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「今日は仮面パーティーだもの、仮面で素顔を隠してるのにあなたは誰?なんて聞くのは変だよ」
「…そう、なの?」
「最初に私はあなたが誰なのか、当てると言ったもの。答えを言うのは待って、確信を持てたら私から言うね」
舞良は何度か必要のない瞬きをして、朱里の意見を飲み込んだ。
「そう…えっと…、ひとつ相談してもいい?」
「いいよ、何?」
「俺が今夜言いたかった事には俺の名前が必要だと思ってたんだけど、それはどうしたらいいかな?」
自分が何を言っているのかはちゃんとわかっていたが、口からすらすらと出て来た。
思えば朱里はもう舞良に対して怒ってないとわかった時、それは第三者の誰かに言った言葉だった。
本当に朱里が舞良と対峙した時に拒絶されないと、確かな確証は持てなかった。
もし自分が舞良だとわかったら、本当は拒絶してしまうのではないか?
その考えが完全には振り切れなかった。
ずっと名前を言う瞬間が怖かった。
それが今、言う必要がないとわかり、重かった荷物を下ろせた気分だった。
名前を言わず、言いたかった事を言うのはずるいのに。
言葉をとどめておけなかった。
「…名前は必要ないよ、あなただという事は変わらないから」
朱里は真っ直ぐに舞良の目を見た。
舞良が何を言うか、ちゃんとわかっているんだろう。
舞良は緊張で自分の足の骨がなくなったような気がした。
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CINDERELLA STORY