チーム紅一点のナマエが硝煙と血の臭いをさせながらアジトへ帰ってきた。
リビングで書類を読んでいたリゾットが出迎える。

「ご苦労。首尾は?」

「ターゲットは今頃海で鮫とダンスしてるわ」

ナマエは一言報告を済ませると服を脱ぎながらバスルームへ向かった。

「ナマエ、ここで脱ぐんじゃないといつも言ってるだろう」

「ねぇ、私の下着って乾いてる?」

「俺の話を聞け」

既に下着姿のナマエの背中を見詰めながらリゾットは溜め息をつく。

「リゾット。私の下着は?」

「……乾燥機の中にある」

最早ナマエと会話することを諦めたリゾットが書類に再び目を落とした時、ナマエがバスルームから上半身だけ出して言った。

「あ、ねぇ!アモーレが帰ってきたら教えてちょうだい」

「は?」

今、アモーレと言ったのか?とリゾットが顔をあげたので既に下着を取り払ったナマエの豊かな胸をばっちり見てしまう。
脱いでもすごいな、と下世話なことを一瞬考えているうちにナマエはバスルームへ消えた。

「……アモーレって誰のことだ……」

リゾットはもう書類どころではなくなっていて、落ち着かない様子で立ち上がりリビングをうろうろと歩き回る。
自分に言うということは自分は対象ではないこととチーム内の誰かだということにダブルでショックを受ける。
そこにソルベとジェラートがアジトへ戻ってきた。

「……いや、お前たちではないだろう……」

「何だよ唐突だな」

「何が俺たちじゃないんだよ」

リゾットが理由を話すとソルベとジェラートは互いに顔を見合わせる。

「俺のアモーレはジェラートだけだぜ、今のところな」

「俺も今のところ、アモーレはソルベだけだな」

距離が近い二人を今更つっこむ気にもなれない。
ソルベの膝の上に座るジェラートが話を続けた。

「可能性から言って、ホルマジオかプロシュートが妥当だろうな。ナマエとも仲がいいし並んでてお似合いだ」

「意外性で言うなら、イルーゾォかギアッチョだ。ナマエはあの二人をオモチャみたいにしているがそういうタイプなのかもしれない」

ソルベもそれに便乗する。
リゾットが残りのメンバーの名前を口にする。

「ペッシとメローネは?」

「ナマエがマンモーニのペッシを相手にするとは思えない」

「メローネは論外。ナマエの生理周期把握してんのバレて回し蹴りされてただろ」

「ただいまー!……ん?何か今俺の話してた?」

メローネとギアッチョが帰ってきた。話し声が聞こえてたのかメローネが3人に視線を向ける。
ギアッチョは黙ってバスルームに向かったが、ナマエが入っているとリゾットに言われると舌打ちしてソファーへ座った。

「メローネはいいや」

「ギアッチョ、お前か?」

「あァ?何の話だよ?」

ソルベとジェラートがリゾットに代わって尋問する。話を聞き終わったギアッチョが盛大にキレたのでナマエのアモーレは彼ではないことが解った。

「リーダーでもねぇのかよ」

「俺が真っ先に頼まれたからな」

「ねぇ何で俺には聞かないの?」

「お前は絶対にない」

「聞くだけ無駄だ」

「リーダー!ソルベとジェラートが苛める!」

「俺もお前はないと思う」

「……ギアッチョ!!」

「ウルセー!お前だけは絶対ねぇから!!」

「ひっど!!!!!!!!!!!!!!」

「おいおい、外まで声聞こえてんぞー!」

「騒がしいな……」

「ホルマジオ、イルーゾォ〜!!」

「うわ、何だよ!?涙と鼻水が服につくことは許可しないィィ!!」

ホルマジオとイルーゾォが帰ってきたのを見たメローネがふたりに腕を広げながら駆け寄った。前にいたホルマジオがさっと避けたのでイルーゾォがメローネに抱きつかれた。イルーゾォはそれを必死に引き剥がそうとする。

