▼18
トントンっとノックした後、男は声を上げる。
「こんばんわ、どちら様ですか? 頭に言われて捕まえた女の一人を連れてきた攻児です。それはよーいらっしゃいました、お入りください。ありがとう」
(……なにそれ……)
「やかましい、俺流の挨拶や!」
扉をノックした後、開けるのかと思いきや、独特の挨拶を始めた男ー攻児に、思わず呟いてしまう。攻児は、漸く扉に手をかけて奥に押すと、重たそうな扉は軋みながら開いた。
「お〜ぉ、攻児! 待っとったでぇ〜」
扉の奥から顔を出したのは、でっぷりと贅肉を蓄えたおデブの頭。その顔は緩みきっていてますますブサイクに拍車をかけている。
華はその姿に思わず息を止めた。そんな 華に構わず、頭はその揺れるほどお腹についた脂肪を持ち上げながら立ち上がるとこちらに歩み寄ってくる。 華は思わず後ずさった。
「ん〜? なんや、この女」
「女がもう一人おったんですが、キーキーやかましかったんでこっちの女、連れてきました。喋れんそーですよ」
品定めするように、華を上から下へと舐めるように見つめる。 華は居心地の悪さに思わず身震いした。
「せやけど、着とるもんは男もんやで?」
「多分、女ですよって」
頭の手が華の腰を撫でた。びくりとそのいやらしい手の感触に思わず逃げ出したくなる衝動に駆られたが、後ろから攻児に捕まれそれは叶わない。
「気ぃしっかりもちや」
嫌悪感を露わにした顔で攻児は華の耳元でそれだけつぶやくと、頭に挨拶をして出て行ってしまった。無情にも閉まってしまった扉。男装しているとはいえ、触られると男と女では身体付きがまるで違うため、ばれてしまう。綺麗に服の下で括れた腰を撫で回されながら、華はどうやってこの場を切り抜けるかを模索した。
「お前、女やな」
唐突に手が止まり、頭がこぼす。
「喋れへんのやったら、叫ぶ事もないちゅーことや。諦めておとなしゅうしときー」
(ちょ、ちょっと待って!)
心の中で叫ぶと、ピタリと今、まさに華を後ろに押し倒そうとしていた頭の手が止まった。
(私、しゃべれます! それに男! 男なの!)
「けったいな技使うんやなぁ〜益々気に入ったでぇ」
頭は、さらにでれっと破顔させると華の服に手をかけた。
(ちょっ……、だから、私喋れるんですってば!)
完全に女と見抜かれてしまっているようで、男の主張は通らなかった。仕方なく、煩い事をアピールするが、頭はどこ吹く風で意気揚々と華の服をはだけさせていく。
(叫ぶわよ!!)
「叫んでみぃ、誰も助けにはこんで〜、それに、ちょっと抵抗された方が男は萌えるんや」
(意味わかんない……!)
しょうがなく、華は足を上げた。贅肉を蓄えたその出っ張った腹を蹴り上げて間合いを取ろうとしたのである。しかし。
「やる気満々やな〜」
その足を捕まれ、未だに服を身につけたまたの下半身を拘束されてしまった。すでに上は半脱げ状態で、胸に巻いたサラシががっつり顔を出している。
(違う! 違うったら! 離して!)
もがけばもがく程、服が乱れていく。けれど、華は止める事は出来なかった。その時、美朱につぶやいた言葉を思い出して、ぴたりと動きを止める。頭はその異様な様子に気づいたようで顔を覗き込んできた。
(あの……身体に字、持ってる人……しりませんか……?)
「字ぃ? ……聞いた事あるなぁ」
(本当ですか!?)
「お前がおとなしゅう、言うこと聞くんやったら教えてやってもええでぇ?」
華は顔をしかめた。足元をすくわれてしまったのである。ここで暴れて、このデブを攻撃してしまうと、七星士の手がかりが途絶えてしまうのだ。華は歯を食いしばると、全身の力を抜いてその場に横たわった。
頭がひどく嬉しそうな顔でのしかかる。
「ええ子やぁ」
頭を空っぽにして、華は何も考えないよう、感じないよう意識をそこから背けた。そして、置いてきてしまった井宿達の事を思う。
この役を美朱がやらなくてよかった。そう思った瞬間。頭の手が華の胸を鷲掴みにし、一瞬で頭に嫌な光景が流れ始めた。
いるはずのない、死んだ母がそこに横たわっているように見えた。のしかかっているのは、己の父。
華は、恐怖に駆られて小さく声を上げた。
(……ゃ……っ)
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ほぼ無意識に出された、華の悲鳴。喉からそれは飛び出した。あの時と同じ。悲鳴だけ。すると、その声に弾かれるように扉が壊れて吹っ飛んだ。
「そこまでなのだ!」
「華ちゃん!」
怒ったような顔をした井宿の後ろから、美朱が飛び出し、床に転がった華に抱きつく。頭は飛ばされた扉の下敷きになって伸びていた。
「こいつ……一度殺さないと気が済まないのだ……」
舌打ちと共に、井宿がこぼす。隣にいた柳宿が落ち着かせるように彼の肩を叩いた。
「殺すのはマズイじゃない? だったらさぁ……」
伸びていた頭の頭をホールドする。美朱に抱きしめられたまま華はそちらを見ると、にっこりと笑って頷いた。柳宿はウィンクをすると、すかさず腕に力を込める。柳宿の怪力に締められた頭は、痛みに意識を浮上させ悲痛な叫び声を上げた。
その瞬間。嫌な悪寒が背筋を走り、思わず華は抱きしめてくれていた美朱を井宿の方へと突き飛ばした。






攻児のセリフ、実は手元に漫画がなく(外で書いてた為)記憶を頼りに書いたので、、、間違ってるかも……すみません……



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