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私は電話を切り、理事長の部屋を探した。見つけた部屋には小綺麗な二人の男がいた。老いている方が理事長だった。若い方は補佐役らしい。
話を付けるのにあまり時間はかからなかった。そもそも病院側に大したリスクはない。それで大金を詰めば良いだけだった。

「少女の素性は決して探らぬように」
「承知した」
「巻き込まれればあなたは全てを失う。ただ、沈黙を守り傍観すればなんのリスクもなく金だけが手に入る」
「…確かかね?」
「あの子は危険から保護されている、あの子に迫る危険に情報を与えなければ良い」
「それで、取り引きする物はいつ…私の手元に来るのかね」
「今日の昼にも」
「良いでしょう…、では、少女の名前は何にするかね」

舜巡して、私は答えた。

「貴方が決めて下さい。貴方の周りにいる人間や貴方が贔屓している人間の名前ではなく、当たり障りない物を」

いくら自分と関係の無い名前をと選んでも、そこに私の意識が介入すれば私の痕跡が残る。この男に選ばせる方が危険が少ないだろう。
理事長は頷いた。

「では…名字は末次、名前は涼しい子と書いて涼子」

私は了承して理事長室を出た。
警官とも話を着け、処置を受けて病室に運ばれたリツカの元に行く頃には昼を過ぎていた。
個室に入るとリツカは人工呼吸機に繋がれ、男はベッド脇のパイプ椅子に座っていた。私が入ると男は私を振り返った。

「看護師たちに名前を聞かれたので、俺は本名を言い、リツカとは他人で出くわしただけだから名前は知らないと言った。それで良かったか?」

辻褄合わせをしていなかったが、私が予測した通りこの男は最良の選択をしていた。

「この少女の名前は末次涼子、私は彼女の父だ」

男は了承の旨を言った。
私たちは沈黙し、ベッドに眠るリツカを見ていた。櫛を持った手はぐるぐるに包帯を巻かれていた。
男の方から沈黙を破った。

「…ルシファーは?」
「連絡が付かないので少年が直接行っている」


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Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN






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