日曜日、お昼の1時を過ぎた午後。 比路が部活動の朝練から帰って来る。
「ただいまー。」
「おかえりー・・・。」
「はあ!?まだゲームやってたの?」
「イエス☆」
「そこはイエス☆じゃないでしょ!」
そして司は昨日の夜から、こんな時間まで、ぶっ通しでゲームをやっていたのだ。 もちろんそれは朝、部活に行く前から、その様子を見てたし変わってない。
「だって仕方ないじゃん、最近のゲームってやり込み要素多いから。買ったらなるべく、その日のうちに。やれるだけのことはやって進めておきたいじゃん。」
「気持ちは分かるけど、だからって・・・。」
「さて・・・っと。やっとキリついたから、一旦寝る!おやすも〜。」
だが、それもようやく落ち着けたところで、ここから司はお昼寝タイム。 うーんっと伸ばした体で、ゆっくりのそのそと。 自分の段のベッドに行かず、比路の段のベッドへ。
「おやすみー・・・って、なんで僕のところで寝るの?」
「だって俺のとこ、物置きすぎて寝るスペースなくなったから。」
「ゲームしてる時間あるなら、ちょっとは片付ける時間も作って!」
ゴロリとごろんっと寝転がり、これにて寝る準備は万端。ー・・・かと思えば、
「ん。」
「ん?」
「ん!」
「え?何?その手。」
寝転がった体制で比路を見て、両手を広げて。 主語も述語もなければ、台詞にすらなってない「ん」だけを言い続ける。
「えっと、僕も一緒に寝ろってこと?」
「ん。」
「え〜。僕は別に眠たくないんだけど。」
「ん。」
「それにせっかく早く部活終わったんだもん。僕だってみんなと遊びたいし。」
「ん。」
たったそれだけの言葉を、ふむふむ解釈する比路。 たったそれだけの言葉で、こいこい呼ばれても・・・と。 司か、みんなか。 揺れる心の天秤。
「ん〜・・・。」
「もう分かったから。司が寝るまでの間だけだからね。」
けど結局、のそのそ自分も司の隣へ。 寝転がった途端、司の腕にガッチリホールドで捕まり、彼の抱き枕にされてしまう。 すると、その時。
「ん?」
比路から香った石鹸の匂い。 それが鼻に届いた途端、嗅ぎ慣れなかったその匂いに、司は違和感を覚えて問いただす。
「・・・ヒロ。ひょっとして、シャワー浴びてきた?」
「え?うん。今日も稽古でいっぱい汗掻いたから、道場でシャワー浴びてから来たよ。常備置きしてる克也から色々、貸してもらって。」
「ふーん。」
そこで何の不満を抱いたのか。
「・・・俺が猫だったら、今のヒロを気が済むまで毛繕いしてそう。」
「は?何いきなり、変なこと言ってんの???」
それは寝惚けているのか。本気で言ってるのか。 比路にも分からないし、言った本人もよく分かってない。 でも声のトーンが、笑ってなかったのも確かだった。
「はいはい、ヒロくんも、ここでおねんねしようね〜。」
「だから僕は寝ないってば。」
しかしそこにはお互いに多くは触れず。 比路は司の枕にされながら、ポンポンと。 慣れた手つきであやされ続けられた結果ー・・・。
「ん・・・。」
こくこく、うとうとと。 眠たくなってきて、体の力が蕩けるように抜けていく。 そして司よりも先に夢の中へ。
「むにゃむにゃ・・・。」
「早っ!」
大事に比路を腕にしまったまま、司も続くように眠りついたのだった。
「おやすみ、ヒロ。」
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