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響に連れられて入ったイタリア料理のレストランは新しく、木の壁が香りを放っている落ち着ける店だった。
奥の席に座ってすぐ、パーティーに誘わない旨を伝えると響はメニューを取り落として舞良を見た。
「何よそれいきなり、どうしたの?昨日のメールで何かあったの?」
「ううん、さっき教室に来た時の反応…」
「あ、…あれ」
舞良を見てたんだねと言おうとした響は口を閉じた。舞良の落ち込みぶりが手に見て取れた。
すると急に響は立ち上がった。何事かと舞良は座ったまま見上げた。
「ねえマイロ、ビンタするわね」
「は?」
凄まじい音と共に、昼時で満席だったレストランの客はほぼ全員が舞良達を見た。
全員放心していたが一番意味がわからなかったのは舞良だった。
響の手は小さかったが勢いも威力も激しく、舞良は眼鏡を落としてしまった。
何故、このタイミングで自分が平手で殴られるのか、全く理解出来なかった。
おまけに眼鏡の場所はわからない。
公衆の面前で地べたをペタペタしたくなかったので舞良は眼鏡がないまま響を振り返った。
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CINDERELLA STORY