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 僅かな冷静さを掻き集め、ハルナは一呼吸置いて同じ質問を繰り返した。スズヤの答えは簡潔だった。「前代未聞の大問題だから、今こうやって謹慎食らってるんだよ」聞いた俺が馬鹿だったとしか言いようがなかった。
 若さゆえの暴走だ。そんな風に説明され、納得できるかと言いたくても実際にそうなってしまったのだから、反論しようがない。ナガトとアカギ。あの二人は伸びしろがある分、手に負えない。

「……隠し通せるものでもないだろう。そのうち、全隊出動なんてことにもなりかねないぞ」
『そんな悪いの? とはいえこんな失態を上に報告したら、うちの艦長の首が飛びかねないからね。他プレートに全隊出動なんて、それこそ前代未聞だし』
「本部には報告しているはずだが、情報が回ってないのか?」
『ほら、おれ達一応そっちに行ってることになってるから。あんま情報回ってこないんだよね。でもチトセちゃんとかマミヤちゃんから聞く限りは、それなりにごたついてるらしいよ。陸軍を出すかどうかで相当揉めてる感じかな』

 聞き慣れた下官の名前に反応しかけ、ぐっと唇を噛みしめてこらえた。

「……連絡を取っているのか」
『ていうか二人とも部屋に遊びに来るし。おれ達のことは公然の秘密だからねー。ナガト達の件にはあの事故が絡んでるせいか、基本は同情的な意見が多い。結構寛容だよ』

 机仕事のお偉いさんは知らないけどね。
 付け足された言葉の刺々しさに、思わず鼻の頭にしわが寄った。ああもう、どうしてこうなった。

「陸軍が出るなら、当然緑地警備隊が動くんだろう?」
『そこ出さずにどうするのーって話でしょ。ヒエン一佐はやる気満々みたいだよ。緑地警備隊が出る以上、混乱は避けられない。そのあたりをどうするかで連日の会議って感じかな。現場を見てものを言えって話だね。……そうだ。ハルちゃん、お願いがあるんだけど』
「なんだ」
『艦長とも話してたんだけどさ、あの二人を失うのは惜しい。任務地が違うからどうしようもないってのは分かってる。分かってるんだけど、できる限り、面倒見てやってくれない? ……おれも、そっちに行けるように動いてみるから』

 真剣な声音なだけに、彼らの班がどれだけあの二人を思っているのかがよく分かる。あの二人は学生気分がまだまだ抜けない、未熟な隊員だ。だがそれだけに、彼らはまだ天井を知らない。育て上げればその分伸びる。
 それくらいは、見ていれば分かった。

「…………定期的に連絡を取るくらいしかできん。奴らが俺の忠告を聞く保証もできん。それでもいいか」
『――十分だよ。ありがとう、ハルちゃん』
「その呼び方はやめろ、気色悪い。それより、お前の方は大丈夫なんだろうな」

 入隊以来の付き合いの友人は、一瞬だけ間をあけて小さく笑った。

『ふーん? なんだかんだで心配してくれてるんだ? 優しいじゃないか。さすがだね、ハルちゃん』
「茶化すな! もういい、お前なんぞ知るかっ!」
『ちょ、待って待って。ごめんって。――おれ達は大丈夫だよ。大丈夫なように動いたんだ。査問会の予定も今のところないしね。ま、これから先どうなるか分からないけど』

 なにを言おうか迷っているうちに、下官がハルナを呼ぶ声が聞こえてきた。向こうにも届いたのか、スズヤが「そろそろ行ったら?」と声をかけてくる。


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