学生寮 一年階の男子トイレの個室に籠る比路。 一人部屋から抜け出して、あれからどれぐらいの時間が経ったのだろう。 それも分からなくなってきた、そんな時だった。
「大丈夫・・・、ですか?」
「!」
トイレのドアをコンコンと優しくノックされる音と共に、誰かが優しく声を掛けてきた。 けれどこんな状態の自分を見られるのは恥ずかしい。 だから返事に迷って、どうしようっと戸惑っていると、
「・・・落ち着いたらでいいですから。落ち着いたら出てきてくださいね。外で待ってますから。」
先に向こうがそう言い残し、この場から去っていく。 けどその人は言ってきた通りに自分が出るまで、ずっとトイレの外で待っているだろう。 それがなんとなく分かった比路は、必死にこんな自分を誤魔化してから、指示があった通りに一先ずここから出ることにした。
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