「ナマエのアモーレがこのチームの中にいるらしい……」

「ハァ!?だ、誰だ!?」

「何だ……イルーゾォも違うんじゃん」

イルーゾォの反応を見たメローネがつまらなさそうにパッと体を離した。

「じゃあホルマジオか?」

「だったら良かったがな……残念ながらハズレだ」

冷蔵庫からコーラを取り出して飲んでいたホルマジオが肩を竦めて首を振る。

「じゃあ残るのはプロシュートか……」

「一番妥当な線だな」

「妥当というよりも当然だな」

「クソッ!あのジジイ、ナマエに手出しやがったな、クソッ!」

「ねぇ何で俺は絶対にないの?理由は?」

「自分の胸に手を当てて聞いてみろ」

「しょうがねぇなぁ。プロシュートたちもそろそろ帰ってくんだろ」

ナマエが風呂から上がったらしい音がする。ドライヤーの音に混じって鼻歌が聞こえた。そんなナマエの様子からアモーレの帰りを楽しみにしていることが解る。

「帰ったぜー……あ?何だよ、俺の顔に何かついてんのか?」

ペッシと共に帰ってきたプロシュートの顔をソファーに座っていたメンバー全員がじっと見つめた。

「プロシュート、聞きたいことがある」

「あァ?何だよ、改まって」

「ナマエのアモーレとは……」

「アモーレ!お帰りなさい!」

リゾットが追求しようとしたところにバスルームからナマエが飛び出してきた。
ああ、やっぱりプロシュートじゃねぇかとメンバーは呟くが、プロシュートの前を通りすぎてナマエが抱きついたのはペッシだった。

「ああ!アモーレ!逢いたかったわ!任務お疲れ様!怪我はしてない?ああ!任務明けのあなたってすっごくセクシーだわ!」

「そ、そんなことないよ、ナマエ……」

「謙虚なアモーレも好きだわ!」

ペッシに抱きついてチュッチュッとキスをするナマエを唖然と見つめるメンバーにプロシュートが尋ねる。

「で?何が俺なんだ?」

「……ナマエのアモーレが誰かって話していたんだ。それでお前だろうと」

「ハッ!人前で恥ずかしげもなく裸になる女なんざ趣味じゃあねぇな!」

プロシュートが一笑して煙草に火を点ける。

「私だって、女より綺麗な男の隣に立つなんて真っ平ごめんだわ」

ペッシの腕の中で舌を出してナマエも悪態をつく。

「ナマエ……」

「なぁに?アモーレ。あぁ!違うのよ。あなたが綺麗じゃないとかそんなんじゃあないの。あなたは世界一セクシーでキュートよ!」

「……違うよォ!その、みんなの前でまた脱ぎながらお風呂に入ったのかい?」

「あ、えっと……」

「みんなじゃない。俺だけしかいなかった」

「あ、バカ!!」

「えーリーダー!ズルい!!」

「全部見たわけじゃあない。一瞬胸が見えただけだ」

「おいおいおい、マジかよ」

「ごめんなさい、アモーレ!もうやらないわ!」

「……まだ信じられないんだ。だってナマエはこんなに美人なのにオイラの恋人だなんて。自信がないのは駄目だって解ってるけど。でも、その、はだ、裸とか誰にも見せたくないよ」

悪いのは自分の方なのに、それでも謝りながらしっかりと嫉妬してくるペッシを見上げながらナマエは今世紀最大の胸キュンをした。

「オイラ、着替えてくるよ」

ぽやっとしているナマエの額にチュッとキスしてペッシが部屋に行く。
その後ろ姿を見詰めながらナマエは両頬に手を当てた。

「……ヤバ、カッコいい……」

「当たり前だろーが!誰が育てたと思ってんだ?俺のペッシは最高だ」

「あんたのじゃないわ、プロシュート。私のアモーレよ」

プロシュート以外のメンバーは一体俺たちは何を見せられたんだ?と不毛な時間を悔いた。


君にくびったけ

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