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「…寝ないのか」

私は呆れて言ったが、リツカは聞く耳をもたなかった。それどころか目の前で立ち止まったままガウンを脱いで、薄いキャミソール姿になって肌を晒した。
何をしているんだ、とは思ったが、質問しては面倒な返事が返ってきそうだ。私はリツカの目を捉えたまま呆れた視線を投げ付けるだけに留めた。
しばらく視線を合わせたまま、お互いに黙っていたが、リツカは視線を落として話し始めた。

「私、自分が綺麗な事を自覚してる、それも美術品としてより女として」

何故こうも突然なのだろうか。寝てはどうか、と言って部屋を移っただけしか行動していないのに、この話の起点が全く想像出来ない。さっきリツカが手に取った本に関係があるのだろうか。

“彼女の倒錯した哲学は酷く出来の悪い叙情だった”

「…ルシファでもベルでも理性で仕舞い込んでいるけど、気を抜いた一瞬に私を男の目で見るのに…あの二人ですらそうなるのに、レヴィは一瞬もない」

リツカは私に今、興奮しろと言うのか。それは無理な話だった。

「この容姿を持ってしても人に好かれなかったのは初めて…レヴィはゲイなの」

リツカは昼間に見せた、あのない交ぜになった表情を見せた。質問に答えないと、何かが起こりそうだった。

「今までそういう事に興味を持てた事がないだけだ」
「人を好きにならないの」

私は答えを言い淀んだ。答えないのは答えがないからでも、教えたくないからでもない。それが“私”だったのだ。
しかし、何故か答えないわけにはいかなかった。先生が私に与えた規律はここまで私をリツカに甘くなる様に変えてしまったのだろう。

「私は今まで絶世の美女と謳われる女でも、豚の様に醜い男でも、同じ様に同じ価値で殺してきた。私にとってそこには何の違いも無かった」

いつも同じだった。
容姿の違いが一体何なのだろうか。性別の違いが一体何なのだろうか。殺す前にいたぶると同じ様に怯え、死んでしまうと同じ成分で出来た肉塊でしかない。感情とは、何なのだろう。
リツカの言う、人を好きになる、と言う事の意味は、ただの性欲だろう。リツカはそれを愛されていると思い込んでいるのだろうか。

私の答えに、リツカは表情をゼロにした。

「それで、寝ないのか」
「キスしてくれたら寝る」

一体私の答えをどう捉えたのだろうか。

「だったら、ずっと起きていても構わない」


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Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN






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