≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#47 青ノ葉 学寮戦 (4)(2/4)
]  [目次へ]  [

今度は稚空が

他に生き残ってる1年生は少ないのだろうか。
追ってくる上級生の数が増えてきて、離れた距離から水が飛んでくる。
その度に稚空や恭が圭の盾になって、彼だけは濡らさせないよう、かばい続けた。

「くそっ!このままじゃヤバイな。」

「1年を何人やっても全滅にならないから片っ端から潰してるのかもね。」

ある程度、濡れたらアウトがこの学寮戦のルール。
このままでは直ぐに限りがやってきてしまう。

「キョン。そいつを、お願い。」

だから、

「あんまり体力ないから割りと限界で・・・。オレも足手まといになるぐらいなら、ここで時間を稼いでいたいから。だからキョンはそいつを連れてって。」

「何諦めたこと言ってんだ!稚空もオレらと一緒に!」

「キョン、オレは相談してるんじゃないの。時間ないんだから早く先に行って!」

逃げるチャンスを作るのには、やはり1つの犠牲が必要なのか。
恭と圭を逃がすために、今度は稚空が上級生たちを阻む。



平和な証

「・・・分かった。ただ最後にひとつ言わせてもらっていいか。」

「ん?」

「こんなときにまでキョンはやめろよ。さっきからずっとだったけどさ。」

「いいでしょ、別に。愛情は込めてるし、こんな状況でも実は平和な証なんだから。」

そうして恭は圭の腕を掴んで、先に走り出す。
残った稚空は上級生を待ち受け、己の水鉄砲で対抗。しかし多対1では圧倒的に数に差があり、的として集中砲火。
足手まといになりたくなかった彼の願いは、ほんの少しだけで多くは叶えられず。
その最後、約束を交わすためにぶつけた拳を胸に、とどめを撃たれる覚悟を決めた。

「・・・ごめんね、ひろピー。」



ラスボス・永瀬

「わぁ。ちあきくん、すごーい。あきとよりもいきてたんだね。」

「永瀬、先輩?」

ほぼ濡れた状態で壁際に追い詰められて囲まれた稚空。
おかげで自分等を追っていた上級生たちは3年の連中だと分かり、人と人の間からなんと永瀬がやって来る。
が、彼が持つ水鉄砲は自分が持つ水鉄砲よりもはるかに凶悪でジェット力があり、瀕死な状態なのにそれを忘れるほど驚いた。

「えぇ!?なにその水鉄砲!?」

「ふひひぃ。すごいでしょ!ことしはボクがラスボスだもん。かつやにだってまけられないよ。」

「す、すごいね。なんかすごい勝つ気満々。」

「うん。だってボクもみんなといっしょにバーベキューたべたいもん。だからごめんね?ちあきくん。」

そして謝りながら、とどめを撃たれた稚空。
ふひひぃと本人は笑っていたが、その無邪気さがより狂気じみたモノに感じさせた。

「わーっ!こんな近くでそんなジェット撃たないで!ある程度以上に、びしょ濡れちゃったじゃん!」

「ごめんねごめん。でもこれでちあきくんもゲームオーバーだね。」


[鈴木 稚空 戦闘不能]




勝ちたい理由

稚空を撃ち落としても全滅にならない1年生。

「あーん。1ねんせいのりょーせいちょうさん。ちあきくんでもないみたい。」

「めぐっちゃん。本当に寮生長やったら放送くるの?寮長のことだから忘れられてない?」

「うーん、そんなことないとおもうけど。」

生存してる1年は、やっぱり残り少ないようだ。
永瀬を護衛するため一緒にいた小町も、うーんうーんっと1年の寮生長の正体に頭を悩ます。

「やっぱりみねぎっちゃん説あんじゃない?」

「どーだろ?まだけーくんものこってるよ。」

「まあいっか。頼りのぐうやがやられたのは痛いけど、虱潰しに見つけ次第、撃ってけばそのうちあたるっしょ。かっつぁんも倒して、そろそろ2年も潰したいし。」

けどその時間は一瞬だけ。
次のターゲットに狙いを定めて場所を移動し始めた。

「先輩たち、やっぱり勝つ気満々だね。」

「そりゃぁそうっしょ。だってバーベキューしたいし肉食いたいし。」



圭の心境

そんな稚空がやられた一方。
後ろを振り向かないよう、恭は指示通りに圭を連れて走り、ようやく学生寮の1階にたどり着く。

「転けんなよ、圭!」

「・・・めて。」

「あ?」

しかし、

「やめて。もう・・・。」

そんな中、圭は震えた声で恭の足を止めさせた。

「圭・・・?」

助けてくれだなんて言ってないのに。
守ってくれだなんて言ってないのに。

「嫌だ。こんなのはもう嫌だ。」

自分が守られる度に誰かが犠牲になっていく展開を。
何度も何度も見せられて、痛んでいた心に限界がきてしまう。



圭の心境 2

「僕がやられればもっと早く終わらせられた話だろ?そんな目に遭わずに済んだ話だろ。なのに・・・。」

圭はもう嫌だったのだ。
自分のせいで誰かがやられていくのが、ただただ嫌だったのだ。

「そうなるわけにはいかないから、みんな圭をここまで守ってきたんだろ。」

それを先に言っておけば、稚空と諍いなんて起きなかったのだろうか。
でもそれは本当、今さらの話。
自分をキライだとはっきり言った彼までも、結局犠牲にさせてしまった。

「圭がやられたらオレらもやられて全員アウト。けどオレらがやられても圭が生きていれば、他の誰かも生きていられる。これは分かるだろ。」

「だからって・・・。迷惑だよ、そんなこと。」

「言っとくが、それをオレに言っても無駄だからな。」



恭の信念

改めて知った圭の気持ち。

「他の誰かはどうだったか分かんねえけど、圭が迷惑だろうがなんだろうが、オレには知ったこっちゃない。だからどれだけ嫌がってもオレには無駄だ。」

「な!バカじゃないの!?」

「お、よく分かってんじゃん。」

恭はそれを聞かされても、何も動じない。
けどそれは圭を否定するわけじゃなければ、他の誰かを否定するわけでもなかった。

「オレはバカだからな。圭ほど頭よくねえし、難しいことも一切分かんねえ。だからオレはオレの信念を貫き通すことしか出来ねえ。」

全ては自分の信念を貫き通すために。

「オレが劣りになるから、見つからないよう静まってから校舎に行け。」

稚空と立てた計画通りに。
圭を抱えて持ち上げると、

「信じてるからな。圭がチロ先生を呼んでくるの。」

「待って!君も・・・、澤村くんも一緒に!」

一番近い窓から彼だけを外に出させた。
圭の言葉を最後まで聞かずに、途中で閉めて。



繋げてきたモノは・・・

「さてと。先輩らは、どこまでオレに追い付けられるか。見ものとさせてもらうか。」

恭は圭を逃がさせるため劣りに。
わざと人がいる前を通って人目を付かせて、圭がいる位置からどんどん遠くに離れていった。

「あっちに1年いるぞ!」

こうして最後の最後まで、恭までもが犠牲に。
壁に張り付いて身を潜める圭は、耐え難い胸の痛みに震える自分を自分で抱き締める。

「・・・っ。」

そして静かになって人気がなくなったのを確認すると、学生寮から人目がつかなさそうな道を選び、校舎へと向かって行った。
助けてくれだなんて言ってないけど。
守ってくれだなんて言ってないけど。
ここまで守ってくれたみんなの繋ぎを、自分なんかのせいで無駄にさせないように。
月夜の明かりに照らされながら。



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×