そのビデオテープには珍しく日付が残されていなかった。 だからいつの頃か分からないが、さっきのより幼い比路が映っている。
「これっていつの時?」
「確か比路がまだ乳離れ出来なかったときだから、2つか3つのとき?朝からママと頑張って比路に可哀想なことさせちゃってたんだけど、司くん覚えてるかな?」
「何あったっけ?」
何がそんなに悲しいのか。 この世の終わりのように、激しくピーピーピーピー泣きじゃくる比路。 比路パパも比路ママもあやし疲れてしまっており、撮っていたビデオも椅子に乗せて放置させたまま。 撮ることにしたのは彼らなのに、撮っていることを忘れてしまい、映像は動かず泣く比路だけを映しっぱなし。 そこへ隣から森家が家族揃って訪問。真っ先に司が比路の元にやってくる。
『比路、司くん来たよ。だからそろそろ泣き止んで〜。』
『ちゅうちゅー・・・っく、ちゅうちゅー!』
『だからちゅうちゅは、もうバイバイだってば。』
『やあああ!ちゅうちゅちゅうちゅー!』
けど比路は司に構わず、グズグズグズグズ泣きっぱなし。 司を使って落ち着かせようとしたみたいだが駄目だった。
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