≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#4 トラブルメーカーな彼ら(2/3)
]  [目次へ]  [

学生寮、二年の階で

入学式に出席するのは一年生だけ。
二・三年生は部活動勧誘会に向けて、早いところだと午前中から準備が急ピッチに進められており、制服やジャージ姿の生徒がちらほら見えた。
そんな中、

「ふぁ・・・。」

学生寮の二年の階に戻ってきた輝かしいオレンジ頭の男子生徒。
眠たそうに大きな欠伸を一つしながら、誰かを待っていた。

「おい。なんであんなところに犬飼がいるんだ?」

「バカ!余計なこと言うなって、犬飼に聞こえるだろ!アイツに関わるとロクなことねぇから。」

どこの学校にも存在する不良と呼ばれる生徒は、青ノ葉にも存在している。
特に今の二年生に多く生息中で、オレンジ頭の彼は不良学生の軍団でリーダー的な立ち位置。
そのためか誰も彼に近づこうとはせず。極力、目を合わせないよう避けていた。



犬飼 冴

青ノ葉学園の一位を争うほどの問題児。
そんな彼の名前は犬飼 冴(いぬかい さえ)。
青ノ葉学園の二年生。
輝かしく染めたオレンジ頭が、彼をより目立たせる。
もちろんそれは違反中の違反だが、そんなことなど彼は構ってない。

「丸聞こえだっつーの!このタコが!!」

「うわぁ!?」

先ほど犬飼に向かって小さく呟かれた同級生の言葉。
それは遠く離れた場所だったのに、きちんと耳に届いていたのか。
追った犬飼は彼らの背中に目掛け、加減もなければ躊躇いもない蹴りで突撃して怒りをぶつけた。

「げ!?犬飼!ちょちょちょ、ちょっと待った!落ち着け犬飼!!」

「ちょーどいい憂さ晴らしが出来たわ。ちょっくら、そこまで付き合えや。」

「ひぃぃ!?」

どうやら犬飼の機嫌は最悪に悪いためか。
蹴った生徒の言い訳なんぞ問答無用。聞く耳すら持たず。
まるで獲物を捕らえたかのように瞳を光らせて、暴行を加えた。



桃地 小太郎

学生寮の自販機から缶ジュースを購入している眼鏡を掛けた真面目そうな一人の男子生徒。

「えっと、犬飼さんのは確か・・・。」

彼の名前は桃地 小太郎(ももち こたろう)。
桃地も犬飼と同級生で、青ノ葉学園の二年生。

「100%じゃないやつっと。」

おとなしく真面目で『いい子』だった彼に、いったい何があったのか。
『不良』という言葉の響きに憧れ、犬飼たちの不良軍団に仲間に入り、今ではすっかりトラブルメーカーの一員となった。
けれど桃地の性格上、完璧な悪にはなりきれず。結局、中途半端な立ち位置にいて軍団の中でも下っ端中の下っ端。

