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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#50 比路episodeEX(1/4)
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5月の長い連休

ゴールデンウィークという5月の長い連休。
このお休みを利用して、どこかへ旅行する人も多いだろう。
そして青いキャップ帽を被ったこの少年も同じで、それを遠出の理由にした人の1人。
しかし彼には放浪癖があり、目的は『旅行』ではなく『家出』。
だから彼の周りには家族らしい人の姿はいない。
駅近くにあった木のベンチで、1人でポツンと座っていた。

(腹へった・・・。)

ぐぅ・・・っと鳴るお腹の虫。
何か食べたいと。何か食べ物を腹に入れてくれと、しつこく訴えてくる。

(100が2、10が3、5が1、1が・・・4。)

けれど現在の所持金は、たったそれだけ。
食べたい物は色々あるのに、これっぽっちの金では腹の要求は満たせそうにない。

(当たり前か。ほぼ移動費で消えて、こんなところまで来ちゃったもんな。)

家出の旅路も、ついにここが末となるのか。
むしろよくここまで続いたものだった。



家出少年

実家や学校に連絡1本入れるだけで、家族か関係者の誰かが迎えに来るから問題ない。
何故なら少年は自分が『特別』であることを分かっていたから。

(持たされたクレカ使えば食えるけど、場所が特定されるしなぁ。)

でもまだ帰りたくない。
こんな理由で戻るなんて、カッコ悪くて美しくなくてクソしかない。
家出している時点でそんなこと気にするのは間違っているが、それは少年にとっては大問題。
どうせ連休が終われば学校が始まるんだ。
どうせそれまでには帰らなければならない。
どうせならもうちょっとだけ。もう少しだけ続けていたい。
そんな彼のプライドが彼を諦めさせようとしかった。

(・・・腹へった。)

しかし空腹をしつこく訴える腹の虫が、この心をへし折ってまで覆そうとしてくる。



少年との出会い

けど食料より、まずは水だ。水分だ。
今日も晴れた天気のせいで、5月のくせにクソ暑くて喉まで水を要求してくる。
公園に行けば飲み水が無料でゲットできるし、空腹も多少は誤魔化せるから、一先ずそこを目指そう。

(公園。ここから一番近い公園はどこだ?)

そう思った少年はここから移動しようと動いたその時、

「・・・!」

後ろからドンッと何かをぶつけられ。いや、何かがぶつかってきたのだ。
痛くはなかったがなんだろうと振り返ると、そこにはロボットのオモチャを持った小さな男の子が1人。

「ひっく・・・。うぅぅ・・・っ・・・ひっくひっく。」

顔がぐっちゃぐちゃになるまで泣きじゃくっていたのだった。

「へ?」



何もしてないのに

「あ?なんだお前。」

この世の終わりのような顔をして泣いている男の子。
ぶつかってきたのは、そっちなのに。
なのにまるでここにいた少年が悪かったかのように。

「うぅぅ・・・っ・・・ぁぁぁああ。」

少年の顔を見た途端、ビクッと体をビクつかさせ、もっとピーピー泣き出した。

「わ?!」

「ぴゃぁぁぁああ!!」

「ちょぉっとまて!そんなに泣くぅ?オレは何もしてないのに!?」

おかげで蔑まれた視線が周囲から集まってくる始末。
男の子があまりにも大泣きするから、歓迎してない誤解に少年は招かれる。



迷子の泣き虫

もちろんそんなのに巻き込まれるなんてたまったもんじゃない。
今すぐにでもこの場から脱兎して逃げ出したい。
けど放置も出来ないから、少年は男の子と視線を合わすために屈んで、改めて状況を把握。

「ひょっとして・・・、ひとりか?」

「ひっく。」

こんなに泣いてる男の子がいるというのに、周りの大人はただ見てるだけ。
辺りを見渡しても迎えに来ようとする人は誰もいなかった。

「お父さんとお母さんは?」

「うぅぅ・・・。」

家出してる自分じゃあるまいし、どこかに親がいるはず。しかしそれは男の子にも分かってない様子。
まあ1人でいた時点で予想ついていたが、完璧な迷子のようだった。

「ぴゃぁぁぁああ!!」

「分かった分かった。分かったから、そんなに泣くなって。大丈夫だから。」



即決な自分会議

男の子は、たった1人。
迎えに来そうな大人は誰もいない。
そして少年の所持金は残り少なく、空腹も限界。
そのせいか、

(このまま誘拐して身代金要求。上手くいけば金が手に入るかな?)

と、ついつい悪どいことが頭に浮かぶ。
しかしリスクの割りには低すぎる成功確率に現実味は薄く、直ぐに興味が冷めていく。

(いや、むしろ親のもとへ届けて報酬をたんまり貰った方がいいか。オレ的にもこの子的にもWIN‐WINだし。)

そして自分会議の中で直ぐに平和的な解決案が出て、誰からの否は出ることなく、ほぼ即決。
そうと決まればさっそくこの子の親を探しに行こう。

「にしてもー・・・。」

「?」

「お前、旨そうな頬っぺしてんな。饅頭みたい。」



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