007


「…ッ、てェ……何なんだあのアマ」

この俺を蹴り飛ばす女は初めてだぞ、と一人呟く彼の言葉は、既にチャイムが鳴り教室内に生徒を吸収されたシンとした廊下に虚しく響き渡った。

「クク…まぁいい。見つけたぜ」




ロックオン





「綾瀬ちゃん、大丈夫だった?」

一体何がどう大丈夫なんだとポニーテールの少女を一瞥しつつ誰だっけ、と頭のすみで考える。
まさか「あなた誰」なんて聞いたらあたしの命はたった30秒先にも消え失せていそうなオーラを持った少女(憶測)なので、そこは空気を読んで適当に頷く。
ホント人の顔と名前を覚えるのが不得手。
…いや覚える気無いだけなんだけど。


「とりあえず綾瀬がまだバージンで良かったアル!」
「え、あたしバージンなの?ていうかなんなの一体、さっきのスカメン(スカした野郎の略)の事?」
「歩く全身男性器よ」


にっこり笑う彼女が嫌に恐ろしかった。
敵に回すべからず。みたいな。


「ていうか…先生いるし、チャイム鳴ってるし…あたし昼寝したいし」
「あら、痔持ちなんて放っておきなさいよ、皆だって好き勝手やってるわ」

言われて見ればクラス中雑誌や漫画を読んでたり、教師はジャンプを読んでたり(ケツをさすりながら)、誰かのジャージの匂いを嗅いでるゴリラっぽい人がいたり
「なにさらしとんじゃこの変態ゴリラァァァァ!!!」
「あべし!!」

かと思えば王子っぽい人と牛乳瓶底眼鏡のちんちくりん女子が乱闘してたり、ハムみたいなハムが爪磨いてたり。


やかましいクラスではあったが、なかなかファンキーな光景だなとぼんやり考えながら欠伸を一つ漏らした。






どこでも寝られるから割りとどうでも良かったりしたのだが。

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