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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#34 司と比路 春の大型連休(後編)(3/4)
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やってくる現代の司

「ねー。振られたのは悲しかったけど、この頃の比路ってば超可愛いんだよねー。」

「お願いだから消してってば!」

そんな昔懐かしい映像を彼も彼らの後ろから見てたのだろう。

「わー。今のって昔のヒロ?懐かしい〜!」

「いらっしゃい、司くん。」

比路を追ってきていた司がズカズカ入ってきて、そのままテレビの前にやってくる。

「司くんもどう?一緒に観るかい?」

「観る観る!ヒロパパが一番気に入ってるやつ観たい!」

「それならこれかな。」

真っ赤な顔で怒る比路に「やめて!観ないで!」と強く反対されたが二人してまさかの無視。
昔懐かしい比路を撮った映像は無情にも再生された。



2つか3つの比路

そのビデオテープには珍しく日付が残されていなかった。
だからいつの頃か分からないが、さっきのより幼い比路が映っている。

「これっていつの時?」

「確か比路がまだ乳離れ出来なかったときだから、2つか3つのとき?朝からママと頑張って比路に可哀想なことさせちゃってたんだけど、司くん覚えてるかな?」

「何あったっけ?」

何がそんなに悲しいのか。
この世の終わりのように、激しくピーピーピーピー泣きじゃくる比路。
比路パパも比路ママもあやし疲れてしまっており、撮っていたビデオも椅子に乗せて放置させたまま。
撮ることにしたのは彼らなのに、撮っていることを忘れてしまい、映像は動かず泣く比路だけを映しっぱなし。
そこへ隣から森家が家族揃って訪問。真っ先に司が比路の元にやってくる。

『比路、司くん来たよ。だからそろそろ泣き止んで〜。』

『ちゅうちゅー・・・っく、ちゅうちゅー!』

『だからちゅうちゅは、もうバイバイだってば。』

『やあああ!ちゅうちゅちゅうちゅー!』

けど比路は司に構わず、グズグズグズグズ泣きっぱなし。
司を使って落ち着かせようとしたみたいだが駄目だった。



2つか3つの司と比路

吃逆も繰り返して泣き止まない比路が、心配と不安で堪らなくなってくる。
司はもうとっくの前に卒乳出来たのに・・・と、誕生日一日違いでもこんなにあった個人差に驚くばかり。
ここまで心を鬼にしてきたのに『どうしよう?』『もうあげちゃう?』と大人四人で相談し合う。

『ちゅうちゅー・・・うっくひっく。ちゅうちゅー・・・。』

『ちゅうちゅがほしいの?ヒロ。』

司も司で極上の泣き虫になってる比路に、自分が出来ることをしようと行動に移す。
比路ママが駄目ならば・・・。
そう言わんばかりに自ら服をたくし上げ、自分のを差し出す。

『ヒロ、ちゅうちゅーいいよ。』

だから気付いた比路はそのまま、司のちゅうちゅをちゅうちゅうー・・・、

「パパのバカーーーー!!!」

しようとした寸前で、現代の比路がビデオカメラを蹴っ飛ばしてまで破壊したので再生を中断。映像はそこで止まり、テレビ画面はザーッと砂嵐が流れる。

「あー!パパのお気に入り比路が壊したー!」

「当たり前でしょ!パパのバカバカバカバカ!!」



現代の司と比路

「ーーー・・・ッ。」

そんな昔の思い出は、流石の司でも恥ずかしかったようで顔を赤くしていた。
なかったことにしたいが、もう自分の過去の。
過ぎた話は、もうどうすることも出来ない。
映像はあれで止まったが、当時の続きは恐らくあのまま・・・。
物心が付いたか付いてないかのよく分からない頃の自分の言動が、とても恐ろしいことだと思い知らされる。
比路パパのお気に入りは、自分にとってもブラッククロニクルだったのだ。

「俺の過去にそんなことがあっただなんて・・・。」

そのショックがあまりにも衝撃すぎて、胸を抑えて凹む司。
けど、

「司ー!」

「な、なに!?もう『ちゅうちゅ』はあげないよ!」

「いらないよ!それより今の絶対に誰かに言わないでよ!」

そんな司よりもショックを受けていたのは比路の方。
真っ赤だった顔がより真っ赤にさせている。



二人だけの秘密

「絶対に!絶対に誰にも言っちゃダメだからね!」

必死に司へ言いつける比路。

「朋也にもアッキーにも梅ちゃんにも圭にも恭や他の一年にもだよ!」

「分かった、分かった!」

「それから克也や冥先輩に不良のバカ連中。めぐる先輩や明人兄に豊部長とか二年や三年の先輩たち。あと本田先生や藤堂先生、チロ先生に他の先生、日暮寮長にも絶対に言っちゃダメだからね!」

「分かったから!絶対に言わないって!約束するから!」

それはもう必死の必死。物凄く必死。

「絶対に、誰にも言わないでよ!」

「もー、分かったってば。」

見ていた司はそのおかげで、逆に自分の冷静さを取り戻したのだった。

(わー。ヒロくん耳まで超真っ赤。)



バックアップは大事

「ふふふふふー・・・。」

一方、比路パパは比路に壊されたビデオカメラを回収。
欠けてしまったパーツを見ていて、彼も凹んでいるのかと思いきやそうでもない様子。反省の色もなければ、懲りてもいなかった。

「バックアップはいくらでもあるから大丈夫。代わりはいくらでもあるもんね。」

「な・・・!」

元のデータがどれだったか分からないぐらいに、今の映像もそれ以外の映像もバックアップをとっているようだ。
だからこれだけを壊しても無駄。全てを消せたわけではない。
それを知った比路は当然、大激怒。

「パパのバカバカバカバカ!サイテー!大ッ嫌い!!」

いつの間にか『お父さん』から『パパ』に呼び変えており、怒ったままリビングから出て森家のガレージに戻っていった。

「あぁ・・・。やっぱり現代の比路も我が子ながら可愛くていいね。あんなに顔を真っ赤にして怒ることもないのに。」

「いやいや。ヒロパパいくら何でもやりすぎだから。」



司と比路パパ

「さて、と。司くんも戻っていいよ。ここの片付けは僕がやっておくから。まだご飯食べてた途中でしょ?」

「ヒロパパ来ないの?」

「片付け終わったらすぐ行くよ。デザートも一緒に持って行くから楽しみにしてて。」

比路は(怒って)戻って行ったが、司はまだ残って比路パパと一緒にいた。
けどこれはこれで調子いい機会。
比路パパは司に言いたかったことを話し始める。

「司くんには昔から比路をお世話させちゃってたよね僕ら。ビデオを見返す度に思ってたから、改めて言わせてね。ありがとう。比路に司くんいてくれて良かったよ。」

「え?あ、いや・・・。俺は別にお礼言われることなんてしてないし、今はもう逆でお世話されっぱなしっていうかなんていうか。」

「本当、子供の成長って早いよね。あんなに泣き虫で甘えん坊だったのに。」

それは昔の映像を見ても、ずっと司が比路のそばにいてくれてたこと。
自分らだけで解決出来なかったことは反省するべきであるが、泣き虫だった比路の親として改めて感謝の言葉を送った。

「司くん。何かと迷惑かけるかもしれないけど、これからも比路と仲良くしてね。」



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