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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#39 青ノ葉 思懐郷(3)(2/3)
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チェンジ





「・・・ん。あれ?」

あれから何時間寝ていたんだろう?
ふと目が覚めて窓を見ると、あんなに暗かった夜がいつの間にか明けており、朝にしては明るすぎのような空をしている。

「え!?今、何時!?」

「11時10分回ったとこだな、おそよう。随分と寝てたな峰岸。」

「わ!?寮長!?!?なんでここに!?」

こんな時間にビックリして飛び起きると、医務室には日暮寮長の姿があって、さらにビックリ。
ビックリにビックリが重なって、おかげで寝惚けも一気に解消。

「なんでって昼間の医務室は俺がいんの。チロせんせーも言ってただろ?365日24時間ここやってるって。」

「言ってたけど、知らなかったよ。そんなこと。」

自分が寝ていた間、チロ先生から日暮寮長にチェンジしていたようだ。
けどチロ先生は日中、校舎の保健室にいて、日暮寮長はずっと学生寮にいる。それを思い返してみれば理解出来なくもないが、驚いてしまうのも無理ないだろう。



遅刻じゃなくて

それはそうとして、そんなことでのんびりしてる場合じゃない。

「そんなことより早く学校に行かないと!完全に遅刻すぎちゃってる。」

だから慌ててベッドから出ようとしたが、「はい、ストーップ」と寮長に止められる。

「落ち着け。峰岸は今日遅刻じゃなくて欠席。森から本田に伝えさせてっから心配無用だ。」

「え。欠席・・・?」

「顔色あんまり良くないしな。チロせんせーからも今日は休むようドクターストップ入ってっから登校は諦めろ。」

「・・・・・・・・・・・・。」

そして比路は遅刻したわけじゃなくて欠席。
学校を休まさせられた理由も知り、返す言葉が何も口から出せれなかった。



欠席者は比路一人

「まあ今日は峰岸以外、他に休んだ奴いねえから俺としては楽だけどな。」

「楽って・・・。」

365日24時間やっている寮の医務室。
普段はチロ先生がいるが、平日の昼間は日暮寮長がみてくれている。
得か損か。どっちか分からないけど、こんなの学校休まないと分からなかった。

「ところで峰岸。食べたいモノって何かねえ?」

「・・・はい?」

そして医務室の机を使って何を書いていた日暮寮長。
比路が起きて止めたペンを再び動かす。

「な、なんでそんなこと唐突に?」

「いいから早く答えろよ。好きな食べ物でも何でもいいから。サン・ニー・イチ、はい。」

「そんな唐突に訊いてこないでよ!出てくるモノも出てこなくなっちゃうでしょ。」

いったい何をしていたのだろう?



寮長のお仕事

日暮寮長は勿論、ここでテキトーに過ごしていたわけじゃない。
寮長にも寮長ならではの仕事があり、書いていた書類も寮長のお仕事関係。

「だから7月の献立考えてんだって。」

「7月の献立?なんで寮長がそんなことを?」

「なんでって。そりゃぁ俺が毎月毎日毎食の献立作ってるからに決まってるだろ。」

「決まってるって知らなかったよ、それも。寮長が作ってたんだ、あれって。」

「おう。ちゃんと管理栄養の資格持ってっから安心しろ。」

そして今日は二ヶ月先の献立を作っており、比路案を参照しようとしていた。
なんでそんな資格を持ってる人が、こんなところで働いているんだろう。

「いいから早く案くれ、よこせ。ちゃんと使ってやっから。」

一つ疑問は解決すれば、また次の新しい疑問が生まれてくる。
普段の言動のせいでいい加減そうに見える彼だが、意外と謎が多い人なのかもしれない。



だいたい7月〜8月

「なんでもいいの?」

「だからさっき言っただろ。食べたいモノでも好きな食べモノでもいいから言えって。」

そういうわけで突発的に訊かれた寮食のリクエスト。
何でもいいからさっさと答えろと、寮長から尋ねられる。ので比路も、その『何でも』に甘えて。

「葡萄、でもいいの?」

自分の好きな果物をチョイスした。

「葡萄か。デラウェアあたりなら、ちょうど7月から旬始まるからありっちゃありか。」

「え?いいの!?ダメだって言われるかと思ったのに・・・。」

「サンキュー峰岸。7月、どこかの日にデザートで出してやっから楽しみにしとけ。」

すると公言通りに、比路のリクエストは承諾。
本当になんでもよかったようで、お安い御用と言わんばかりに約束してくれて可決となった。



巨峰は8月下旬〜9月

「でも僕、葡萄は葡萄でも小さい葡萄より巨峰のが好き。」

「アホ。俺が訊いたのは7月のリクエスト。巨峰がそんな時期に食べれるわけねぇだろ。却下だ、んなもん。」

「・・・何でもいいって言ったのに。」

しかし日暮寮長の『何でも』には条件があって、一致してなければ容赦なく却下された。

「レーズンもパンやサラダとかに使えそうだな。」

「え、ヤダ。レーズン嫌い。」

「ヤダって、おま・・・っ。レーズンは干し葡萄だっつーの。」

「そんなの知ってるよ。でも葡萄と違ってレーズンすっぱすぎて好きになれないの。同じ理由でプルーンもイヤ。」

「ならブルーベリーも駄目か。」

「ううん、ブルーベリーは食べれるよ。ジャムとかヨーグルトとかイチゴよりブルーベリーのが好きだもん。」

「・・・峰岸の舌、意味分かんねえ。どうなってんだよ、その味覚。」



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