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思い返せばそれは今この瞬間に生まれた物ではない。
私は何故、誰かがリツカのそばにいないとわかると探すのか?殺されていないか心配だからだ。
何故、リツカに酒を与える人間に憤りを覚えるのか?リツカの健康に害を与えているからだ。
何故、リツカの貞操を気にするのか?リツカが穢される事が憎いからだ。まるで父親のように。
そう、父親のように、この少女が愛しいからだ。
私はリツカの露出している白い肩に、出来る限り優しさを込めて手をかけた。うまくいったかはわからない、一度も人に優しくしようと思った事がないからだ。
「リツカ」
「…何」
何と聞かれては、困ってしまう。
私は肩から手をのけた。
泣かせてしまった人を、泣き止ませるにはどうすればよいのかわからない。
「リツカ、君が愛されていると思っている物の全ては、性欲だ。君を愛していると言って、その身体を求めていない人間がいないだろう」
「…それの何がいけないの」
「それでいいのか」
「いい。何が言いたいの」
忠告したかっただけだ。手に入れた気でいる物が、違う物だと気付き落胆させないように。しかしリツカは気付いていたようだ。リツカは変わらず泣いて、肩が乱れた息をする度に揺れている。
「リツカ…」
「…」
どうすることも出来なかった。
「すまなかった、泣くのをやめてくれ」
謝る事以外。
リツカはようやく、顔を私に向けた。涙で目元が濡れている。私よりも遥かに困惑しきった顔で私を見ている。そんな顔をしないでくれ。
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▽ Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN