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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#51 学寮戦の裏側(1/4)
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その頃の矢口

時間が少しだけ遡った現在は、学寮戦が開幕されるちょっと前。
寮の門限までもうじきなのに、学校の外に出歩いて矢口 純平。
商店街の裏路地で、また誰かと揉め事を起こさせていたのか。
ゴミ捨て場にてゴミのように捨てられ、ボロボロの姿でいた。

(・・・高校生相手にムキになんなよ。あっちからふってきておいて。)

人の通りが少ない路地とは言え、商店街の通りでもあるから、誰かぐらいはやって来る。
そしてこっちに気づいた人は直ぐに剃らして、気づいてないふりして見ないように過ぎていく。
でもそれは正しい選択。
こんな自分と関わる方が間違ってると言うのに、

「大丈夫!?キミ。」

その男は誤った選択を自ら選ぶかのように、こっちへやって来た。



その頃の矢口 2

ボロボロの矢口に近づいてきたその男。
自分と同じ青ノ葉の制服を着ていた。

(誰・・・?)

青ノ葉の制服は、ネクタイでさえ全学年共通で、己の学年を表すカラーがない(あるのはジャージか上履きの上部部分のみ)。
最低でも1年は寮で共同生活を送るから、だいたいはニュアンスで自然と覚えられる。が、矢口は普段からサボり魔だし一匹狼だから誰かとあまり一緒にいないせいで、自分と同じ学年の生徒もほとんど知らない覚えてない。

「わ。凄い怪我。痛そう・・・。」

だからやって来たこの青ノ葉生徒が、上級生なのか同級生なのか下級生なのかも分からない。

「骨とか折れてたりしてない?あ、気持ち悪いとかある?」

「・・・あんた。」

「え?あ!ひどーい。僕、気持ち悪くなんかないよ。」

そして向こうもこっちのことを知らない様子?
お互いにお互いが誰なのか分かっていないまま事が進んでいく。



その頃の矢口 3

「立てる?僕んちここから近いから、一旦そこに行こうか。」

誰か分からない青ノ葉の男子生徒は、矢口の怪我を手当てするため、この場からゆっくりゆっくり移動。
けど向かってる先は、どう見ても住宅街。
学生寮とは全然違う方向だった。

「・・・寮じゃなくていいのか?」

「うん。僕、今は寮生じゃないから。キミもこの時間にここにいたってことは同じ感じかな?」

「・・・・・・。」

「2年生?1年生は下宿まだ駄目だけど、自宅通いの子なら問題ないのか。」

でもそれは間違っているわけではなかった。

「あ、3年だったらゴメンね。知り合いだったらもっとゴメン。眼鏡ないと誰なのかさっぱり分からなくて。」



その頃の矢口 4

語りに語って落ちるかのように、問ってもないのに自分のことをペラペラ話す男子生徒。
おかげで何故あっちがこっちを分かってないのか、察することが出来た。

「本を返しに出掛けただけだったから油断してたよ。この時間ってあんまり青ノ葉の生徒見かけないし。」

「・・・・・・。」

「ちょっと待ってね。今、眼鏡掛けるから。」

そしてボヤけた視界の現実をハッキリよく見るため、ようやく黒縁の眼鏡を掛ける。が、

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

今まで話してた相手が改めて矢口だと知って、表情は変わってないがサーッと血の気を引かせ、声が出せないほどのショックを受けていた。



その頃の矢口 5

矢口は犬飼と並ぶほどの問題児として名が渡ってる不良生徒。
なのでこっちがあっちを知らなくても、あっちはこっちのことを何らかの形で知ったはず。

「矢口君、だったんだ・・・。」

だから名乗ってなくても、こっちが誰なのか分かった様子。

「・・・・・・。」

そして思いっきり後悔しているのだろう。
誤った選択を選んだことを。
顔色の青さがそれを物語っている。

「・・・悪かったな。」

それを察した矢口は、彼から去ろうとした。
すると、

「待って待って!ちょっと待ってよ!」

後悔したはずの黒縁眼鏡の男子生徒が、取っ捕まえてきた。



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