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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#39 青ノ葉 思懐郷(3)(3/3)
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青ノ葉が学食じゃない理由

青ノ葉は朝昼晩と日暮寮長が考えた献立、決められたメニューのご飯を食べている。
これで一つ解決したから、また新しい疑問が生まれた。

「ねえ、寮長。なんで青ノ葉って学食じゃないの?」

でもこれは新しいというより、前からあったこと。
寮で暮らしているので朝晩はそうであっても、昼ぐらいは学食があったっていいじゃない。自分お好きな食券買って頼んで食べたっていいのでは?

「俺らの代だと昼は食券買って好きなもん食ってたけど、金欠が原因で抜く奴いたからな。そうじゃなくても偏食野郎もいて、成長期なのにそれは良くねえからって理由で廃止になって寮弁になった。」

せっかくのいい機会だったので尋ねてみたが、やっぱり寮長は知っていた。
それどころかそうなった原因、経緯さえも教えてくれた。

「峰岸は学食に憧れてた系か?」

「そりゃあそうですよ。アニメとかドラマでそういうシーンあって面白そうだなって思ってたから。」



ウチはウチ、余所は余所

「いくら何でも朝昼晩。みんな食べてる物同じっていうのもちょっと変な気がする。」

「うるせーな。ウチはウチ、余所は余所だろ。」

けれど学食には学食。給食には給食。寮弁には寮弁。
それぞれにはそれぞれにしかない長所がある。
それぐらい比路も分かっているが、それでも隣の芝生は青く見えてしまう。

「いいじゃねえか。嫌でも朝から夜までせっかく一緒にいるんだから、でっけえ家族みたいに過ごしたっていいじゃねえか。」

「でっかい・・・、家族?」

「だろ?同じ屋根の下で三年間、こんな大勢で過ごすんだから。でっけえ家族みたいなもんだろ。」

だけど日暮寮長はそうじゃなく、『こんな機会なんて大人になったらやりたくても出来なくなんだから。』と。
『せっかくなんだから卒業して出てくまで楽しんどけ』と。
過去でも未来でもなく、今しか出来ないことをガン推してまで伝えてきた。



寮長として

「まあ、ここよりいい学校なんて幾らでもあるさ。もっと立派な私立高だってあるし、もっと有望な進学校だってある。けど、さ。」

彼は青ノ葉学園の卒業生。
過去にここを卒業した彼だからこそ語るここならではの話。
そして学生寮の寮長として就いだ最大の目標。

「青ノ葉に通う奴らには言わせてやりたいんだよな。ここが一番だって。」

「・・・・・・・・・。」

「言わせてやりたいじゃん?青ノ葉生だってこと誇りに思わせてやりたいじゃん?」

何故、どこから学食の話からこんな大事な話に切り替わったのだろう。

「・・・って、なんで俺はいきなりこんな話してんだ?」

「知りませんよ、そんなこと。」



一緒に過ごす生活

でも寮長の話に、比路の心を打つモノがあったようだ。

「でも、いいですね。寮長の考え、嫌いじゃないです。なんて言うかあったかい感じがして・・・。」

青ノ葉も進学校だけあって授業もテストも厳しく、時間厳守な寮暮らしだって毎日がギリギリで大変。
だけど慣れていく内に新しい友だちが増えて、笑っている自分が確かに居た。
一緒に起きて、一緒にご飯食べて、一緒に授業を受けて、一緒に部活して、一緒に遊んで、一緒の時間に寝る。
みんなと一緒に過ごした寮生活。
ようやく一ヶ月が経ったばかりだけどそれは 本当に楽しくて、楽しくないわけがなくて、おかげでギリギリの中で過ごしていた毎日でも充実感はあった。

「っと、もうこんな時間か。欠席者分の寮弁はねえけど、代わりにうどん作ってやっから待ってろ。それぐらいなら食欲なくても食えるだろ?」

「え?もしかして寮長が作るの?」

「当たり前だろ。今は俺しかいねえんだから。昼間は食堂のおばちゃんもいねえの。」

本当、昨夜に自分は何をしているのだろうと改めて気付かされる。



お見舞い

こうして学校を休むこととなった比路は医務室で日暮寮長と過ごす。
放課後になると寮内が賑やかになっていって、授業が終わった生徒が校舎から帰って来たことを知らせる。
そしてー・・・、

「具合大丈夫?ひろピー。」

「あまり無理するなよ峰岸。」

「比路くん。授業のノート、ボクもとってますので良ければ使って下さい。」

比路の休んだ理由が風邪とかではないので面会は許され、部活が終わって帰ってきた友だちも制服姿のままお見舞いに顔を出す。

「早く良くなってね峰岸委員長。みんな心配してたんだから。」

「なんだ。そこまで言うほど、もう顔色悪くなさそうだな。」

「さっさと直してさっさとオレとの決着付けさせろよな。っと、圭も比路のこと心配してたもんだから連れて来てやった。」

「良かった。峰岸くん、もう大丈夫そうだから安心したよ。」

みんなみんなこんな自分なんかに心配を掛けてしまった。
それは申し訳ないぐらいにあったかくて優しくて、やっぱり悲しむ理由なんてどこにもなかった・・・。

「心配掛けちゃってごめんなさい。もう大丈夫だから・・・、ありがとう。」

そんなことに気づいていたのに気づいてなかった自分がバカだったと、改めて気づかされたのでした。



比路からチロ先生へ

「チロ先生。」

その日の夜。
学習時間が過ぎて就寝時刻に向かう間の時間、比路は医務室へ。チロ先生の元へと訪れていた。
けどそこには日暮寮長の姿もあり、今まで二人は一緒にいたようだ。

「どうかしましたか?峰岸くん。」

「あの・・・、昨日はありがとうございました。改めてお礼言いたくて。おかげさまで良くなったんですが、そのことでお願いしたいことありまして。」

「お願いごと、ですか?なんでしょう。」

そして比路からチロ先生へのお願いごと。

「昨日のお薬って、まだありますか?」

「え。」

「えっと、その具合はもう大丈夫なんですけど。またお腹痛くなっちゃったら嫌なので、念のために飲んでおきたくて・・・。」

あんなに寝れなかった日々だったのに、チロ先生のおかげでゆっくり眠れたのだ。
だからあの薬をもう一度飲みたいと口にする。



今夜こそ・・・

するとそれを一緒に聞いていた日暮寮長が「アレは薬じゃなくて砂糖・・・」と何かを言いかけた途端、チロ先生の容赦ない肘打ちエルボーが入り阻止されてしまう。
彼はいったい何が言いたかったのだろう?

「そうですね。分かりました。ご用意致しますので少々お待ち下さいね。」

それが分からないままチロ先生は比路の為に、さっそく牛乳を温めて差し出す。
ちょっと甘いのが特徴なチロ先生特製のホットミルク。

「・・・いただきます。」

牛乳が苦手で、いつも残してばかりの比路だったけど、この時ばかりはこの牛乳の力に頼る。
今晩こそは大丈夫。
ちゃんと眠れますように・・・。
そう願いを込めながら、マグカップに入った一杯のホットミルクを飲み干したのでした。



青ノ葉 第39話をお読みいただきありがとうございます

比路を見舞うシーン
やっと一年生が全員揃ったかと思えば
一人足りないのお気づきいただけてますでしょうか?

次回は比路エピソードのエピローグ
青ノ葉自体の物語は、まだまだ続きます


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