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(私の父は途方もない浪費家でした。暇さえあればパチンコへ行き、ギャンブルに行き、毎日多額のお金を借金しては使い込んでいました。そんなある日です。等々首が回らなくなるほどの多額の借金を抱え込んでしまった父は、人が変わったように私達に暴力を振るうようになりました。いつからだったかは、正確には覚えていませんが、小さい頃、気付いた時にはそうなってしまっていました。人には見えない場所を殴ったり蹴ったり……、毎日が地獄のような日々でした。元々、身体の弱かった母はますます病気がちになり、健康体だった私も、そのせいか身体が弱くなり、幾度となく肺炎を起こして病院を出たり入ったりするようになってしまったんです。けれど父は暴力をやめなかった。そして、3年前の事です。家に帰ってみれば、母はリビングで倒れていました。……強姦……といえばわかるでしょうか……その後のような現場で、母はほぼ服を着ていない状態で倒れていました。傍にいた父の様子を見て、これをやったのは父なのだ、と把握した瞬間に、逃げようとしたのですが、父に辞書を投げつけられて、頭を打って転倒し父は、私も母と同じように……。この腕の痣はその時に出来たものです。そして、母はその行為に耐えきれなかったのでしょう。私を置いてその二週間後に死にました。その頃、声が出なくなったんです)
華はそこまで話すと、井宿から少し距離をとった。
(父は刑務所に服役中です。出てくる事はほぼないと言われました。私は、母が死に、声を失ってどうすればいいかわからなくなってしまった……それから、消えてしまいたいと思うようになったんです。付き合っていた彼氏も遊びだったようで、その事件が起こった次の日に別れを告げられました)
その日の出来事が頭の中に蘇る。倒れた母。気が狂ってしまったのか、ふらふらと目線を彷徨わせる父。そして、元彼。華はどうして私の人生がここまで壊されなければいけなかったのか悔やんだ。そして同時に、男の人が恐ろしくなった。
でも、それも『消えてしまいたい。誰かの犠牲になって』という願いが出来てからは緩和された。
(唯一の救いだったのが、美朱と唯です。あの二人がいたから、私はその誰かの犠牲になって消えたい、とおもうようになりました。しゃべれなくなり、筆談とジェスチャー、そして簡単な手話でしか話はできませんが、それでも二人は私のそばに居てくれた。けれど……、二人は敵対してしまった。私はまたどうしたらいいのかわからなくなってしまったのです……)
「水を差すようで悪いのだが……」
一気に喋り、体力を消耗した華が休憩するように話を止めるとおずおずといった様子で井宿が口を挟んでくる。華は首をかしげ、何かミスでもしてしまったかと頭の中で記憶を辿るが思いつかない。
井宿は、恥ずかしそうにはにかんだあと、ぽりぽりと頭をかきながら
「所々ちょっと理解できない単語があるのだ……」
そう言ってこうべを垂れた。
(え!? あの……差し支えなければどれか教えていただけますか……?)
「ぎゃんぶる? とはなんなのだ? あと、びょういんとやらもよくわからないのだー」
(なるほど……こちらの世界にない言葉、建物ということですね……えと……じゃあ最初から説明を……)
「華ちゃん!」
説明をしようとした矢先に、美朱が乱入してきた。その目はどこか使命感に輝いている。
「七星士探しに行くの!」




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