「だぁかぁらぁ!今週フーゴとデートするのは!私!私なの!」
「いーじゃん、別に。三人でも。ねー?フーゴ」
「……さっきから言ってるけど僕はこの書類に目を通さくっちゃあならない」
「それが終わったら、ね、私とデートして。ね、お願い」
「ズルいズルいズルい〜!」
執務室で繰り広げられるフーゴをめぐるエルダとルナのキャットファイトにジョルノは端から無視を決め込み、ミスタは歯軋りをして、イルーゾォは赤くなった頬を擦っている。
向かい側のソファに座ってその様子を見ていたアデレードはやれやれと肩を竦め、テーブルの上に置いてあるティーポットに手を伸ばして自分のとフーゴのカップに注いだ。
フーゴとアデレードの視線がぶつかる。
フーゴの助けを求めるような視線にアデレードは微苦笑しただけで何も言わずにカップを持ち上げた。
エルダもルナも美少女である。フーゴもまだ若い。沢山恋をしたら良いし、イルーゾォはもう少し態度を改めた方がいい。
すがるような視線も虚しくアデレードにかわされたのが解ったフーゴは出そうになった溜息を紅茶で流し込む。
そこに二人分の足音が近付いてきて、執務室のドアをバンッ!と勢いよく開けた。
「アデレード、今夜一緒にチェーナを食べないか?いい店を見つけたんだ」
「オイオイオイ!ブチャラティ、何言ってやがる。アデレードは今夜俺とディナーだ」
ブチャラティとプロシュートが入ってくるなり、アデレードの座るソファの後ろで言い合いを始める。
「海のそばなんだが今夜は月も綺麗だ。美味いワインを出すぜ」
「海なんかより夜景を見ながらの方が良いだろ?グランドホテルのコースだ。アデレード、好きだろ?」
「最高の夜を君に用意すると約束しよう」
「愛する女がいればそれだけで最高の夜になる」
「……邪魔するな」
「テメェこそな」
アデレードを真ん中にしてブチャラティとプロシュートがソファに座り、彼女の手のひらと髪の毛にそれぞれキスを落とした。
それを向かいのソファから見ていたフーゴ、エルダにルナ、イルーゾォは面食らったように黙って見ている。
歯軋りをしていたミスタが堪えきれなかったように舌打ちした。
「何で男同士のキャットファイトまで見なきゃなんねェんだよ!」
ミスタの叫びも虚しくアデレードを誘うブチャラティとプロシュートの甘い言葉が止まることはない。
アデレードはと言うと二人を気にするどころか表情ひとつ変えずに紅茶を飲んでいる。
「アデレード」
「アデレード」
ブチャラティとプロシュートが痺れを切らしたように彼女の名前を甘く切なく呼ぶ。
アデレードはかちゃり、とカップをソーサーに置くとやっと口を開いた。
「……三人で出掛ける?」
「「それはダメだ」」
アデレードの提案にブチャラティとプロシュートが声を揃えて仏頂面になったのを見たエルダとルナは思わずくすりと笑ってしまう。
「それじゃあどちらも無しよ。今夜は先約があるの」
「先約?」
「誰とだ?」
「貴方たちに教える必要ある?大切な人よ」
それじゃあね、とアデレードは二人の間を立ち上がって執務室を出ていく。
「……アデレードの約束……って」
「実家に帰ると言ってましたからね、家族かな」
ミスタとジョルノの会話を聞いていたブチャラティとプロシュートはそれでは勝てないなとソファの背もたれに頭を預けて深々と溜息をついたのだった。
なんて愉快なお茶会事件
-三つ巴編-
恋のダイヤル6700
ルナ→フーゴ←エルダ←イルーゾォ
ブチャラティ→アデレード←プロシュート