「味噌汁って、さ。あるじゃん?」
「うん?え、いきなり何?味噌汁?」
「うん、味噌汁。味噌でもいいや。」
現在は就寝時間を迎えた時刻なので、色々と配慮をしてうるさくならない程度に静かに話し合う司と比路。
「寮のご飯で出てくる味噌汁って、合わせばっかりなんだよな・・・。」
「うーん。そうなの?」
「この間、帰省したとき。久しぶりに赤味噌の味噌汁飲んでさ。俺、改めて赤味噌派なんだな〜って実感した。合わせも美味いんだけど、ちょっと何かが物足りないんだよね。」
「僕は別に何でもいいかな。だから司のこだわりがよく分からない。」
「えー。そこはこだわろうよ。きっとアッキーや明人兄、克にーちゃんだって赤味噌派だって。って、そんなこと言ってたら本当に飲みたくなってきちゃった、赤味噌の味噌汁。」
一つのベッドで肩を並べて天井を見つめる司と比路。 中身があるようでない二人の会話。
「なら寮長に頼んでみたら?ここの献立作ってるの寮長だって聞いたから。もしかしたら入れてくれるかもしれないよ。」
「いや。俺が飲みたいのは赤は赤でも家の味噌汁だから。さすがに再現は無理っしょ。エノキと油揚げと小ねぎが入った赤の味噌汁、超飲みたい。」
それはさっき少しだけ余所余所しかった二人が、いつもの二人へ戻ったかのように、いつもと変わらない雰囲気が漂う。
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