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その瞬間、私は櫛と箱をつなぐ、不自然な糸を見た。私は咄嗟にリツカから櫛を奪おうとしたが、既に遅かった。糸が櫛から取れ、その先に小さなピンが付いているのを確認した。反応の遅れた私はピンの外れた櫛を持ってるリツカが「あっ」と声を上げるのを見るしか無かった。リツカは櫛を取り落とした。落ちる櫛は、既に姿を変えていた。全てがスローモーションのようだった。
リツカの手は既に血塗れだった。リツカが床に落とした櫛は、繊細な模様を打ち消し、奇妙な棘だらけの物体になっていた。女が悲鳴を上げ、私と男がリツカに手をかけた。

「…痛いっ…」

リツカの傷付いた手は震え、もう一方の手で手首を押さえた。私は包装のリボンを取り、リツカの腕に巻いて止血した。

「毒だ」

床にしゃがみ込んだ男が櫛を観察してそう言いった。私はリツカの手を持ち上げて傷に吸い付き、吸い出した血は床に吐いた。リツカの手は穴だらけになっていて、完全に吸い出せるとは思えない。

「車を用意しろ、私が運転する」

私が言うと男は直ぐに立ち上がって、リビングを出た。

「リツカを外に出すの!?先生に聞かないと!」
「連絡しながら行く」

私は一通り吸い出したが、出血が止まらない。私はリツカを横抱きにして立ち上がった。

「先生の病院は駄目よ、リツカが見つかって殺されてしまう!」
「わかっている。顔が知れてまずい貴女は家にいるんだ」

女は言う事を聞き、リビングを飛び出る私に付いて来はしなかった。

「あの櫛に素手で触るな。少年を起こして処理させろ」


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Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN






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