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その時私の肌に、急に寒気がして鳥肌が立った。冷たい空気が私の髪を撫でたのだ。私はすぐに原因を見付けた。部屋の中頃にある大きな窓が開いていて、薄いカーテンをふわふわさせていた。私は窓を閉める為にそこに歩み寄った。
閉めようと窓に手をかけた私の耳に、唐突にリツカの声が届いた。驚いた私は窓から顔を出して下を覗いた。
そこは竹林がすぐ始まっている、この家の庭の中でも地味で日の当たらない場所だった。地面が隆起していて、小さな丘になっているそこは、一階から見れば壁になり、二階から見ると同じ高さだった為、三階のこの部屋からでも、声は近くに聞こえた。
そこには、この前マモンの手によって死んだ暗殺者を埋めて作った墓のある場所だった。竹林の方を二人共向いていて、後ろ姿だったけど、リツカの服が朝と違っている事に気がついた。朝は白いニットの服を着ていたのに、今は黒いサテンのシャツを着ていた。喪服だろう。
積み上げられた石の前に、くたびれた花が手向けてあった。野草の花だろう、この家に花壇はない。
声は聞こえたけど、何と話しているかはわからない。一つ気になったのはレヴィも喋っていて、二人が会話をしていた事だった。普段レヴィは先生とすらあまり話さない。
二人の会話が聞きたくて私は急いで二階に降り、先生の寝室の下の部屋に入った。そこはマモンの部屋で、入口の正面にある窓はこの前から割れたままで、ビニールと布テープで応急措置されていた。その窓に寄り、割れていない一枚を選んで開けた。予想通り、二人の声ははっきりと聞こえた。

「…最後はここに来る少し前。この人、わざわざ社員に殴られる為に私の前に立った。更に怒りを買ったら、護りきれないと思ったんでしょうけど、反撃もしないで私の前に立ってるの。本当は強かったんだ」

レヴィは返事をしなかった。
この人というのは死んだ執事の事だろう。二人は墓を前に故人の話をしていたのだ。


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Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN






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