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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#32 ど直球発言は罪作り?(2/3)
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ロングホームルーム

しかしその翌日。

「おや?まだ校内を周っていなかったんですね。では今日のロングホームルームの時間を使っていいので相沢くん。澤村くんを案内してあげて下さい。」

「・・・はい。」

担任の藤堂先生の指示により、強制的に圭と関われたのだ。
圭も先生に頼まれたら従うしかないようで、ロングホームルームの時間になると、さっそく恭を教室から連れ出す。
そして校内の案内が、移動教室で授業が行われる特別棟の一階から始まった。

「ここが家庭科室、あっちが技術科室。」

現在、他のクラスは授業中。
だから廊下はとても静かで、歩く二人の足音が目立って聞こえる。
生徒手帳を見ながら前を歩く圭の後をついて行く恭。

「ここが生物室、あっちが科学室。」

けど、そこで疑問が生まれたので、さっそく質問として訊いた。

「なあ?圭、なんか機嫌悪くないか。」

「当たり前だ。自分の時間を割かれて機嫌悪くしない奴なんていないだろ。」

だって教室を出てから、ずっと彼の口調が刺々しくてあからさまに不機嫌な様子だったから。



不機嫌な圭

恭のせいで機嫌が悪い圭。

「貴様のせいだからな。本当、バカは気楽で能天気で羨ましいよ。」

「はいはい、悪かったって。んなに怒ることないだろ。」

ロングホームルームも立派な授業だ。
彼はそれに出られなかったことに対して大変ご立腹。

「土下座して謝ればいいのか?」

「そんなことしても気が済むのは貴様だけだろ。僕が失った時間は二度と返って来ない。」

「じゃあどうしろって言うんだ。」

最初は恭だって素直に謝ろうとしたものの、何を言ってもバカバカと言われるだけで、圭の機嫌は直らない。
おかげで二人しかいないのに、この空気が淀んで悪くなっていく。

「昨日休み時間になる度にB組へ行くからこうなったんだ。これだからバカが考えることは浅はかで嫌なんだ。」

「えっ。」

恭もつられて機嫌を悪くしかけたが、彼がなぜ機嫌が悪いのか。なぜ怒っているのか。それが分かると次第に落ち着けた。



ごめんなさい

「ちょっと待て。ひょっとして圭はアレか。昨日、待っててくれてたのか?」

「・・・・・・・・・。」

「そいつは確かに悪いことしたな。ごめん。素直に謝るわ。」

昨日、圭がずっと待っていたことを知ると、恭はその場で深く深く頭を下げて謝る。
その姿勢はとても美しく正しい角度だった。

「だから謝られても僕が失った時間は戻ってこないだろ。」

けど勝手に待っていたのは圭の方だ。声をかけなかったのも圭の方。
だから待たせたのも声をかけさせなかったのも、恭が一方的に悪い訳ではない。

「オレにはそれしか出来ないから、本当にごめん。」

「顔上げろよ。そんなことされても僕が困る。謝りながら人を困らせるって高度な嫌がらせだな。」

だけど圭を責めなかった。



お詫びとして

「ならこうさせてくれ。圭はオレを許さなくていいから、せめて詫びをさせてくれ。何でもいい、何でもいいから詫びさせてほしい。オレにできることなら何でも言うこときくから。」

許してもらえないのなら、お詫びとして圭の言うことを一つだけ聞くことにした。

「・・・本当に何でも、いいんだな。」

「ああ、ただ一つだけにしてくれよ。」

すると意外にも、その案に頷く圭。
そしてそれは直ぐに決まったのか。
恭に向かって、少し震えた声でこう口にする。

「ならー・・・、ここが何処なのか教えてくれ。」

それは思わず自分の耳を疑う台詞だった。

「はい?」



僕の言うこと

「え?つまりどういうことだ?」

言ってこられたその台詞。
恭はそれに対して、どういうことをすればいいのか、流石に戸惑いを隠せなかった。

「貴様が途中で話しかけて止めるから、ここが何処なのか分からなくなったんだ。」

けど言ってきた彼は、すごく真剣。冗談ではないようだ。

「何言ってんだ?さっきまで生徒手帳見ながらやってたじゃないか。それ確認すればいいだけだろ。」

でも言うことを聞くと言った以上は、どんなことでも従う。
彼が持ってた生徒手帳を取って中を確認すると、

「って、なんじゃこりゃー!?矢印だらけじゃねーか!」

校内案内図のページには矢印がいっぱい。
あっちからこっち。こっちからあっちに全部違う色のペンで書き加えられていたが、あまりの量にこれでは何処に何があるのか。今は何処にいるのか分からなかった。

「なんで圭の生徒手帳こうなってんだ?これ自分で書いたんだよな!?」

「・・・悪かったな。方向音痴で。」



なんでも言うこときくって言ったので

初めて知った圭の方向音痴ぐあい。

「こんなのオレでも分からん。」

「今、何でも言うこときくって言ったよな。」

「オレに出来ることならって言わなかったか?編入してきたばかりなのに訊かれても答えられる訳ないだろ。」

それには引くモノがあったが、でも詫びたい気持ちは変えない、変わらない。

「ならマズイじゃないか。このままでは教室に戻れなくなるだろ。」

「いや。それなら今来てた道を戻ればいいだけだから簡単だろ。」

「・・・そう、なのか?」

だからもう一度、改めて訊く。
恭が出来ることで圭が言うことを聞かせたいこと。

「なら、頼めるか?」

「ああ。それぐらいならお安い御用だ。一緒に戻れば迷うこともないだろ。」



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