、ばっちり使ってるんだな。」

「それはそうだよ。今持ってる物の中で、あんまり使ってないヤツがコレってだけだから。」

殴っていいなら殴りたい。
でもここで殴ったら負けな気がする。

「僕の部屋でノーパンはさすがにやめてね。」

「・・・・・・。」

負けるのだけは、もう二度と嫌だから。
ここはなんとか忍耐で凌ぐしかなかった。



その頃の黒崎 6

パンツ談義が落ち着いたと思えば、その先で黒崎に言われた言葉。

「喧嘩は、ダメだよ。」

「調子出てきて、いきなりエラソーに説教?」

もちろんそんなこと3年の先輩に言われただけで『はい、そうですか』で頷いて終われば、生徒会も教育指導の先生も矢口に苦戦しない。

「偉そうに聞こえたのならごめん。純平君を心配に思う人は少なくても、それでも僕は心配だから言うよ。」

案の定、矢口はそっぽ向く。

「あんたには関係ないって言ってるだろ。つっかかってくんな。」

でも黒崎は彼から視界を逸らすことはなかった。



その頃の黒崎 7

おかげでより一層、ご機嫌がナナメになった矢口。

「寝る。」

「え?」

ソファーの上にごろんと寝転がり、そのまま不貞寝を決め込む。

「待って。まだご飯食べてないよ?」

「いらん。」

「お風呂だって。」

「いらん。」

「それはさすがに汚・・・「明日、朝シャワー借りるからいらん。」

矢口はこれ以上、黒崎と関わらないことを選び、もう何を言われても自分と関わらせないつもり。

「じゃあせめて毛布。」

「いらん。」

「それはダメだよ。矢口君を風邪引かすわけにはいかないから。」

だけど結局、最後までこちらの断りを完全に断ることができなかった。



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