P 111/151


今日はあまり良い日でない。今夜は私がリツカの寝る部屋を監視する役だったからだ。昼間も面倒を見ていたのに、リツカの事に掛かりきりの1日など、あまりに私の生活を乱しすぎる。
リツカは夜型らしく、なかなか寝ない。先生は今夜も帰らないので、リツカは先生の書斎で本を漁っていて、私も付き合う事になってしまっていた。

「これってドイツ語?」
「…それはフランス語だ」
「何で中身を見もしないでわかるの」
「読んだ事があるからだ」
「そう」

先生はよく、この本は良かったよ、と私に本を薦める事があった。私はそれを全て読んでいてた。この家に来た人間で最も長くここに居る私は、書斎の本を、先生と同じくらい読んでいると言えた。

「私はフランス語もドイツ語もわからない。日本語の本が何であまりないの」

私は読んでいない本がないかと探し、リツカと同じように本棚から本を抜き取っては、ページを捲っていた。
リツカはその内一冊を見つけ、先生の机に座って読み始めた。それは英語で書かれている本だった。

「…pervertってどういう意味」
「“倒錯させる”や“歪める”だな」
「lyricismは」
「“感傷”や“叙情的”だ」

リツカはその本をぱたりと閉じた。

「頭が痛くなる。“彼女の倒錯した哲学は酷く出来の悪い叙情だった”…レヴィはこれも読んだの」
「そうだ」
「面白かったの」
「私は評価しない」
「…じゃあ何で読むの、意味わからない」
「わからなくていい、そろそろ寝たらどうだ」

リツカは時計を見て、持っていた本を棚に直した。寝る気になったらしく、髪を緩く結びながら、直接寝室に繋がるドアから書斎を出てベッドに向かった。寝室と言っても、それは先生の寝室で、先生のベッドだった。
私は本棚から抜いた未読の本を持ったまま、窓側に置かれた一人掛けのソファーに向かった。そのソファーはリツカの夜の監視役の為に設えた物で、横にスタンドライトとスタンドテーブルが置いてあった。私は銃と本を置き、ライトを着けてからソファーに座った。
とたんに私は驚いた。私が通りすぎたベッドにリツカは横になっているだろうと思ったのに、私の後ろに着いて来ていたのだ。


←* | top | #→

Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -