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私が服を脱いで風呂場に入ると、風呂場の真ん中に丸く設えられた湯船に、リツカは入っていた。ただ、まだお湯が三分の一も入っていなかった。そういえば風呂の準備をしていなかった。
リツカは私が入って来る音で振り返った。

「何、もう来たの」
「一人になりたかった?」
「違うけど…早いね」
「ベルが代わりにやってくれたから」

紫色のお湯には泡が浮かんでいて、座って入るリツカのお腹辺りまでの高さになっていた。私が入ると少し水かさが増して、水面が上がった。
リツカの髪も体も、いつも私が洗っていて、リツカはいつものようにスポンジを差し出した。まるで女王様なのに、私はちっとも悪い気がしなかった。

「リツカちゃんは洗われるの好き?」
「…」
「…、どうしたの?」
「考えた事無かった、いつも洗われるから洗ってもらってただけだけど…」
「私は洗うの好きだからいいのよ」
「何で聞いたの」
「リツカちゃんって不思議だと思って」

リツカの腕を洗いながら私はそう言った。リツカは首を傾げた。

「どこが」
「外に行けない事で拗ねたり、サタンとブブの喧嘩を見て笑ったり。笑った顔初めて見たけど、凄く可愛かったわよ」
「私はいつでも綺麗なんでしょ」

リツカは事も無げに呟いた。

「わかってない、リツカちゃん。リツカちゃんの笑顔、凄かったのよ?知らないの?」
「…知らない、誰も何も言わない。マモンも何も言わなかった」
「え、どうしてマモン?皆で見たけど…」
「違う、最初に笑ったのマモンの前だったから…」

今日リツカが笑った時、マモンが何故拗ねたのかわかった。笑顔を見たのが自分だけでなくなったのがつまらなかったのだろう。


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Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN






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