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「ナリちゃんへの愛」
その瞬間、会場がどっと盛り上がった。
拍手が巻き起こり、ヒュー!と囃し立てる声があちこちで上がった。
全員が何かを言っているように興奮したざわめきが、歓声に聞こえた。
舞良の隣で朱里は口を押さえて、ときめいていた。
舞良もあんまりかっこいい恋の発言に、口元が緩んでいた。
しかし当人である響は、その言葉を聞いて唇を噛んで恋をじっと見つめていた。
「今夜言った事の中で一番自信があるけど、ヤスどころかこの世の誰にも負けないくらいの愛は、俺しか持ってないよ」
「…」
宗次郎はきっぱり言いきった恋の言葉と、その笑顔の迫力に気圧されて、一瞬放心して黙ってしまった。
すぐに我に返ったが、そこで恋から目を離した。
宗次郎は響を見て、それからまた恋を見た。
そして遂に、眉を垂らして微笑んだ。
「世界一愛しているのは、この私だよ」
「どうかな、俺負けないよー?」
「この話は私や君が決定出来る事ではないようだ…。ナリ」
響は父親に呼ばれて、ようやく恋から目を離した。
険しい表情のまま、響は宗次郎を見た。
その時響の表情に気付いた恋は、そこで初めて笑顔を消した。
予想と違ったのだろう。
「お前が決めなさい」
宗次郎にそう言われて、響は恋を見た。
響は噛んでいた唇を離すと、途端に泣き出した。
涙を堪える為に険しい顔をしていたに違いない。
泣き顔を見て笑顔を取り戻した恋に、響は口を開いた。
「レンくんがいい…」
言い終わるが早いか、響は恋に抱き付いた。
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CINDERELLA STORY