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「ごめんね、痛かったかしら」
「…い、痛いよ?いや、何?」
「別に殴りたい程怒ったとか、そういう事ではないのよ。渇を入れようと思って」

すぐそこにいるのに見えない響は一度しゃがんでから席に座った。
響は落ちた眼鏡を手に持って話を続けた。

「ねえ、アカリ可愛いでしょ?」
「うん」
「好きなんでしょ?」
「…うん」
「触りたいと思うでしょ?」
「え」
「男になりなさいよ、どうしてそんなに後ろばかり向くの?
確かにあの反応は好意全開というわけではなかったけれど、嫌いだと言われたわけではないでしょう」

テーブルに乗り出して響は舞良を覗き込んだが舞良はそれから逃げるように視線を自分の手に落とした。ピントは合わない。

「言われたようなものだと思う」
「ばかね」

響は舞良の顎に手をやって無理やり視線を合わせるように上にあげた。

「当たる前に砕けないで、脆すぎるわよ」

舞良は何も言わなかったが目の前の響は突然ニヤニヤし始めた。
ちゃんとは見えないが口が笑顔全開だった。

「な、何笑ってるの」
「マイロの素顔久しぶりに見たなって…相変わらずよ。ああ、早くスーツ着せたいわ。
そうよ、私はそれが凄く楽しみなのよ、今さらやめさせるわけがないでしょう」

響はそれから眼鏡を返してくれ、舞良の分まで勝手に注文し始めた。

舞良は叩かれた頬を触ったが昨日の夜に胸を触った時とは真逆に気持ちが向くのがわかった。

「ありがとう…」
「ふふ、当たり前よ友達だもの。私がいるわ、脆くならないで」
「…うん」
「それで昨日どんなメールしたのよ、見せて」

初めて響に会った日に思った事を思い出した。

響はやっぱり魔法が使えるんだなと舞良は思った。


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Dog-ear ??
CINDERELLA STORY






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