「あったあった。これっす、これこれ。」

せめて犬飼たちの足手まといにはならないよう。こうして快くして今日も犬飼にパシられていた。



命懸けの頑張り屋

購入したばかりの飲み物を抱えて、桃地もようやく二年の階へ。
階段上がった直ぐそこの踊り場で、犬飼が同級生に暴力を加えてる場面と遭遇してしまう。

「あああああ!?だめだめだめ犬飼さんストップす!ストップ!!」

それを見た瞬間。即座に犬飼とその生徒との間に立ちはだかる桃地。
けど怒り心頭中の犬飼を、そう安々と止められるのなら誰も苦労しない。

「うっせぇ!このタコ!」

「タコじゃないっす!桃地っす!」

「邪魔だ!退け小太郎!!」

犬飼が振るう拳は止まることなく、邪魔した桃地の顔面に直撃してしまう。

「あ・・・。」



命懸けの頑張り屋 2

「ぐふ・・・っ。」

打たれた勢いに体ごとぶっ飛ばされ、桃地はそのまま壁にも激突。
殴られた音よりも痛そうな音を立てて、冷たい廊下の上に撃沈した。

「い、犬飼さん・・・。ダメっす。やめて下さ・・・っ。」

それでもなお犬飼を止めようとする意志だけはしっかり。
ボロボロになった体で、フラフラと立ち上がる。

「・・・・・・。」

そんな桃地を見て、少しは落ち着いてくれたのか。
怒りで染まった犬飼の拳が動きを止める。
彼の頑張りは、ちゃんと犬飼に伝わってくれたのだろうか。



命懸けの頑張り屋 3

「今だッ!」

「ッ!」

犬飼の視線が逸れた隙に、ここから脱兎のように逃げ出した同級生の生徒二人。
彼らはあっという間に彼方向こうへと走り去ってしまった。
その際、遠くで騒ぐ小さな声が、犬飼たちの耳にまた届く。
『やっぱりアイツに関わるとロクなことがない』とー・・・。

「〜〜〜・・・っ、小太郎!!!」

獲物を逃した上、下っ端に邪魔されて。もともと良くなかった機嫌がさらに悪化。

「てめぇのせいで逃げられただろうが!!このタコッ!!」

「ああああああ!止めて!止めて下さいっす犬飼さん!!それにタコじゃないっす桃地っす!!!」

行き場を失った拳と蹴りを全て桃地にぶつける犬飼。
完全に八つ当たり状態で、ドコバコゲシバシ叩かれ蹴られても、桃地はそこから退こうとはせず。体を張って犬飼の怒りが静まるのを待った。



犬飼と桃地

桃地に八つ当たったおかげか。犬飼は多少の小ぐらい落ち着きを取り戻す。

「だいたいパシリの分際で、てめぇが遅かったから、こんなことになったじゃねぇか。」

「そんな無茶苦茶な・・・。」

だが機嫌が悪いのは分からず、グチグチグチグチと理不尽な愚痴をぶつけまくり。
それでも桃地は冷静に。彼の機嫌をまだまだあやそうと、

「それより犬飼さん。頼まれた飲み物っす。受け取って下さいっす。」

「・・・・・・。」

自分のお金で買ってきたばかりのジュースを、満面な笑顔で差し出す。

「・・・小太郎。」

「はい?」

「お前さ。オレが言ったこと、もう一度よ〜〜〜く思い出せ。」

「え?」



頑張れ!桃地くん

「オレは100%しか飲まねぇつったろ!!全ッ然、違うだろうが!!!」

「ヒィッ!?」

桃地がパシられた物と違うものを購入してしまったため、犬飼の不機嫌度はマックスへ上々。

「す、すみません!今すぐ買い直してくるっす!!」

「ったりめぇだろうが!!このタコッ!!」

「犬飼さん!タコじゃないっす桃地っす!!」

ガンガンに言葉の暴力を浴びながらも、桃地は猛ダッシュ。
彼が命掛けた頑張りは、あまり犬飼に届いていなかった模様。
・・・がんばれ、桃地。



ご機嫌ナナメの犬飼くん

今日の犬飼の機嫌は朝からナナメに向きっぱなし。
少し気に障っただけで、ガーッと噛みついて怒りを八つ当ててくる。
まるで躾がなってない犬のようだ。

「犬飼さん。まだあの一年に負けたこと気にしてるんすか?」

「・・・・・・。」

新しく買い直した(された)100%のオレンジジュースを犬飼に手渡し、機嫌がナナメになった原因を伺う。
けれど桃地も桃地で、その話題こそが犬飼の癇に障ることを覚えていないようで、

「うっせぇ!!あれは負けたんじゃねぇっ!!柊に邪魔されたんだろうが!!」

「いだあだいだあだいだだだだ。ごめんなさいっす犬飼さん。あ・・・、叩かないで蹴らないで!」

またドコバコゲシバシ殴られ蹴られる羽目に。

「ひょっとしてまたあの一年に仕掛けるつもりっすか?」

「ったり前だろ。やられっぱなしで引き下がれるかっつーの。」

出る杭を打つかのように。生意気そうに目立った新入生の一年、朋也に洗礼したものの。
油断して返り討ちにあったあの出来事を根に深く、強く持っている模様。

「覚えてろよ、あの一年・・・。」

犬飼は完全に朋也へ目を付けたのだった。



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×