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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#39 青ノ葉 思懐郷(3)(1/3)
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期待で輝かしかったあの頃

『とうとう僕も高校生か〜。』

明日から何もかもが新しい環境で始まる新生活。
『高校生』という言葉の響きだけで十分すぎた大きな期待。
進学校だけあって授業もテストも厳しく、時間厳守な寮暮らしだって毎日がギリギリで大変。
だけど慣れていく内に仲の良い友達が増えて、学校にいても寮にいても楽しくて笑っていた自分がいた。・・・はずなのに、どうして。

「・・・・・・ッ。」

どうして僕は、こんなところで泣いてるんだろう。
高校生なのに。
やっと高校生になれたのに。
僕は、なんでこんなところで涙を流しているんだろう。
悲しいことなんて何もなかったはずなのに・・・。



深夜の男子トイレ

学生寮 一年階の男子トイレの個室に籠る比路。
一人部屋から抜け出して、あれからどれぐらいの時間が経ったのだろう。
それも分からなくなってきた、そんな時だった。

「大丈夫・・・、ですか?」

「!」

トイレのドアをコンコンと優しくノックされる音と共に、誰かが優しく声を掛けてきた。
けれどこんな状態の自分を見られるのは恥ずかしい。
だから返事に迷って、どうしようっと戸惑っていると、

「・・・落ち着いたらでいいですから。落ち着いたら出てきてくださいね。外で待ってますから。」

先に向こうがそう言い残し、この場から去っていく。
けどその人は言ってきた通りに自分が出るまで、ずっとトイレの外で待っているだろう。
それがなんとなく分かった比路は、必死にこんな自分を誤魔化してから、指示があった通りに一先ずここから出ることにした。



バレるくらいなら

だってそこで待っていたのは、

「落ち着きましたか?峰岸くん。」

声色の特徴からして声を掛けられた時点で分かったが、やっぱり保健医のチロ先生だったから。
チロ先生は比路がトイレから出てくると、いつもの優しい笑顔で再び声を掛けてきた。

「ご、ごめんなさいでした。・・・お腹が痛くて。」

「お腹が、ですか?」

「はい。お腹が痛くて・・・。」

トイレで泣いてただなんて死んでもバレたくない。
だから尤もな理由を使って、意地が誤魔化しに誤魔化しを必死に重ねていく。

「そうでしたか。ごめんなさい、辛かったところだったのを無理矢理出させてしまって。もう落ち着きましたか?吐き気とかもありませんか?」

けど思いのほか、チロ先生はあっさり頷いた。
その反応からして泣いていたのはバレてない?
それはそれでホッとしたが、この出まかせを本気で心配されたので、逆に申し訳ない気持ちになった比路だった。

「だ、大丈夫です!さっきよりは落ち着きましたから。」



365日24時間やってます

しかしそれは『はい、そうですか』では終わらなかった。

「峰岸くん。お薬出しますので医務室行きましょうか?」

「え。」

この出まかせを信じられて、泣いてた以外は健康そのものの自分に薬を供しようとされる。

「大丈夫です、ただの腹痛でしたので。それにこんな時間じゃチロ先生にも悪いですし。」

「心配ないですよ峰岸くん。医務室はえーっと・・・、365日24時間やってますので遠慮なんて何にも要りませんよ。」

なので大丈夫だと断ったら向こうも大丈夫だと断りを断るように返されてしまい、結局医務室へ移動することに。

(今のフレーズどこかで聞いたような?)



真っ白な飲み物

チロ先生に連れられてやってきた医務室。
そこは校舎の保健室とあまり変わらず、白を基調とした落ち着いた室内。
奥には謎のドアが一つあり、それはどこに繋がっているのか知らない人にとっては少し不思議な存在。
医務室に訪れたことはあったけど、利用するのは初めてだから見るもの全てが新鮮。

「お待たせしました。熱いので火傷しないように、ゆっくり飲んで下さいね。」

すると暫くもしないうちにチロ先生がマグカップに入った温かい飲み物が渡された。
けどそれも白を基調とした白色の飲み物であり、それを見た途端にカチンと固まる。

「ち、チロ先生。これってひょっとして、ぎゅうにゅぅ・・・?」

「はい。温めた牛乳にお薬入れてますので、ちょっと甘いのが特徴な特製ホットミルクです。」

何せそれは自分が嫌いな牛乳。
いつも一口で済ますほど苦手な彼にとって、マグカップ一杯はとっても多すぎる量。
でもチロ先生から、これはお薬だと言われて供されたホットミルク。

「冷めないうちにどうぞ。」

「・・・イタダキマス。」

だから断ることも出来ず、どうぞと言われれば飲むしかない。
覚悟を決めた比路は指示通りに、火傷をしないよう気をつけばがらゆっくりゆっくり特製ホットミルクを口にした。



おやすみなさい

チロ先生のホットミルクは確かに甘かった。
牛乳嫌いなのに、最後まで飲めたことにビックリ。
おかげで体は温まり心もさっきよりずっと穏やかに落ち着いていた。

「峰岸くん、今晩はここでお休みしましょうか。」

そして飲み終わったら、そのまま医務室のベッドで寝ることに。

「大丈夫ですよ峰岸くん。薬も効いてきてますので安心して眠って下さい。万が一の為に私もそばにいますから、具合が悪くなったらいつでも仰って下さいね。」

「・・・ぁ。」

「おやすみなさい峰岸くん。」

「おやすみ、なさい。チロ先生・・・。」

横になって布団を被せられたあと、チロ先生は比路が寝るまで頭を撫でてきた。
その手は優しくてあったかくて、ちょっと子ども扱いされてる感があったけど、でも嫌いじゃない。
飲んだ薬の効果もあってか、あんなにも寝れなかった日々が嘘のように、安心した比路はすんなりと眠っていった。



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